Yahoo!ニュース

「ツアーを引退したら直接レッスンする考えも」 イ・ボミが韓国で「ゴルフアカデミー」を開設した理由

金明昱スポーツライター
韓国で「イ・ボミ ゴルフアカデミー」を開設したイ・ボミ(写真・KLPGA提供)

 韓国発のニュースを見て驚いた。

 先週、イ・ボミが韓国の京畿道水原市で、プライベートゴルフスタジオをオープンしたというのだ。

 その名も「イ・ボミ ゴルフアカデミー」。これまで培ってきたノウハウをアマチュアゴルファーに教えるためのもので、プロから1対1のレッスンが受けられるという。

 まさかイ・ボミから直接レッスンが受けられるのか――。疑問に思い現地記者に話を聞くと、他にレッスンをしてくれるプロが数名、在籍しているという。具体的な中身はこうだ。

 レッスンスタジオとフィッティングショップを備えており、イ・ボミや世界ランク1位のコ・ジンヨンのコーチでもあるイ・シウプロが”ヘッドプロ”を務め、そのほかに5人のプロゴルファーが在籍しているという。

 イ・ボミは現役選手なので、ツアーに出場している間はレッスンをすることはないが、オフシーズンにはそういった機会があるかもしれない。

 これまで人に教える“レッスン”を避けてきたイ・ボミだが、なぜ今のタイミングでアカデミーを開設したのだろうか。

「これからはデータ分析が絶対に必要」

 その理由についてこう語っている。

「長らくツアー生活を送りながら、感覚だけでゴルフをする時代はもう過ぎたということがよくわかりました。データを基にしたレッスンが絶対に必要という考えからアカデミーをオープンしました。例えばこれまではコースや外の練習場では、感覚でスイングの修正をしていましたが、データを見ればスイングを直すのも的確で、すごく助かった経験があります。スタジオにデータを分析する装置があれば、効率よく練習ができますから」

 年齢を重ねることで、感覚だけでなく、データの重要性を強く意識するようになったのだろう。しかし、現役の選手がアカデミーを開設するのは珍しい。

 当初、イ・ボミはレッスンスタジオの開設を敬遠していたという。しかし、これを説得したのが母のファジャさんだった。

 8年前から同じ場所で「イ・ボミ スクリーンゴルフ」を運営しており、アマチュアゴルファーからレッスンの問い合わせが殺到していた。

 そこでアカデミー開設のタイミングを見計らっていたところ、今月ようやくオープンにこぎつけたということだ。

「もっと成長するためにも学ぶ」

 さらにイ・ボミはこうも話している。

「経験を積む過程で、自分が持っているノウハウを教える楽しみが少しずつ出てきました。ツアーを引退したあとは、直接レッスンする考えもあります」

 将来的には自らゴルフを教える側になることも想定しつつのアカデミー開設のようだ。

 昨年12月に俳優のイ・ワン氏と結婚。今シーズンはコロナ禍で一時帰国し、韓国ツアーに出場していた。

「韓国で9試合に出場しましたが、あまりいい成績を残せなくて悔しい気持ちのほうが大きいです。一方で、後輩たちと競いながら刺激を受け、学ぶことも多かったです。もっと成長するために学ばなければいけないと思いました」

 現在は来日して2週間の隔離生活中で、11月6日から開催される「TOTOジャパンクラシック」に出場する。イ・ボミにとっては日本ツアー今季初戦となる重要な大会だ。

 そのあとは「伊藤園レディス」(11月13~15日)と「大王製紙エリエールレディス」(11月19日~22日)に出場を予定している。

 夫のイ・ワン氏とはしばらく離れることになるが、久しぶりの日本での試合をかなり楽しみにしているようだ。

「隔離中は一人でトレーニングするしかありませんが、私が出場する大会はすべてよく知る大好きなコース。うまく適応していい成績を残したいです」

 日本でも屈指の人気を誇るイ・ボミの久しぶりのプレーを楽しみにするとともに、「ゴルフアカデミー」の動向にも注目していきたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

金明昱の最近の記事