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窮地に追い込まれた韓国代表を救えるか!?南野拓実の同僚FWファン・ヒチャンに注目!

金明昱スポーツライター
韓国代表期待のFWファン・ヒチャン(写真:ロイター/アフロ)

 ロシアワールドカップ(W杯)アジア最終予選でA組2位の韓国代表。

 今日31日の21時からソウル・ワールドカップ・スタジアムで同1位のイランと対戦する。すでにイランはW杯出場を決めているためプレッシャーはないが、韓国は追い込まれた状況だ。

 最終戦はアウェーで同3位のウズベキスタンとの対戦が控えており、勝ち点差はわずか「1」。

 韓国がイランに勝利し、同日に開催されるウズベキスタン対中国戦で、ウズベキスタンが敗れた場合、韓国はW杯出場権を手にする。だが、その道は「日本よりも険しい」との見方が強い。結果次第ではA組3位に転落し、アジアプレーオフに進むことも考えられる。

 そんな韓国代表に注目の若手FWがいる。2015年にオーストリアのザルツブルクに入団し、19年まで契約を結んだ韓国代表FWファン・ヒチャン(21)だ。

 昨季リーグ12得点(公式戦通算16得点)で、チーム得点王となった。今季もリーグ3得点(公式戦通算7得点)と絶好調だ。トッテナムでプレーする韓国代表FWソン・フンミンに次ぐ、期待の新星として注目を集めている。

 ちなみにファンは日本のFW南野拓実と同僚で、2人のアジア人FWが昨季リーグ優勝に貢献している。

欧州クラブが韓国10代選手をスカウト中!?

 最近、欧州のスカウトやエージェントが韓国の才能豊かな10代の選手を現地まで見に来るケースが増えているという話を聞く。

 ファンだけでなく、韓国Kリーグ・クラシック(1部)の浦項スティーラーズのユース出身で、今年韓国で開催されたU-20W杯に出場したイ・ジンヒョン(19)も8月にオーストリアのFKアウストリア・ウィーンへの入団を決めたばかりだ。

 韓国10代選手の欧州行きが活発化する大きな引き金となったのが、ファンの移籍だった。

 ザルツブルク移籍時、ファンの年齢は18歳。当時、Kリーグの浦項と契約を交わしていたが、Kリーグデビューする前に欧州行きを決心した。

 それはなぜか。理由は大きく2つある。1つは契約条件。

 Kリーグのユース出身の新人選手は、所属クラブの優先指名で入団するのが原則となっており、浦項ユース出身のファンは、高校卒業後に浦項と契約。

 Kリーグの規定ではファンのケースだと、契約金は最高額で1億5000万ウォン(約1500万円)。さらに年俸は3600万ウォン(360万円)で、いくら才能があっても初年度から基本的にこの金額を超えることはなく、2年目から活躍すれば年俸も上がるが、最大でも倍額が相場だ。

 2つ目はチームで出場機会が中々得られないという問題もある。いくら優れた10代選手でも、1年目から試合で出るのを確約されているわけではない。試合に出らなければ成長は見込めず、歳を重ねると兵役の問題も出てくる。

 ファンのように海外クラブからオファーがあれば、国内に残るか、海外に出るのか迷う気持ちも分からなくない。実力を伸ばし、経験を積むためなら、海外オファーを断る理由は見当たらない。

 国内にいても出場機会を得られないのであれば、他クラブで出場機会を求めるのは当然だろう。

 年代別W杯に出場するなどして「世界で通用する人材」と認められているのであれば、ファンやイのように海外クラブを選択するケースがこれからも増えると見られる。

 ファンは10代で海外移籍を選択したわけだが、着実に結果を残してからは国内でも注目され、昨年8月に韓国代表に初選出。今年6月のW杯最終予選のカタール戦で、代表初ゴールを記録している。

 大一番となるイラン戦でも注目のファンだが、練習中の右ヒザ負傷で先発出場するかは不透明。エースのソンも右手首骨折の回復が思わしくなく、出場するかはまだ分からない。

 エースと期待のFWを欠くかもしれない韓国代表。それでも今日のイラン戦だけは負けられない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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