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中村倫也のサプライズ登場。 NHKのレジェンドディレクター和田勉に似ている?

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

あまりの勢いに、若干抑えてもらったくらいの大声だった

朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)もいよいよ残り2週となった。第25週「ズキズキするわ」のはじまりは、懐かしい股野(森永悠希)が登場し、しかも、彼の娘が若手注目株・水城アユミ(吉柳咲良)という驚きの展開に。

でも最も驚いたのは、沼袋勉ディレクター役で中村倫也さんが予告もなしに登場したこと。サプライズということでオンエア後に情報解禁となり、3月18日(月)正午にNHKからコメントと写真がリリースされた。

制作統括の福岡利武チーフプロデューサーは

出演の経緯をこう語る。

「沼袋勉役で中村倫也さんに出ていただけて、面白みのあるキャラクターになったと思います。僕も大好きな役者さんで、どこかで機会があれば出ていただけないかなあと思っていたところ、クセの強いディレクターを足立紳さんが書いてきて、これを中村さんにやってもらったらひょっとして面白いんじゃないのかなと思いご相談したところ、ご本人がとてもやる気になってくださったようで、出演が叶いました」

クセの強いディレクターということで、声が大きく、ダジャレを連発し、サングラス姿の、やや胡散臭い人物を中村さんがユーモラスに演じている。

「モデルとは言いませんが、NHKのドラマ演出家の和田勉さんを若干意識した役ですね。いま、名前を出しちゃいましたが(笑)。この裏設定を、中村さんが面白がって、髪型や衣裳も意識したようなものを着こなしてくださっています。サングラスや髪型など、敬意をこめて扮してくださいました。手に持った孫の手は、演出の福井充広が何か手に持たせたいと言って、持道具スタッフがいろいろ用意したなかで、中村さんが選び、見事に使いこなしてくださいました」

福岡CPは「ダジャレばかり言っているようで、ちゃんと物の道理を分かっている人物を楽しいお芝居で見事に演じていただけました」と中村倫也さんの演技力に舌を巻いたと振り返る。

「柔らかい役から硬い役まで、どんな役でもできて、説得力がある、素敵な俳優さんですが、さすがに、このクセの強い役はどう演じられるだろうかと思っていたら、リハーサルでまず、現場の誰もがのけぞるぐらい大声を出されたんです。声が大きいだけでもおかしいのだと言うことがよく分かりました(笑)。中村さんはかなり型破りな演技プランを考えていらっしゃったようで、想像を超えた押し出しの強さを発揮されましたが、あまりの勢いに、若干抑えてもらったくらいなんです」

「半分、青い。」のウィスパーボイスの優男とはまったく違った演技で、豊かな才能を見せつけた。

中村倫也さんのコメント

――「ブギウギ」に出演することが決まって

「ピンポイントで出てきて場を乱す、だけどヒロインの人生においてひとつのきっかけともなるという、絶妙な役をいただきました。ピンポイントながらも意外とタスクが多い役で、楽しみだなと思うのと同時になかなか大変でもありました。いいバランスでちゃんと”飛び道具”としていられたらいいですね。これまでずっとやってきたスズ子役の趣里さんをはじめ、他のキャストのみなさんともいい具合に絡んでいけたらと思って撮影に臨みました」

――ご自身の役について

「役についていろいろ考えたのですが、最終的に何でもいいや!と(笑)。沼袋のように『正しいのかどうかよくわからないけど、場がその人のアイデアに支配されて、おもしろいんじゃないかと思わせる人』って、たまにいると思うんです。こういう声が大きい人は、なぜか案が通るという感覚もありますね。この人すごく楽しそうにアイデアを説明するな〜という、巻き込み型のキャラクターだということだけを思って現場に入りました。

ダジャレについては、心を無にして言いました。ダジャレを言う人は、笑いが取れるかどうかじゃなく、とりあえず思いついたことを口に出しますよね。だから何も考えずにやりました。この役はギリギリすべってるぐらいがちょうどいいんです。沼袋だけ見たら『なんだコイツ!?』ってなりますが、スズ子や周りの人が『敏腕ディレクターだから』とほめてくれるのでバランスが取れているんじゃないかと思います」

――撮影に参加して

「NHK大阪は、僕が18、19歳のときに出演させていただいた朝ドラ『風のハルカ』(2005年後期)の撮影で通った思い出の場所です。景色が変わったところもありますが、ひとつひとつが懐かしいです。久しぶりに参加して、朝ドラはやっぱり撮るものが多いので、すごく撮影が速いですね。そこに途中参加するのは、長いこと回している大縄跳びに入るようなものです。朝ドラの大縄跳びは速い上に縄が3本回っているようなものなので、引っかからないように、速いテンポ感の中でどのように加わっていくかという点で、とてもやりがいがありました」

――ヒロイン・趣里さんについて

「趣里さんは同じ事務所の後輩で、彼女が事務所に入った頃から約10年来の付き合いです。衣装合わせのときにスタッフのみなさんに『趣里さん、がんばってますか?』と聞いたら、みなさん『趣里さんのおかげで!』『趣里さんじゃないと!』ということをおっしゃるんです。一緒に仕事してる人からそう言ってもらえるのは、俳優として以前の、人間としての部分の評価なので、がんばってるんだなと思いました。こう言ってもらえるのは彼女のがんばりや気遣いあってこそだと思います。スタッフのみなさんにそう思われているなら、立派なヒロインなのではないでしょうか」

――放送を楽しみにしている視聴者のみなさんへ

「これまで長い期間みんなで一丸となって作ってきたこのドラマも、いよいよ終わりが近づいてきました。どうか最終回までぜひ見届けてください」

沼袋勉は今回だけの登場ではなく、まだ登場するそうだ。ダジャレはまだあるか、期待したい。

ちなみに和田勉さんは1953年にNHKに入局、芸術祭に入賞する優れたドラマを次々演出するのみならず、押し出しの強い個性的なキャラクターで注目された。代表作に「阿修羅のごとく」「ザ・商社」など多数がある。

連続テレビ小説「ブギウギ」
総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間の振り返り
NHKBS【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
NHKBSプレミアム4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>
【音楽】服部隆之
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛  菊地凛子 小雪 生瀬勝久 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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