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日本の“キャディー交代騒動”よりも悪質!韓国女子プロ19歳の“新星”が衝撃の不正行為で永久追放も?

金明昱スポーツライター
誤球プレーを隠し続けていた19歳のユン・イナ(写真提供・MHNSports)

 韓国女子プロゴルフ(KLPGA)ツアーで前代未聞の不正行為が発覚し、問題を起こしたある選手への批判が収まるところを知らない。“事件”を起こした当事者は2003年生まれの19歳のユン・イナだ。

 不正行為の説明の前に、彼女の経歴を知っておきたい。今季がレギュラーツアー初参戦のルーキーながら、4月の韓国メジャーの「KLPGAチャンピオンシップ」で10位に入ると、6月は「ロッテオープン」6位、「BCカード・韓経レディースカップ」3位、7月の「メッコール・モナパークオープン with SBS Golf」2位と結果を残し、同月の「エバーコラーゲンクイーンズクラウン」で初日から最終日まで一度も首位を譲らず、通算20アンダーでツアー初優勝を手にした。

 すい星のごとく登場した19歳のスター候補に韓国女子ゴルフ界は沸き、メディアも大々的に取り上げた。若さと結果だけでなく、170センチと恵まれた体格から放たれるドライバーショットの平均飛距離は今季ツアー1位の約263ヤードと、男子ゴルファー顔負けの剛腕ぶりも注目ポイントになっていた。

“誤球”を1カ月隠し続ける

 そんな矢先に明るみになったのが、彼女自身による不正行為の報告。事の顛末はこうだ。

 今月25日、ユン・イナはマネジメント会社を通じて謝罪文を出した。「6月16日の(韓国女子オープン)大会初日、15番ホールでティショットが右へ行き、ボールを探している最中、前側の深いラフにボールがあるという周囲の声を聞き、自分のものと誤解してプレーを進めました。自分のボールではないことが、15番ホールのグリーンで分かったのですが、初めて経験する状況で、どのように対処すればいいか判断ができず、結局はなんの処置もせずそのままプレーを続けました。選手としてあってはならないことで、弁明の余地はありません」。

 つまりは“誤球”してしまったわけだ。ホールアウトする前に誤球を認知して申告していれば2罰打で済んだものを、彼女は何の処置もせずにそのままプレーを続け、その事実を謝罪文を出すまでの1カ月、隠し続けていたということになる。

 当初は謝罪文の内容から「経験不足の新人選手が起こしたもの」と同情する声もあったそうだが、真実と経緯が徐々に明るみに出るとユン・イナへの批判と世論は収まりがつかなくなってしまった。

初優勝した大会2日目にメール報告

 彼女の不正行為が“悪質”と判断されるのは、前述したように謝罪文を出したのが不正行為から1カ月後だったこと。さらに韓国各メディアの報道によると「誤球プレー後、2罰打での処置をキャディーがユン・イナに助言したが、それを聞かずにプレーした」という。

 また、「当時、ユン・イナのバッグを担いでいたキャディーがタッグを解消したあとに、不正行為の噂が知れ渡り始めると、7月15日の午前に大韓ゴルフ協会に誤球した事実を申告するメールを送っていた」という。

 さらに、「7月15日」はユン・イナがツアー初優勝した大会(エバーコラーゲンクイーンズクラウン)の2日目だったことだ。彼女は一度も首位を譲らずに同大会で優勝し、会見で喜びを語っていたが、自身の不正行為については一言も話さなかった。

 19歳ながらもこの神経の図太さには驚きを通り越して、あきれるばかりで、事実を把握しながらも、あとになって謝罪文を出すところに説得力が欠けると思われても仕方がない。ユン・イナは現在、残りのツアー出場を取りやめることも発表している。

ツアー無期限出場停止の可能性も

 韓国女子オープンを主管する大韓ゴルフ協会はこの報告を受けたあと、誤球でプレーした同大会のユン・イナの成績を「予選落ち」から「失格」に修正。韓国女子オープンの出場停止など、その後の懲戒処分は、スポーツ公正委員会で決めるという。

 現時点で考えられる処分としては、誤球の隠蔽の責任は重く、ツアーへの無期限出場停止も十分あり得る。また、ユン・イナの主戦場はKLPGAツアーということもあり、KLPGA関係者は「現時点で懲戒処分の協議や大会優勝の無効処理などは行っていない。まずは大韓ゴルフ協会の懲戒結果を待つ」としている。

 スターダムへの階段を駆け上がったが、自身の行為で奈落の底に突き落とされたユン・イナ。まだ19歳と若く、いずれは米ツアーでも活躍が期待されていた才能豊かな選手だけに韓国ゴルフファンのショックも大きい。

勝利至上主義が生んだ弊害?

 ただ、今回の不正行為は彼女自身の問題でもあるが、なぜ周囲の大人がうまく対応してあげられなかったのかという疑問が残る。

 一般紙「東亜日報」は「韓国ではゴルフへのマナー教育もしてはいるが、競争がし烈なのもあり、勝利至上主義の雰囲気が蔓延しているのが現実。これを変えなければならない」と報じている。

 ユン・イナも結果への重圧に悩まされていたのだろうが、対応の悪さはプロゴルファーとしてはあるまじき行為だった。その代償はあまりにも大きく、最悪の場合選手生命をも失うかもしれない。まずは処分の結果を待ちたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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