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“ひっそり”とクラブW杯の初陣に監督として挑む元韓国代表Jリーガーのホン・ミョンボの現在地

金明昱スポーツライター
蔚山現代の新指揮官に就任しクラブW杯初戦に挑むホン・ミョンボ監督(写真:フォトレイド/アフロ)

 “アジアのリベロ”――。と聞けば、その名をすぐに思いつく人も多いはずだ。

 元韓国代表JリーガーのDFホン・ミョンボ。昨年まで大韓サッカー協会の専務理事を務めていたが、今季からKリーグの蔚山現代の監督に就任した。

 実に3年半ぶりの現場復帰となるが、その公式戦の初戦が4日からカタールで開幕するクラブワールドカップ(W杯)の舞台になる。

 昨季、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で8年ぶりの優勝を成し遂げた蔚山現代。リーグ優勝こそ全北現代に譲ったが、2020年は2位の成績を残した。

 そんな強豪クラブの新指揮官となったわけだが、現役時代は日本のサッカーファンにも馴染みがあるだろう。

 Jリーグのベルマーレ平塚と柏レイソルでプレーし、日本でもその名は広く知られているが、クラブW杯に監督として戦うことはほとんど報じられておらず、むしろ知らない人のほうが多いのではないだろうか。

 日本から見れば、“ひっそり”という言葉が合うのかもしれない。

 ただ、韓国では連日、話題になっている。何せ、3年半ぶりの現場復帰だ。指導者としての経歴もかなり華やか。U-20韓国代表監督、2012年ロンドン五輪では韓国サッカー史上初の銅メダルを獲得している。

 その後、2014年ブラジルW杯で代表監督に就任したが、グループリーグ最下位で敗退し、責任を取る形で辞任。2016年から約1年、中国リーグの杭州緑城監督を務めた後、大韓サッカー協会の専務理事として仕事をしていた。

 指導者時代は結果が良ければ称賛され、悪ければ批判の標的となった。酸いも甘いも噛み分け、こうして再び指導者としてスタートを切った。ちなみにKリーグで監督を務めるのは初めてのことだ。

 世界が注目するクラブW杯の舞台が現場復帰の初戦となれば、注目されて当然だろう。

ACL王者・蔚山現代のチーム状態は?

 現在のチームの状態はどうなのだろうか。

 ホン・ミョンボ監督が就任してから、クラブW杯までの準備期間は、わずか2週間と短かった。というのも、コロナ禍でACLの日程が変更され、昨年末までチームが稼働していたからだ。

 年が明けてからの貴重な休みもつかの間、1月13日から2週間の合宿を開始。その後、クラブW杯開催地となるカタールへと移動している。

 新チームの戦術を固めるにはあまりにも時間が短い。100%のコンディションで大会を迎えるのは難しいように思える。

 それに加えて悩ましいのがメンバー構成だ。昨季、24ゴールでKリーグ得点王のジュニオール・ネグランが退団。絶対的エースの不在とJリーグでもプレーしたイ・グノ(大邱FC)やパク・チュホ(水原FC)などベテラン勢もチームを離れた。

 また、主力のMFイ・チョンヨン、MFコ・ミョンジン、DFホン・チョル、MFイ・ドンギョンはケガで今大会メンバーから外れた。Kリーグ開幕に向けて大事をとった形だ。

 それでも簡単に負けることは許されない。ACLでMVPを獲得したエースナンバー10を背負うユン・ピッカラムのほか、ロシアW杯でも活躍した韓国代表GKのチョ・ヒョヌは健在。ボランチには“キ・ソンヨンの後継者”と言われるMFウォン・ドゥジェもいる。

 それにホン・ミョンボ監督も、FIFAとの公式インタビューで、「世界最高のクラブを相手に力を試す機会が得られてうれしい。Kリーグ開幕を前に準備する絶好の機会と考えている」と語っていた。

 現地の関係者によると「選手たちの士気は高い」という。やるからには勝利して、自分たちの力を証明したいと思っている。

 今大会はアジア王者の蔚山現代のほか、開催国代表のアル・ドゥハイル(カタール)、南米王者のパルメイラス(ブラジル)、アフリカ王者のアル・アハリ(エジプト)、北中米カリブ海王者のUANLティグレス(メキシコ)、欧州王者のバイエルン(ドイツ)の6チームが出場する。

 蔚山現代の初戦(4日、23時キックオフ、日本時間)の相手は、UANLティグレス。勝利すればパルメイラスとの準決勝(8日、3時キックオフ、日本時間)に進む。

 久しぶりに現場に戻ってきたホン・ミョンボ監督の采配に注目したい。 

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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