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アン・シネが激白!「引退を考えなかったわけではない」1年半ぶりの実戦で心境を語る

金明昱スポーツライター
久しぶりに姿を見せたアン・シネ(写真・KLPGA提供)

 “セクシー・クイーン”アン・シネが、7月9~11日に開催された韓国女子ツアーの「DAEBO hausDオープン」に主催者推薦で出場した。

 韓国女子ツアーに出場するのは、2019年6月の「韓国女子オープン」以来、2年1カ月ぶり。一方、日本女子ツアーに最後に出場したのは2019年10月の「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」なので、実戦は約1年半ぶりとなる。

 アン・シネは2019年に日本のプロテストに合格し、同年のファイナルQT(=予選会)で25位に入り、翌年の出場権を手にした。

 しかし、2020年は新型コロナウイルスの影響で日本ツアーの開幕が遅れたことや入国制限措置などの影響で来日を見送り、韓国で調整を続けていた。

 来日が難しい状況が続くなか、満を持して今回、母国ツアーの試合に挑んだというわけだ。

 初日は1バーディー、4ボギー、1ダブルボギーの「77」、5オーバーとふるわず、2日目も2バーディー、4ボギー、3ダブルボギーの「80」で通算13オーバーの117位タイで最下位と厳しい結果となった。

実戦から遠ざかり「体力不足を実感」

 初日を終えたアン・シネは韓国メディアに向けて、こんな心境を吐露していた。

「自分が思うようないい状態ではないなかで、試合に出場たからか、スコアがまとまらずかなり疲れました。久しぶりに大会に出場して、体力のなさを実感しました。それでも周囲の選手たちのプレーを見ながら、『私もあんな感じでプレーしていたんだろうな』という懐かしさもありました。“楽しさ”をたくさん感じました」

 ただ、本来の主戦場は日本女子ツアーだ。新型コロナウイルス感染の影響がなければ、今ごろは日本でプレーを続けているはずだった。

「昨年、日本女子ツアーのシードを獲得しましたが、コロナ禍によって日本での生活は簡単ではないと思い、行くのを断念しました。1年を棒に振り、試合に出たいという思いがありましたし、私がツアーでプレーする選手だったともう一度確認したかった」

 そのうえで出た結果は、最下位での予選落ち。それもしっかりと受け入れるしかないと自覚している。

「技術も全体的な体力も補う部分が多いと感じましたし、そうした部分を確認できただけでも、出場して良かったと思いました。反省もしましたし、自分の今の位置がどこにあるのかを確認できました。自分が誰なのかを少し忘れて生活していましたが、現在の実力を知ることができたので、今後の糧にしたい」

「今年中に自分の考えを整理する必要がある」

 さらに、「引退を考えなかったわけではありません」と告白したことにも驚いた。この時、少し涙をにじませていた。

「2020年度に日本で1年間、一生懸命に活動し、いい姿を見せて拍手を受ける自分を想像していました。それが不可能になり、どのように締めくくればいいのか、選手として後悔がないのかとたくさん悩みました。孤軍奮闘しています。正確な答えは伝えられません。数十回ずつ考えが変わります。いずれにしても、今年の年末までに自分の考えを整理する必要があると見ています」

 プロゴルファーとしての人生を今後どのように歩むべきなのか――。コロナ禍で歯車が狂い始め、一人でもがき苦しんでいるようにも見える。

 そうした思いを吹っ切るためにも、出場資格がある日本ツアーに数試合でも出てみてはどうだろうか。もしかしればそこから気持ちが大きく変わるかもしれない。

 2週間の隔離や生活への不安要素は尽きない。個人の判断にゆだねるしかないが、少なくとも日本のファンはアン・シネのプレーする姿を早く見たいと願っている。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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