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浦和レッズサポーターと会場の雰囲気に羨望?“万雷の拍手”に全北現代キム・ジンスが語った一言とは?

金明昱スポーツライター
全北現代DFキム・ジンス。埼玉スタジアムの雰囲気から得るものがあったようだ(写真:つのだよしお/アフロ)

 アジア・チャンピオンズリーグ準決勝(25日)で浦和レッズと全北現代が対戦。120分を戦い2-2で決着がつかず、PK戦を3-1で制した浦和が決勝進出を決めた。

 まさに死闘と言うにふさわしいゲームだった。試合は1-1で延長戦に入ると、全北が後半116分にゴールを決めて2-1。このまま終わるかに見えたが、119分に浦和が劇的な同点ゴールを決めて2-2で延長戦が終了し、PK戦に突入した。

 PK戦は運もあると言われるが、全北現代にとっては大きな重圧だったに違いない。スタジアムのゴール裏に真っ赤に埋め尽くされた浦和サポーターを目にしながらのキックには相当なプレッシャーがかかっていたはずだ。実際、全北現代はGK西川周作に2本も止められ、さらに主将でDFキム・ジンスも右隅ギリギリを狙ったが、ボールは枠をそれて失敗。1-3で全北現代が敗れた。

 リーグ戦とACLを並行する過密日程やコロナ禍の影響で東地区のノックアウトステージが日本で集中開催されることから、Jリーグクラブ以外のチームは長時間の移動などで「コンディションでは不利」とも言われていた。浦和にとっては埼玉スタジアムでの準決勝での勝利は地の利が生かされた部分もあっただろう。

 ただ、あれこれ条件を引き出せばキリがない。今大会、Kリーグ5連覇の全北現代はアジア屈指の実力を見せてくれたし、浦和との激闘はチケットを払って見に来る多くの日本ファンにサッカーの面白さ、醍醐味を存分に見せつけてくれた。

スタジアムを真っ赤に染めた浦和サポーター
スタジアムを真っ赤に染めた浦和サポーター写真:YUTAKA/アフロスポーツ

「浦和ファンが全北を認めてくれた」

 スタジアムをあとにする全北現代の選手たちには、浦和サポーターからは総立ちで大きな拍手が送られていた。

 その光景を目に焼き付けていた選手が全北現代キャプテンのDFキム・ジンスだ。アルビレックス新潟でプロデビューした彼は、Jリーグにも馴染みがあり、日本のサッカーをよく知る選手でもある。

 彼は試合後、韓国メディアに向けて、こんな感想を語っている。

「スタジアムの雰囲気がとても良かった。日本の記者たちも『多くの観客の前でプレッシャーはなかったか?』と聞くんです。Kリーグのスタジアムにも多くの観客に来てもらいたいし、ファンにたくさん来てもらうには、面白い試合を常に見せないといけない。これは我々の宿題です。これから一生懸命がんばるので応援してほしい。試合が終わったあと、(帰りのバスに乗る前)浦和のファンが握手と拍手をしてくれた。お互いにいい試合をしたという意味だと思う。最後までベストを尽くした姿に浦和ファンも全北を認めてくれたと思う」

 全北現代にとっては敗戦の悔しさもあるが、浦和サポーターやスタジアムの雰囲気からキム・ジンスのように新たなモチベーションを得る選手もいる。

 勝った負けただけではない死闘の余韻と清々しさが埼玉スタジアムには残っていた。JリーグとKリーグのクラブがプライドを賭け、ライバル心をむき出しにして戦う真剣勝負の場が増えることをこれからも楽しみにしたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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