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なぜ本田圭佑と同僚になった“韓国のメッシ”イ・スンウの公式会見はないのか。期待値の差?

金明昱スポーツライター
ポルティモネンセにレンタル移籍したイ・スンウ。本田圭佑とチームメイトに(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

 ベルギーのシント=トロイデンでプレーしていた韓国代表FWイ・スンウが、ポルトガルのポルティモネンセにレンタル移籍した。

 今月4日、本田圭佑はポルティネモンセの移籍について、自身が最高経営責任者(CEO)を務める会社のプレミアム音声サービス「NowVoice」で独自に記者会見を行っていた。さらに中6日もクラブ主催の2度目の入団会見を同サービスでライブ配信した。

 イ・スンウに関しては、同2日に移籍することがポルトガルメディアによって明らかにされていたが、本田のような公式会見がなく、事実なのかどうか信ぴょう性に欠けていた。

 その事実を確認するため、韓国紙「中央日報」がイ・スンウの移籍交渉を担当したマネジメント関係者に話を聞き「レンタル移籍に合意した。契約書に今シーズンを終えたあと、完全移籍のオプションも含まれている」と明かしている。

 また、イ・スンウの兄(イ・スンジュン氏)が自身のインスタグラムで、ポルティモネンセのユニフォームを着た弟が、クラブ関係者と握手を交わす写真をアップ。それを韓国メディアが一斉にニュースにしていた。

 つまりイ・スンウが加入したという“オフィシャル”発表や公式会見は特に開かれる様子はなく、彼がクラブと正式に契約を終えた事実は、関係者の発信で知ることになった。

 ただ、どのような形であれ、オフィシャルによる加入の発表や選手の公式コメントがあるのとないのとでは、今季に賭ける意気込みなど、伝わる温度感がまったく違う。

 2人の実績を比べれば一目瞭然かもしれないが、本田とイ・スンウに対するクラブ側の期待値に温度差を感じずにいられなかった。

“韓国のメッシ”今は昔

  現在のイ・スンウを“韓国のメッシ”と呼ぶのはもう古いと言っていいだろう。彼がスポットライトを浴びたのはもう昔の話だ。

 バルセロナのカンテラ(下部組織)に所属し、10代の頃から注目を集めていた。2018年はロシア・ワールドカップ(W杯)も経験した次世代のスター候補だった。

 日本代表MF久保建英(ヘタフェ)ともたびたび比較され、将来を嘱望されていたが、近年は伸び悩んでいる。

 2017年夏にイタリアのエラス・ヴェローナへ移籍し、2019年夏からはベルギーのシント=トロイデンでプレー。今シーズン序盤はケヴィン・マスカット前監督から重宝され、13試合2ゴールと結果を残していた。

 しかし、チームの低迷でマスカット監督が解任されると、第17節(昨年12月19日、ズルテ・ワレヘム戦)から出場機会は訪れていない。ピーター・マース新監督の構想から完全に外れた形だ。

 ただ、23歳とまだ若く、伸びしろのある選手であるのは間違いない。新天地に適応するまでには時間はかかるが、新たに加入した本田圭佑からも学ぶことも多いに違いない。

 ポルティモネンセは今季ポルトガル1部リーグで第17節を終えて15位(4勝3分10敗)。低迷するチームの起爆剤となれるか――。

 日韓を代表するフットボーラーだけに、同じピッチの上で躍動する姿を見せてもらいたいと思っている。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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