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“14年の悪縁”秋山成勲が韓国メディアに激白!青木真也との対戦を受け入れた理由とは?

金明昱スポーツライター
因縁の青木真也と対戦する秋山成勲。韓国でも報じられている。右は妻のSHIHO(写真:アフロ)

 26日にシンガポールで行われるONE Championshipで、秋山成勲と青木真也が対決する。

 日本では注目の一戦と位置付けられているが、お隣の国、韓国でもこの戦いは注目されている。

 というのも秋山は韓国では総合格闘家としてだけでなく、タレントとしても活躍中で、バラエティー番組やCM、ドラマ出演にも精力的だ。また、妻のSHIHOと娘のサランちゃんと共に家族で登場することも多く、韓国人にとっては親しみがある。

 韓国で知名度の高い秋山だからこそ、今回の一戦にも耳目が集まるが、もう一つ、韓国メディアは青木との因縁にも注目している。

 共通の表現は「14年の悪縁」だ。聯合ニュースは「秋成勲(チュ・ソンフン)、758日ぶりの復帰戦。“14年の悪縁”青木と対決」と見出しを打ち、こう伝えている。

「チュ・ソンフンが758日(2年27日)ぶりに公式戦に挑む。『ONE Championship』はチュ・ソンフンと2008年から悪縁が続く青木との対戦を提示し、双方の合意を引き出した。2008年当時、青木はK-1が運営する総合格闘技大会『DREAM』で、チュ・ソンフンとの対決を要求。当時はチュ・ソンフンが2階級も高いミドル級の選手だったこともあり、対決は実現しなかった。しかし、その後も青木は様々な方法でチュ・ソンフンに対する挑発をやめなかった」

 長らく実現してこなかった対戦。2人が手を合わせることはほとんどないと思われていたが、あれから14年目にして実現。

 しかし、なぜ青木はこれほどまでに秋山との対決に執着するのか。

 青木は「ABEMA TIMES」のインタビューで、秋山について「好きなわけないじゃない。忌み嫌ってる」と話している。

 さらに「僕はいいことでも悪いことでも本当のことを言ってる。思ったことしか言わない。(秋山は)きれいごとしか言わないでしょ。見え方だけ気にしている。利口じゃない、小利口なんですよ。美しさがないしプライドがない。それなのにきれいごとを言うから気に入らない」とも語る。

韓国での秋山は「クリーンなイメージ」

 一方、秋山は記者会見でこう語っている。

「日本では注目を集める対戦だと思うけど、青木真也との戦いは世界からみたら何だこりゃな試合。でもわたしは関係ない。普通に仕事だと考えれば仕事。ギャンブルといえばバカラじゃないか。ひとつの区切り、歴史の1ページとしてみなさんの記憶に刻まれる試合にしたい」

 因縁と思われる対戦も、今はあくまで格闘家としての普通の仕事と受け止めているのだろう。

 韓国紙「ヘラルド経済」は、秋山の現在の姿についてこう書いている。

「日本の格闘家・桜庭和志との試合(2006年)で、体にボディークリームを塗って試合に挑み勝利したことで、出場停止処分を受けて、日本ではヒールとなったが、現在はそのようなイメージはほとんど抜けきったと言える。何よりも総合格闘技UFCに進出し、妻のSHIHOとの間柄もよく、クリーンなイメージが作られた」

 韓国での秋山は、“ヌルヌル事件”は過去のものとしてとらえられているようだ。

 ただ、秋山自身はそうでもない。「ABEMA TIMES」のインタビューで「この試合に関しては(格闘技)ファンはほぼほぼ青木選手についている。それは僕が桜庭さんの件でヘタを打って、ファンの人たちを裏切ってしまったから。自分を悪く見る人はたくさんいる。それは仕方ないですよ」と話している。

 今も自責の念にかられていることを正直に吐露していたが、今回の結果によっては、日本の格闘技ファンの見る向きが、大きく変わる可能性もある。

「私が勝つ可能性は大きくない」と笑うが…

 3月9日付の「東亜日報」(ネット版)に秋山のインタビューが掲載されていたが、そこで話していた内容がとても興味深い。

 青木との一戦を引き受けた理由について、こう話している。

「昨年4月の復帰戦がケガでなくなり、ファンとONE Championshipに申し訳ない気持ちが大きかった。それでまた試合の機会が与えられるならば、何も言わず受け入れると決めていました。私が階級と相手を選べる状況ではなかった。なので、むしろうまくいった。私の年齢(46歳)でチャンピオンクラスの選手と戦うのは難しいので、いい機会をいただけたと思います。言い訳をして避けるのはプライドが許さない」

 また、青木との一戦で、自身の戦いを予想する話もあった。

「青木は強い相手です。階級を下げた私が勝つ可能性は大きくない。痛いものは痛いし、辛いことは辛いと話す年齢になった。プライドだけは難しい」と言い、冗談っぽく笑っていたという。

 ただ、これもリップサービスにすぎない。本音はこうだ。

「新人時代は強い相手であるほど、闘魂を発揮してきました。ケージ(金網)ではすべてを燃やしたい。私の試合を見て、40~50代の人たちが『あの歳でも挑戦し、夢を見られるし、努力すれば叶う』という希望を持ってもらえればうれしいです」

 日本ではあまり聞かれない話に惹きつけられるが、格闘家としての人生はこれからが始まり――。秋山はそう言っているようにも聞こえた。

 いすれにしても因縁対決と言われる秋山と青木の勝負の行方に注目したい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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