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なぜサッカー韓国代表はW杯アジア最終予選にGKを4人も選出しているのか?

金明昱スポーツライター
カタールW杯アジア最終予選10月の2連戦で先発出場したキム・スンギュ(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 11月に行われるW杯アジア最終予選を前に各国代表チームがメンバー発表するなか、韓国代表が25名の中に4名のGKを選出したことが注目を集めている。

 Aグループの韓国は現在、勝ち点8の2位。勝ち点10で1位のイランの背中を追う。明日11日にホームでUAE、16日にアウェーでイラクと対戦する。どちらも中東勢とあり、気の抜けない戦いが続くが、やはりここはきっちりと勝ち点を取っておきたいところ。

 しかし、パウロ・ベント監督の選手の選出に、多くの国内メディアが疑問を投げかけているのが、10月の代表メンバー選出に続いて再度、GKを4人も選出したことだ。

 GKの顔ぶれはキム・スンギュ(柏レイソル)、ク・ソンユン(金泉尚武)、チョ・ヒョヌ(蔚山現代)、ソン・ボムグン(全北現代モータース)。ちなみにDFは9人、MFは10人、FWは2人となっている。

コロナ禍で「様々な問題に対処するため」?

 総合ニュースサイト「NEWSIS」は今回の選出にこう疑問を呈している。

「GKは選手の変化が大きなポジションではない。通常、2連戦でもスタメンとなるGK1名がゴールを守る。10月に行われたW杯アジア最終予選でもキム・スンギュがシリア戦とイラン戦でフル出場した。本来3人を選出するのは、ケガでプレーできない場合を想定してのことだ。GKは他のポジションの選手が代わりに出場するのが事実上、不可能だからだ。しかしベント監督は1人多い、4名のGKを11月の最終予選に呼び寄せた。1カ月を超える大きな大会でも4名の選出は異例だ」

 パウロ・ベント監督はメンバー発表会見で、その理由についてこう語っている。

「10月の招集時と同じ理由だ。今回も1試合はホーム、もう1試合はアウェーで行われる。それでGK4名を選出した」

 先月会見でベント監督は「イランとのアウェー戦で様々なことが起こりうる問題に対処するため」と語っているが、コロナ禍で何が起こるかわからないことを想定してのことだ。

 今回のメンバーに主力FWのファン・ウィジョ(ボルドー)がケガで入らなかったとはいえ、せめてGKを3人にして、もう一人のFWをメンバー入りさせてもよかったのではないかと感じる。

今季Kリーグ得点ランク1位が今も代表選出外

 特に今シーズン、Kリーグ1で21ゴールを決めて得点ランキング1位のチュ・ミンギュ(済州ユナイテッド)が、一度も代表に呼ばれていないのが気がかりだ。

 ボランチとしてのプレー経験から攻守での連携やキープ力に優れており、フィジカルも強く、ポジショニングの良さもあり、ペナルティエリア内で能力を発揮する。攻撃の起点となるターゲットマンとしての役割と決定力を備えている。

 今回、ファン・ウィジョがケガで離脱したこともあり、チュ・ミンギュを選出してもよかったと思ったが、ベント監督が求めるプレースタイルではないのが選出外の理由だという。攻撃陣に変化をもたらす意味でも31歳のベテランにチャンスを与えてもいいのではと感じる。

 今回代表入りしたFWはKリーグの国内組2人。そうなると攻撃陣の期待がかかるのは、エースのソン・フンミン(トッテナム)やファン・ヒチャン(ウルヴァーハンプトン)といったところだろうか。

 明日11日、UAE戦が行われる高陽スタジアムの収容率は100%に引き上げられたため、韓国代表選手は久しぶりに多くの観客の前でプレーすることになる。だからこそ、不甲斐ない戦いは見せられない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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