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【独占インタビュー】「日本のみなさん、力を出して!」韓国から届いたイ・ボミからのメッセージ

金明昱スポーツライター
日本ツアーの中止が続くなか、韓国で練習を続けているイ・ボミ(筆者撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、日本女子ゴルフツアーは開幕戦から14試合続けて中止となり、今もなおいつ開幕するのか不透明な状況だ。

 2015、16年日本ツアー賞金女王のイ・ボミは、いま母国の韓国に滞在している。昨年12月に俳優のイ・ワン氏と結婚し、新婚生活を送っているところだ。

 近年の成績で見ると2018年は賞金ランキング83位となり、日本ツアー参戦以来、初めて賞金シードを落としたが、19年は同21位でシードに復帰。

 不安定だったショットの調子も戻りつつあり、プライベートとゴルフを充実させ、心機一転で2020年に挑もうとしていた矢先、新型コロナがゴルフ界を直撃した。

 世界のゴルフツアーが開催を迎えられないなか、日本ツアーに先駆けて5月14日から韓国ではメジャーの「KLPGAチャンピオンシップ」の開催が決定。

 韓国の永久シードを持つイ・ボミもここに出場することが決まった。以降も日本での試合中止が続き、韓国で試合が続けば、韓国ツアーに出続けるとも話している。

 現在はどのような生活を送っているのか。気になる近況について聞いた。

韓国で元気に過ごしているイ・ボミ。日本のファンにはがんばってほしいとエールを送る(写真提供・本人)
韓国で元気に過ごしているイ・ボミ。日本のファンにはがんばってほしいとエールを送る(写真提供・本人)

妻として料理を勉強中

――日本女子ツアーの中止が続いていますが、どのような心境ですか?

 日本ツアーですぐにプレーしたい気持ちもありますが、事態が深刻なので、日本国内でコロナが早く終息して、経済や人々の心が安定することを願っています。

――韓国ではどのように過ごしていますか?

 プロとして最小限の練習は続けていますし、妻としては料理について勉強しているところです。ツアーが始まれば、試合に集中しなければならないので、休んでいる間は、料理や家事をたくさんこなそうとがんばっています。

――新婚生活をする中で、独身時代とは違って新たな発見はありましたか?

 結婚前は母や家族にたくさん助けてもらっていましたが、これからは私が自らこなしたり、夫と一緒に何かをすることが多くなりました。これまで足りなかったことが多かったのですが、いろんなことを自分でこなすことで、少しずつ成熟していると感じます。家事は分担していますし、夫はたくさん手伝ってくれています。

――母のファジャさんは夫婦生活において、何かアドバイスはしてくれていますか?

 常に楽しく生きればいいと言ってくれています。夫を信じて、互いを支え合っています。夫はひそかに面白い人で、いつも笑って過ごしています。

週5日の練習と体力に重点

――ゴルフの練習は週にどれくらいのペースで、どのような内容の練習をしていますか?

 今は一週間に5日くらい練習しています。形のいいスイングを作れるように努力している最中です。

――具体的にどこがどのようによくなっているか。ショットやパット、体力面など。逆に課題は?

 ショットとパットのすべてが良くなっています。逆にツアーで戦うために必要な体力をつけるのが難しい状態なので、ツアー前にウェイトトレーニングやランニングマシーンに比重を置こうと思っています。

――世界で新型コロナウイルスの状況は日に日に悪化しています。日本の状況が心配になったり、何か感じることはありますか?

 日本でも感染拡大が少しずつ減っているというニュースを聞くと、安心しますが、完全に終息するまでには時間がかかるとも感じています。一日も早く事態が落ち着くことを願っています。日本にいる方たちが本当に心配です。

――韓国でのコロナ状況はどうでしょうか?特に気を付けていることはありますか?

 韓国は感染者が少なくなり、良くなっている状況です。外出時は常にマスクをつけています。

日本のファンを懐かしく思う

――最近、特に楽しかったこと、笑ったことはありますか?

 今は室内で練習することが多いです。私たちが運営する「イ・ボミ スクリーンゴルフ」で夫と練習したりしますが、そこでホールインワンをしました! その何ホールかあとにまた140ヤードのイーグルショットがカップインし、2人で大笑いしました(笑)

――この状況でいま一番つらいことはなんですか?

 無期限に延長されたツアーを待つことが一番疲れることでした。でも、考えを変えて、より練習する時間が増えたと前向きな思考を持って準備しています。

――いま一番やりたいことは何ですか?

 正常な生活に戻って、ツアー生活を送ることです!

――長らく試合をしないのは、プロゴルファー人生において初めてだと思います。試合があること、ファンのありがたみなど、何か気づいたことがあれば教えてください。

 ツアープロになり、これだけも長く試合に出られない状況を初めて経験してみると、試合を渇望する心境にもなりますし、会場に訪れるファンの方たちの姿も懐かしく感じます。これまで休むことなく走り続けてきたゴルフに対してたくさん考えることができていますし、充電する時間も十分にできていると思います。

「必ず乗り越えられる」

――世界が混沌とする状況で、選手の立場としては何をすべきだと思いますか? 今、自分にできる一番のことはなんでしょうか?

 ツアーの中断期間に、韓国のゴルフチャンネルではたくさんの選手たちが、近況を伝えたり、ゴルフレッスンをしたりしています。私も機会があれば、そのような時間を作り、ゴルフについて話したいと思っています。

――今年の具体的な目標。先が見えないなかでも、これだけはちゃんと続けているというものがあれば教えてください。

 ゴルフは常に一貫性を持つことが重要なスポーツなので、どのような状況でもブレず、一貫性のある練習の習慣をつけようと努力しています。目標は常に優勝に向けて努力することです。

――日本のファンへメッセージ。今、一番伝えたいことはありますか。

 日本のファンのみなさんはとても辛い時間を過ごしていると思います。力を出してください。必ず乗り越えられます。元気な姿でみなさんにお会いできるように、私も努力していきます。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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