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なぜ韓国はブラジルに4失点もして敗れた?チッチ監督が語った“韓国の弱点”とは

金明昱スポーツライター
1-4でブラジルに敗れた韓国。ベスト8進出はならなかった(写真:ロイター/アフロ)

 韓国代表が“弱い”というよりも、ブラジル代表が一枚も二枚も上をいっていた。誰が見てもそんな試合だった。

 カタール・ワールドカップ(W杯)の決勝トーナメント1回戦、韓国はFIFAランキング1位のブラジルと戦った。ケガから復帰したネイマール、リシャルリソン、カゼミーロ、チアゴ・シウバ、マルキーニョスと豪華なタレント軍団を相手に、韓国がどれくらい戦えるかは見どころの一つだった。

 しかし、前半からブラジルが韓国を圧倒し、格の違いを見せつける。前半7分にビニシウス・ジュニオールが先制。13分にネイマールがPKを決めて2点目。29分にはリシャルリソンがパスワークから自らフィニッシュしてみせ3点目。36分にはルーカス・パケタがクロスをダイレクトで流し込んで、スコアは4-0と厳しい状況となった。

 後半に入ってからは、エースのソン・フンミンやポルトガル戦でゴールを決めたファン・ヒチャンも決定機を作り出したが、組織的な守備とGKアリソン・ベッカーのスーパーセーブに阻まれた。後半31分には韓国のペク・スンホが強烈なミドルシュートをゴールネットに突き刺して一矢報いたが、ブラジルは主力を下げ、GKまで替える余裕を見せるなど、勝利を確信したようだった。

 結果は1-4。韓国、日本、オーストラリアとアジア勢はベスト16の壁を越えることはできなかった。

6月のテストマッチで得たブラジルの“勝機”

 前半の4点でほぼ勝負は決まったようなものだったが、試合後の会見でブラジル代表のチッチ監督は、韓国との過去の対戦での分析が功を奏したと語っていたという。韓国メディアの「news1」が伝えている。

「我々は韓国チームのことをよく知っていた。過去の試合で相手を分析し、どのように攻撃をして相手の弱点を突くべきかを知っていた」

 過去の試合とは今年6月、ソウル・ワールドカップスタジアムで行われた韓国とブラジルのテストマッチ。最強のカナリア軍団を一目見ようと、スタジアムには6万5000人が集まったことでも話題になったが、韓国は無残にも1-5で大敗を喫した。

 この時もブラジルのスピード、技術、フィジカル、戦術の前にソン・フンミンも「世界の壁を感じた」と語っていたが、今大会でもそれを痛烈に感じていたようだった。

 そもそも“韓国の弱点”とはどこなのか。韓国はボールポゼッションを高める“ビルドアップサッカー”を追求し、実際にボールを保持しながら攻撃の糸口を探していた。ただ、前線からのハイプレスと中盤での素早いプレスにボールを奪われることが多く、パスの供給がうまくいかないシーンが多かった。

 さらには両サイドバックの負担が大きい。左サイドバックのキム・ジンスと後半から交代で投入されたホン・チョル、右サイドバックのキム・ムンファンのハードワークは目を見張るものがあったが、ブラジルは前半から積極的なサイド攻撃を仕掛け、韓国の守備陣は体力的にきつい時間が続いたと思う。スタミナ切れで集中力が切れる韓国守備に隙ができることをチッチ監督は見抜いていたのかもしれない。

「ブラジルはすべてが上回っていた」

 韓国の選手たちも実力差を認めていた。久保建英と元チームメイトのMFイ・ガンインは韓国メディアの前で「ブラジルはすべての部分で自分たちを上回っていた。本当に優れた選手たちが多い国です」と話す。

 また、キャプテンとしてチームを引っ張ってきたソン・フンミンは、ただただ応援してくれた国民たちに申し訳ない気持ちでいっぱいだったと口にしていた。

「応援してくれた人たちの期待に応えることができず、あまりにも申し訳ない。でも選手たちはここに来るまでベストを尽くして戦ってくれましたし、献身的に努力してきたことには疑いの余地がないとみなさんに伝えたいです」

 両国そろってのベスト16入りは、2010年の南アフリカ大会以来となったが、韓国は決勝トーナメント1回戦でブラジルに完敗。日本もクロアチアに敗れ、ベスト8での日韓戦は実現しなかった。

 だが、両国民ともに「W杯で日韓戦が見たい」という気持ちにさせてくれただけでも、大きな収穫ではないかと思う。

 すでに日本と韓国は、4年後に向けてアジアのライバルとして戦うことになる。すでに日本サッカー協会は森保一監督に続投を要請するという報道が出ているが、韓国代表を4年率いてきたパウロ・ベント監督は再契約せず、“退任”の意向を大韓サッカー協会に伝えたという。

 日韓両国がこれからどのようなサッカースタイルを作り出すのかは新たな楽しみの一つだが、これからはさらに切磋琢磨しながら、世界で勝つために必要なものを見つけ出してほしいと思っている。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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