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アジア杯16強でサウジと戦う日本に助言!同組で戦った北朝鮮代表Jリーガーが語った要注意選手と弱点とは

金明昱スポーツライター
今大会2得点を決めているサウジのエースFWファハド・アルムワッラド(写真:ロイター/アフロ)

 サッカーアジアカップの決勝トーナメント1回戦で、日本代表は21日にサウジアラビアと対戦する。

 日本とサウジアラビアは過去に13回対戦し、日本の8勝1分4敗。過去の成績では日本のほうが上だが、油断は禁物だ。直近の試合では2017年9月5日に行われたワールドカップ予選で0-1と敗れている。

 では、現在のサウジアラビアはどういうチームなのか。

 今大会、北朝鮮はグループステージ初戦で対戦し、0-4で大敗した。私も現地でこの試合を見たが、サウジアラビアは攻守において非常にバランスの取れたチームという印象を受けた。うまさに加え、個の能力で突破する力強さもあった。

 それに2017年11月から同代表チームを率いているのは、アルゼンチン出身で元スペイン代表のフアン・アントニオ・ピッツィ監督。チリ代表を2016年のコパアメリカで優勝に導いた実績もあり、指揮官への信頼も大きい。

 スタジアムの記者席で、隣に座っていたサウジアラビア人記者は北朝鮮に大勝したあと、「まだ若いチームだが、優勝候補だ」と余裕しゃくしゃくだった。

 チームの平均年齢は26歳と確かに若い。今のサウジアラビアは簡単に敗れることはない――。

 サウジ記者の笑顔からはそんな余裕さえ見えた。

「組織的でつなぐサッカーをする」

 実際に戦った選手の立場ならどうだろうか。

 北朝鮮代表で在日Jリーガーの李栄直(東京ヴェルディ)に、チームの特徴やストロングポイント、ウィークポイントなどについて聞いた。

北朝鮮代表としてアジアカップに出場した東京ヴェルディ所属の李栄直(後列右から3番目、筆者撮影)
北朝鮮代表としてアジアカップに出場した東京ヴェルディ所属の李栄直(後列右から3番目、筆者撮影)

「攻撃に関しては、しっかりとボールをつないでゲームを展開します。中東のチームはドリブルをしがちだとか、ボールを持ちすぎるイメージがありますが、決してそうではない。最終ラインから選手同士が声を出し合って、早いテンポでしっかりつないできます」

 李の話では技術がしっかりしていて、かなり組織的なプレーをしてくるという。

「サイドからの攻撃ではチャンスと見れば、ドリブルで積極的に仕掛けてきます。FWはスピードがあるので、隙を見せると危ないでしょう」

19番24歳FWの決定力に注意!

 では、特に注意すべき選手は誰か。

「19番のFWファハド・アルムワッラド(アル・イテハド)はとても能力の高いFWです。スピードとフィジカルに優れていて、積極的にゴールを狙ってくるでしょう。14番のMFアブドッラ・オタイフ(アル・ヒラル)も左サイドからの攻撃がとてもやっかいだった印象があります。それに10番で主将のMFサレム・アルドサリ(アル・ヒラル)はピッチを動き回って、ボールをもらいにいき、パスを供給する。攻撃にしっかり絡んできます」

 特に19番のファハド・アルムワラッドは、今大会2得点と絶好調。24歳ながらA代表キャップ数はここまで54試合と多く、ゴール数も「13」と決定力も高い。日本はかなり警戒する必要がありそうだ。

「ペナルティエリア内に入ってきたときの、攻撃のバリエーションの多さには気を付けたほうがいいでしょう。シュートを打とうとする意識の高さがかなりあるので、そうした怖さはありました。少しでも距離を開けるとシュートを打ってきます。1対1の勝負でも、抜いてくるスピードと技術はあるのでその対応はすべきです」

サウジの弱点はCBの2人?

 北朝鮮代表の李にとっては、0-4で敗れた相手。弱点を見つけるのは難しいかもしれないが、それでも付け入る隙はどこかにあるはずだ。

「攻撃に意識がありすぎる分、ボールを取られたときのカウンターに対処する切り替えは遅いなと感じました。サウジの選手はボールばかりを見るときがあります。例えば、セカンドボールを取るときのポジショニングがおろそかになったりするので、逆に日本のポジショニングがしっかりしていれば、攻め続けるのは可能です。あとはCBの2人のボールの持ち出し方が良くないなと思っていたので、そこを徹底的にはめて行ければ、得点チャンスが生まれると思います」

「日本は必ず勝てる」

 李は球際の勝負やフィジカルにおいても、「日本からすれば、そこまで圧倒的な強さを感じないはず。日本の攻撃陣なら大丈夫でしょう」と語っていた。

 Jリーグで日本のサッカーを経験している彼からすれば、日本が確実に主導権を握れるとの確信があるようだ。

 最後に予想スコアを聞いてみた。少し悩みながら、「2-0で日本が勝利しますよ」と笑顔を見せる。

「圧勝は難しいでしょうが、今の日本が自分たちのサッカーをしっかりやれば、負ける相手ではありません。自分たちは負けましたが、日本の勝利を期待しています!」

 日本で育ち、Jリーグを知る北朝鮮代表の貴重な視点と助言。しっかりと肝に銘じたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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