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「大谷よりも山本由伸の球が打てない。日本の弱点は…」韓国の元ソフトバンク参謀役がWBC日韓戦を予想

金明昱スポーツライター
34歳にしてWBC韓国代表に選出されたキム・グァンヒョン。日本キラーとなれるか(写真:ロイター/アフロ)

 3月8日から行われるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。侍ジャパンのメンバーも決定し、大会開幕まで1カ月以上もあるが、様々な報道を目にする。それは韓国も同様でライバルの日本との対戦前から連日、さまざまな記事やニュース映像なども目にする機会が増えた。

 その中で気になったのが、元韓国プロ野球選手のチョン・グヌのYouTubeチャンネル「チョン・グヌの野球イシューだ」。ここに昨年、福岡ソフトバンクホークスで“監督付特別アドバイザー”を務めたキム・ソングン(金星根)氏が電話インタビューで登場した。

 WBCの1次ラウンドで対戦する侍ジャパンとの対戦がどのようになるのかを予想し、様々な角度から日本について語っていた。

 まず、YouTubeで自身のチャンネルを開設したチョン・グヌとは誰なのか。韓国プロ野球を代表する二塁手で、2008年北京五輪、WBCやプレミア12でも韓国代表としてプレーし、国際舞台で活躍。引退後は野球解説者のほか、今年は女子韓国代表のコーチにも就任した。

 一方、キム氏については、野球ファンなら知る人も多いかもしれない。日本の京都府生まれの在日2世で、京都・桂高校を卒業後に韓国に渡った。現役引退後は韓国プロ野球など計7球団で監督を務め、通算1300勝以上をあげた。日本語も堪能で、日本のプロ野球ともゆかりがあり、2005、06年に千葉ロッテマリーンズや18年からはソフトバンクでもコーチを務めるなど、多くの選手を指導してきた。現在は80歳と高齢だが、韓国と日本のプロ野球界を知る重鎮で、韓国では野球の神を意味する“野神(やしん)”とも呼ばれている。

日本は初対面の投手に弱い?

 本題に入るが、キム氏は日韓の選手を詳しくしる人物。そのため分析はとても的確で、分かりやすいものだった。

 キム氏は日本代表メンバーについて「WBC日本代表はベストメンバーと言えます」と前置きしたうえで、まずこんな話をしていた。

「日本は内野と外野で守備に誰がどこに入るのかは気になります。まず周東佑京(ソフトバンク)がセンターに起用されるかもしれませんが、多少は守備が問題になると見ています。ショートは源田壮亮(西武)になると思いますが、打撃についてはそこまで警戒しなくてもいいでしょう」

 選手の名前をあげるところ、メンバーの特徴もよく知っている印象だが、最も警戒すべきはやはり投手だろう。

「日本代表のピッチャーは優れた選手ばかり。でも、1つの試合にすべてのピッチャーが出てくるわけではないので、後半にどのように対処するのかがカギになります。国際大会は1試合勝負であって、同じチームと4、5試合するわけではありませんから。日本選手の最大の弱点は、“初対面のピッチャーに弱い”ということ。なぜなら日本はデータを使って動くケースが多いので、実力差はあったとしても、いい戦いはできると思います」

「山本由伸の変化球は右投手では一番」

 日本の弱点をチクリと指摘しているが、データが少ない韓国の投手に関しては苦戦を強いられるというのだ。それでも大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)、山本由伸(オリックス)といった豪華投手陣をみると、そう簡単に打てる相手ではないのは明白だ。

 彼らの実力と対抗策について、キム氏はこう語っていた。

「大谷、ダルビッシュ、山本は実力についてはあえていう必要もないでしょう。ただ、山本が出てきたら韓国の選手たちは、ほとんど打てないんじゃないか。特に彼の変化球は、右投手のなかでは一番。ボールスピードもありますし、コントロールも抜群にいい。韓国戦でも変化球を中心に投げてくると思います。大谷やダルビッシュは主にスライダーを投げてくるので、山本よりはある程度、対抗できるのではないかと見ています。そのためにも重要なのは守備。どれだけ守備を徹底するかです」

村上宗隆の“攻略”は韓国バッテリーの制球力

 そして次は打線について。やはり気になるのは村上宗隆(ヤクルト)の攻略法だ。弱点はあるのかと聞かれ、キム氏はこう話した。

「優れたバッターなので、弱点はないとしても、もっとも重要なことは投手と捕手のバッテリーが、相手バッター(村上)の体の近くに投げる球にどれだけ変化を与えられるのかです。つまり制球力が重要なポイント。そこが乱れると、日本の打線につかまる可能性は高い。そこが勝負どころでしょう」

 冷静な分析で韓国が勝てそうなポイントも挙げているキム氏。日本のほうが実力は上とはいえ、やってみなければ勝負の行方は分からないというスタンスだ。

「全体的な実力で見れば、日本と韓国を比べると実力差はあり、日本が上でしょう。打撃と守備は正確性、投手には制球力が必要です。そういう意味でいえば、試合になれば韓国がミスをするのか、日本の選手がミスをするのかによって、勝敗は分かれると思います」

 日本と韓国との間には実力差はあっても、小さなミスが勝敗を分けると話している。また、日本の栗山英樹監督については、「5年程みてきましたが、無理をする野球はしません。アメリカと似た野球をします」とその印象を語っていた。

球数制限の中でどうつなぐかが課題

 では、韓国は日本にどのように戦うべきなのか。キム氏はこう分析していた。

「韓国代表のイ・ガンチョル監督は会見で『ベスト4が目標』と言っていましたが、ピッチャーをどのように使うのかという問題があります。キム・グァンヒョン(SSGランダース)などいいピッチャーがいても、WBCのルールには球数制限があり、1次ラウンドは65球がリミット。なので、うまく投げたとしても5回まででしょう。調子が悪ければ3回か4回までになると思います。そこから投手リレーをどのようにつなげていくのかが課題。先発投手は数人なので、そこから5人をどのように後半に起用するのかは難しい選択になると思います」

 また、WBCの韓国代表のキーマンになるのは誰なのかについては、「イ・ジョンフ(キウム・ヒーローズ)」と答えた。イ・ジョンフの父は元中日ドラゴンズのイ・ジョンボム氏で、昨季は2年連続の首位打者、打点王、シーズンMVPを獲得した24歳の外野手。韓国が期待する次世代のスター選手でもある。

「彼を3、4、5番に入れるのか、もしくは1、2番にするのか。打順によって戦況は変わってくると思います」

「やるからには勝って帰ってくるべき」

 そして最後に、韓国代表チームにはこう発破をかけていた。

「結果についてはまったく恐れる必要はありません。相手が強い、うまいという意識を持つ必要はありません。勝負は負けるか、勝つしかないですから。優勝するために戦うわけなので、そこにすべての意識を集中させないといけない。相手もまた韓国野球を強いと見ています。優勝を自分の使命として、そのために日本に行き、アメリカに来たんだという思いを全員で共有する必要があります。やるからには勝って帰ってくるべきです」

 日本の豪華メンバーの“本気度”に韓国も驚きを隠せないでいるが、宿敵を相手にどのような布陣と戦い方で立ち向かうのかは、興味が尽きない。今後も韓国側の分析を注視していきたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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