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渋野日向子の世界ランク超えも射程圏内? 女子ゴルフ今季3勝の古江彩佳の実力と東京五輪出場の可能性

金明昱スポーツライター
2週連続優勝で今季3勝目を挙げた古江彩佳(写真:日刊スポーツ/アフロ)

 コロナ禍で開幕が遅れた女子ゴルフツアーも来週のJLPGAツアーチャンピオンシップが最終戦となる。

 今年も多くの優勝者が誕生したが、その中でも頭一つ抜けたのが、20歳の古江彩佳だった。

 9月のデサントレディース東海クラシックで今季初優勝し、伊藤園レディスと大王製紙エリエールレディスで2週連続優勝を達成。古江はアマチュア時代に2019年の富士通レディースも制しており、ここまで4勝を手にした。

「2週連続優勝できたのはうれしい。楽しみながら、その場でどう集中するかだけ考えていました。安心感がある優勝ができたなという感じです」

 20歳179日での4勝到達。これは宮里藍(19歳1日)、畑岡奈紗(19歳295日)に次ぐ史上3番目の年少記録だ。

 今年もっとも勝ち星を挙げているが、賞金ランキングは2位。同1位は笹生優花だが、その差は約1600万円まで迫っている。

 11月23日に発表された世界ランキング(ロレックスランキング)では、畑岡奈紗が7位、渋野日向子が15位、古江は16位(先週まで30位)となり日本勢の3番手に浮上した。

 去年の賞金女王の鈴木愛(20位)を抜き、今週の最終戦の結果次第では、渋野を追い抜く可能性もある。

 これで来年に延期になった東京オリンピック出場への可能性も高まってきた。

 ちなみに東京五輪に出場できる女子ゴルフ選手は60名で、世界ランキングを基にしたオリンピックゴルフランキング(2021年6月28日時点)で決まる。15位以内に入れば1カ国最大4人までが出場可能で、16位以下は1カ国2名が上限。

 古江が世界ランキングで15位以内に入り、来年6月までに維持することができれば、東京五輪出場権を獲得できるということだ。

度肝を抜いたアマ時代の優勝とローアマ獲得

 古江は昨年、プロテストに合格した安田祐香や吉田優利、西村優菜(今季1勝)らと共に2000年生まれの“ミレニアム世代”として、ルーキーイヤーの今年は注目の存在だった。

 特に古江はプロになっても結果を残す予感はあった。

 高校時代は滝川第二高校ゴルフ部とナショナルチームで腕を磨き、2019年はプロのトーナメントに数多く出場した。

 同年の富士通レディースでのアマチュア優勝には驚いたものだが、そのほかの試合でもスタジオアリス女子オープン10位タイ、リゾートトラストレディース3位タイ、大東建託・いい部屋ネットレディース8位タイなどでローアマチュア(参加したアマチュア選手の中で、もっとも成績が上位の選手のこと)を獲得しており、すでにプロツアーでの実績は十分だった。

 ただ、アマチュア選手は、プロ選手と違って連戦ではないため、一つの試合に掛けられる点では体力面で有利といえる。そのため、古江もプロになってから活躍できるという保証はなく、シーズンが始まってみないと未知数の部分があった。

 今年はコロナ禍で試合数が減ったとはいえ、ここまで13試合に出場して、予選落ちはたったの1回。優勝3回以外に2位タイも2回ある。

抜群の安定感で隙がない

 なぜここまで結果を残せているのか。

 彼女にはドライバーの飛距離がものすごく出るとか、パットを沈めたらガッツポーズをして感情を表に出すような派手さはない。

 それよりもすべての面で安定していることが強み。特に1位のパーセーブ率は92.2764%と突出しており、ボギーを打たないのが特徴だ。

 それに平均ストローク2位(70.1168)、パーオン率10位(73.8482%)、平均パット数8位(29.2195)、フェアウェイキープ率4位(76.2857%)、リカバリー率1位(76.6839%)と隙がないゴルフで他の追随を許さない。

 勢いでピンを攻めていくようなスタイルでもないと思う。ルーキーとは思えないほどプレーも落ち着いている。

 その淡々としたベテランのようなプレーは、かつて2000年から2005年まで6年連続で賞金女王になった不動裕理をほうふつとさせる。

 古江はプロ転向を報告した会見で、目標を聞かれてこう答えている。

「賞金女王とジュニアゴルファーに憧れられる選手になることです」

 目標が明確なのは、不動の記録をよく知っているからこそだ。古江も「6年連続なんて、到底追いつける記録ではありませんが、自分もそこを目指そうと思ったんです」と目標を高く掲げている。

 次から次へと若い選手の登場で活気づく女子ゴルフ界だが、渋野の次のヒロインが古江になる日はそう遠くなさそうだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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