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「勝ちたい」が本音のベガルタ仙台復帰の梁勇基。”感慨深さ”よりも”戦う姿勢”を強調する理由

金明昱スポーツライター
今季からベガルタ仙台に復帰した梁勇基(写真:アフロスポーツ)

「勝ちたいというのが本音ですね」

 2月20日に行われたベガルタ仙台のJ2開幕戦を終え、主将の梁勇基の口からはそう本音がこぼれた。

 対戦相手は同じ北国のアルビレックス新潟。ベガルタ仙台にとっては、昨季のJ2へ降格から今季J1復帰に向けた大事な初戦。期待と不安が入りまじる90分は、終始、新潟に主導権を握られた。

 ただ、梁は縦横無尽にピッチを駆け巡り、中盤でパスを供給。緩急をつけたリズム、タテへのパスでチャンスを演出するプレーは、40歳とは思えないほどチームに活気を与えていた。

 それに見えたのは戦う姿勢。凱旋復帰したユアテックスタジアムで、開幕戦での勝利がほしかったに違いないが、全体的に動きが硬く、新潟の攻撃を止める時間が長く続いていた。

 結果は0-0のスコアレスドローで、仙台にとっては攻撃面に課題が残る初戦となった。

久しぶりの帰還に「感慨深かった」

 今季、サガン鳥栖から3年ぶりにベガルタ仙台に復帰した梁は、エースナンバーの「10」を背負い、主将として先発に名を連ねた。

 そうした部分ではやはり反省点を感じることが多かったに違いない。試合後にミックスゾーンで出会った梁の言葉からは、悔しさがにじみ出ていた。

「結果として勝ち点3を取れなかったので、満足感はないです。内容を見ても自分たちが目指すサッカープレーを出せる場面が少なかったですから。それに全体的に少し選手の距離感が遠かった。ボールに対して選手が連動して攻撃に入る場面が少なかった。そこは反省点です。守備の面では失点はしなかったですが、前線が孤立している場面が多かった。攻守両面においてまだまだ改善しなければならない部分がある」

 チームが勝ち点3を取れなかったことを悔やむが、個人的に仙台ホームで先発を果たしたことをどう感じているのかが気になった。

「個人的にはすごく感慨深かったです。バスでスタジアム入るときは、戻ってきたという高ぶりはありました。ただ、個人は抜きにして、チームで勝ちたかった気持ちのほうが強いです」

「個人としても危機感を持たないといけない」

 自分が感慨にふけるよりも、チームが勝てなかったことを何度も悔やんでいた。主将とはいえ、そこはやはりチームを勝利に導けなかった責任を感じている。それに、スタメンが保障されているわけではないことも、プロの厳しい世界で戦ってきた梁だからこそ分かるものがある。

「選手としてこのピッチに立ちたいとは、誰もが思っていることです。だからこそ1試合、1試合の結果が問われます。選手の入れ替えや競争は常につきまとうので、今日の結果は個人としても危機感は持たないといけない。それに自分はまだまだだなという感じですね」

 開幕前の梁にインタビューする機会があったが、今年は「戦う姿勢」を見せる強調していた。

「戦う姿勢はどのチームにいても当たり前に見せることだと思います。日ごろ練習している選手たちも、試合のメンバーに入れない選手がいますから、そこは最低限、見せるのが当然のことです」

 梁勇基はベガルタ仙台のJ1復帰に向け、内に秘めたる熱い思いがある。「すべてはチームの勝利のため」――。

 ベガルタ仙台は第2節(2月27日、14時)で水戸ホーリーホックとアウェーで対戦する。開幕戦の反省点を生かし、梁が望む勝ち点3を手にすることができるか注目したい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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