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「空席もったいない」と本田圭佑がAFC規定に苦言。広島対メルボルン戦のチケット完売でもガラガラのワケ

金明昱スポーツライター
日本凱旋してから様々なことを語っていた本田圭佑(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 12日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)サンフレッチェ広島対メルボルン・ビクトリー戦。

 メルボルンの主将としてスタメン出場したMF本田圭佑。試合は広島に1-2で敗れたが、随所に見せ場を作り、攻撃の起点となった。

 後半26分には右サイドからDFストーム・ルーが折り返したクロスに、中央に走り込んできた本田がスライディングシュートで同点ゴールを決め、久しぶりの日本で躍動した。

 この日、広島はチケットが完売したと発表。このニュースは“本田効果”も相まって、ある程度、予想されていたかもしれない。

 ただ、ホームスタジアムの「エディオンスタジアム広島」に足を運んでみると、異様な光景が目に飛び込んできた。

 スタンドの空席が目立っていたのだ。そもそも、同競技場の最大収容人数は約3万5000人だが、この日、集まった観客は8968人。

 何も知らない人の中には「なぜそんなに少ないの?」と感じる人がいてもおかしくはないだろう。

「背もたれの座席が必要」のAFC規定

 結論から言えば、“完売”したのはアジアサッカー連盟(AFC)の規定に沿って販売した席ということだ。

 では、そのAFCの規定とは一体なんなのか。

 もっとも分かりやすいのが、ACLの試合では「背もたれがないシートは使用できない」と定められていることだ。

 エディオンスタジアム広島は今季、長椅子形式のシートから“背もたれ”のある新しい座席に一部、改修しているのだが、その部分のチケットが完売した。

 ただ、ゴール裏や上層席は長椅子なので、AFCの規定に沿って開放されなかった。空席が目立ったのはそれが理由だ。

 久しぶりの日本での試合を楽しみにしていた本田が、この光景に気づかないはずがない。

「満員でないスタジアムに違和感」

 試合後、本田はこのことについて自身の見解についてこう語った。

「日本に来ているのに、スタジアムが満員じゃなかったのは、違和感しかありません。まずAFCのルールを変えたほうがいい」

 用意された座席分がすべて完売したことについては、本田も知っていた。そのうえでこう持論を展開しはじめた。

「やっぱり空いているスペースがもったいないですよ。広島はプロ野球のカープが人気があるって聞きました。サンフレッチェもいいサッカーをしているのに、今日みたいな日は、もっとたくさんの人が応援してもいいんじゃないかなと思います」

 本田はベンチシートでも、見たい人たちがいるなら、もっと観客を入れるべきだという考えだ。

次の話題は東京五輪か

 確かにこの日、Jリーグと違う限定数の座席のため、チケット完売が早く、当日券は販売されていなかった。

 広島のサポーターやファンだけでなく、本田を一目見てみたいとスタジアムに足を運んだ人、運んでみようと思った人もいたに違いない。

 そんな人たちの足を遠ざけてしまうような形にもなりかねないAFCの規定と観客の少なさに敏感に反応していた本田。

 日本に凱旋してから感じることがたくさんあったのだろうか、口数も多かったように思う。

 気づいたことをたくさん口にして問題提起し、足跡を残していった。それに、最後はゴールという結果を残して日本を去った。

 次は2020年東京五輪でオーバーエイジ枠での出場を本気で狙っているが、まだまだ話題が尽きることはなさそうだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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