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豪快ヘッド2得点の“イケメン”韓国FWチョ・ギュソンはどんな選手?DFからボランチ経てストライカーに

金明昱スポーツライター
ガーナ戦で2ゴールを決めたFWチョ・ギュソン(写真:ロイター/アフロ)

 韓国代表FWチョ・ギュソン(全北現代)が世界から熱い視線を注がれている。それもそのはず。カタール・ワールドカップのグループリーグ第2戦で韓国は、ガーナを相手に前半2失点と苦しい状況で、後半から入ったチョ・ギュソンが立て続けに2得点を挙げたからだ。

 2点とも左からのクロスに合わせた豪快なヘディングでのゴールとあって、エースFWソン・フンミン(トッテナム)の存在もかすむほどのインパクト。

 試合後は「自分は特に普通の選手なのに、W杯という舞台でゴールを決めることができた。どうしようもない選手なのにゴールを決めたことが信じられない。最後まで自分を信じて夢を追い続ければ、このような舞台でもゴールを決められるんだと思った」と語っている。

 加えて、彼の見た目の爽やかさから“イケメン”という声がネット上で盛り上がりを見せている。すでに多くのメディアが話題にしているが、W杯開幕前、チョ・ギュソンのインスタグラムのフォロワーは約2万人だったのが、今では約130万人でその数は今も伸び続けている。

 現在の韓国代表選手と言えば、誰を思い浮かべるだろうか。真っ先に浮かぶのは、昨季プレミアリーグ得点王のソン・フンミンという人は多いはずだ。また、日本のサッカーファンに馴染みがあるのは、ガンバ大阪所属のDFクォン・ギョンウォンのほか、GKキム・スンギュ、DFキム・ジンス、DFキム・ヨングォン、MFナ・サンホといったJリーグ経験者といったところだろう。

 つまり、チョ・ギュソンはほぼ無名。しかし、突如と現れた選手ではなく、実力で韓国代表入りをつかんでいる。

プロ1年目は2部14得点でベストイレブン

 どんな選手なのかを少し見てみたい。1998年生まれの24歳で、身長189センチ、右利きの典型的なストライカー。元々はセンターバック(CB)だったが大学1年時にボランチにコンバート。攻撃的なプレーを見抜いた当時の監督が最終的にフォワード(FW)に転向させ、その才能が開花したという。

 2019年に大学を中退し、Kリーグ2(2部)のFC安養でプロキャリアをスタート。その年に33試合で14ゴールを決めて得点ランキング3位となり、Kリーグ2ベストイレブンにも選出されるなど、順風満帆なプロ1年目を過ごした。

 そんな活躍が認められ、2020年にはKリーグ1(1部)の強豪クラブでもある全北現代が、高額な移籍金を払って獲得したことが当時話題に。ただ、選手層の厚い全北現代で、レギュラーポジションを勝ち取るのは難しく、同年は出場23試合で4ゴールに留まっている。

今年9月まで軍隊チームでプレー

 いずれ兵役義務を果たさなければならないことも考慮し、全北現代は2021年から韓国軍体育部隊傘下の「金泉尚武(キムチョンサンム)」へ送ることを決める。この判断が結果的にチョ・ギュソンを成長させた。リーグとカップ戦を合わせて27試合で8ゴールを決める活躍。長所でもある豊富な運動量に加え、つなぐ意識も高まり、フィジカルと決定力が高まったとの評価から、2021年9月に代表にも初招集された。

 兵役を終えたのは2022年9月でその後、全北現代に復帰。つまり、今季は金泉尚武の選手として23試合、兵役義務を終えて復帰した1部の全北現代で8試合に出場し、17ゴールでKリーグ得点王に輝いた。さらにベストイレブンまで獲得して迎えたのが、カタールW杯というわけだ。

FWファン・ウィジョと世代交代か

 愛称は“ファン・ウィジョ2世”。韓国代表のワントップと言えば、元ガンバ大阪のFWファン・ウィジョで、W杯アジア予選では存在感を放っていた。ただ、W杯本大会を前にして調子が悪く、一方でテストマッチでもチョ・ギュソンのパフォーマンスとコンディションの良さが目立つようになった。

 そこにきて、本大会で後半途中からの2ゴールで、韓国代表のストライカーは世代交代を迎えた瞬間にも感じた。ちなみにW杯本大会で韓国サッカー史上初となる1試合で2得点を記録した選手となった。

 ガーナに2-3で敗れたとはいえ、世界に大きなインパクトを残したチョ・ギュソン。韓国内では欧州クラブへの移籍も噂されているが、その前に待っているのが、グループリーグ最後のポルトガル戦。勝利すればベスト16入りの可能性もあるだけに、豪快なゴールを期待したいところだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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