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「若い子にはまだ負けない」33歳ギャルファー金田久美子の外見とは真逆の“負けん気”の強さ

金明昱スポーツライター
11年ぶりの2勝目を挙げた金田久美子(写真・筆者撮影)

「ベテランですが若い子には負けないように頑張りたい」

 国内女子ゴルフツアー「樋口久子 三菱電機レディス」で11年ぶりにツアー2勝目を手にした金田久美子。これまでの苦労が走馬灯のようによみがえり、人目をはばからず涙を流する姿は、多くの人たちの胸を打った。

 ゴルフとギャルを掛け合わせて“ギャルファー”。そう呼ばれるの女子プロゴルファーはもちろん彼女しかいない。派手なメイクとギャルファッションで、ツアープロの中でも試合会場ではひときわ目を引く。今年で33歳だが、夏には肩を出したノースリーブのウェアを着こなし、ミニスカートだってはく。

「最近は熟女とか言われて、ギャルファーって言われるのも痛いのかもしれないけれど、私は好きで着ているからこれからも好きな格好をしていたいです(笑)」

 8歳の時に世界ジュニア選手権を制して、タイガー・ウッズに並ぶ記録を作ったことで、元“天才少女”という表現もついてまわる。“キンクミ”という愛称がつけられるのも、個性豊かなキャラや人柄だろう。とにかく、成績とは関係ないところでも話題性は抜群だった。

 インスタグラムのフォロワーは約15万人と女子アスリートの中でも屈指。若い女性からも支持され「最近は私のファッションとかに興味を持ってくれる人がメッセージたくさんくれたりするんです」と喜んでいた。

SNSの誹謗中傷も「見返してやる」

 常に明るく振舞うばかりが、彼女の本当の姿ではない。ツアーで戦うため、日々、トレーニングと練習をして試合に挑むのは当然のことだからだ。

 ただ、SNS全盛期の現代ではそうはいかない。彼女を見た目で判断する人たちから、誹謗中傷のメールが届き、嫌な書き込みもたくさん目にするようになった。

「ご飯の写真とか、オフに私服着た写真を載せると『そんなことしてるから勝てないんだ』とか『もっと練習しろ』とか、かなりすごい量のメールが来るんです」

 フォロワー15万人もいれば、様々な人がいて、そうなることは分かってはいた。

「気にするなと言われても難しい。メンタルがいい時は平気なんですけど、調子が悪かったり、メンタルが下がってる時はそれ見ると結構キツくて…、みんなが思ってるほどメンタルも強くないので」

 そんな思いを奮い立たせていたのが、ゴルフへの情熱だった。「絶対に勝って見返してやるとずっと思ってました」。

 結果がすべてのプロの世界で、有言実行できる選手はそう多くはないが、それを本当にやってのける忍耐と気持ちの強さの持ち主。

 シードを落としてからは、下部ツアーで戦っていた時期も長く続き、普通なら辞めてもおかしくない状況だった。これまで何度も話を聞き、口を酸っぱくして言っていたのが「自分にはゴルフしかないと思っているから」。

 3歳からゴルフクラブを握り、ゴルフ一筋で生きてきたが、紆余曲折あっての今、ゴルフに賭ける情熱は歳を重ねるにつれて強くなっていったに違いない。

 彼女の負けん気の強さとプロアスリートとしての意地もまた、「3勝目を目指したい」という言葉にもつながっている。

キンクミこそ“練習の虫”

 初優勝した2011年から金田のマネージャーを務めているのが渡部彰さん。これだけ長い付き合いが続くのも、絶対的な信頼があるからだ。

「初優勝したあともすぐに何回も勝つと思っていた」と笑いながら語っていたが、それから11年も支え続け、2勝目がどれほどうれしかっただろうかと想像する。

「いつも日が落ちるまでずっと練習しているんです。話題にならないから分からないけれども、誰よりも練習している姿を見てきましたから」

 実際、夕暮れまでに一人で黙々とパットの練習をしている姿を見たことがあるが、逆にやりすぎではと思うほどだった。勝った若い選手がたくさん練習しているという話になると、“練習の虫”という表現が使われたりする。一方で金田はその外見から、「練習はさほどしている選手ではない」と思われがちだ。

 優勝の翌日、インスタグラムのストーリーズには、「浸る時間はあっさり終わり、今週も通常運転です」とジムで必死にトレーニングする動画が上がっていた。

 今回の優勝は、そんなステレオタイプ化されたイメージを一掃する爽快感さえあった。それでも本人はマジメな姿はそこそこに、これからも「それなりにファッションも楽しんでゴルフしたいなと思います。引退するまでなんとなく、年相応にしながら好きな格好をしていきたいと思います」と笑っていた。

 涙もろく、メンタルも弱いと言うけれども、ゴルフへの情熱と勝ちにこだわる意地、努力を続けられる忍耐力はまさにプロのアスリート。

 これからも周りが何を言おうとも、“ギャルファー”金田久美子らしさ全開で突き進んで欲しい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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