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警察指導者が「見たことない」と神妙な顔をしたカツ丼シーン。CPは刑事もの朝ドラに意欲も〈ブギウギ〉

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

刑事といえば内藤剛志

朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)の第24週はこれまでとちょっとムードが違う。愛子(このか)を誘拐すると脅迫電話がかかってくるというなかなかスリリングな出来事が起こり、刑事ドラマでおなじみの内藤剛志が刑事役で登場したのだ。

制作統括の福岡利武チーフプロデューサーはこのキャスティングに手応えを感じている様子を見せた。

「第24週の主眼は、小田島(水澤紳吾)がどういう思いで愛子を誘拐しようとしているかではありますが、並行して、刑事役の内藤さんを楽しんでいただければいいなと思いました」

朝ドラでは過去、登場人物が逮捕されたり万引きしたりというエピソードもあるのだが、「ブギウギ」では主人公の子供の誘拐事件でわりとおおごとである。しかもこれは、スズ子のモデル・笠置シヅ子が実際に経験したことなのだ。

「自伝に書いてあるんですよ。実際に誘拐は実行されていないのですが、誘拐するぞと脅して金銭を要求され、犯人は捕まって、すごく怖い思いをしたと書いてあります。このエピソードを足立紳さんが取り入れることになったんです」

重要なのは誘拐事件を追う刑事・高橋を演じる俳優のキャスティングだった。

「真っ先に浮かんだのが、内藤さんでした。内藤さんは大阪ご出身で、この役をとても楽しんでくださいました。刑事役は、内藤さんには得意の領域でもあるわけで、現場でもいろんなアイディアを出しながら演じてくださいました」

「ブギウギ」より 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

まさかのカツ丼コント

内藤さんの佇まいが、足で捜査する実直な刑事そのもの。違う番組がはじまったのではないかという気さえするユーモラスなエピソードになった。とりわけ面白かったのは、第115回の取調室コントのような、カツ丼を食べるシーンだ。

「僕も台本を読んでいてひっくり返りました」と福岡CPは語る。

「取り調べ中にカツ丼が出てきて、小田島に食べさせるのかと思ったら、高橋がおもむろにカツ丼の蓋を開けて黙々と食べ始める。足立さんなりの大いなるユーモアで、そのあと、特上が出てきて、それが小田島の分であるという、それが美味しそうで、泣けてくる。よくできた台本ですが、撮影現場ではいささか不思議な空気になりました。オチはわかっていても、犯人を差し置いて、刑事が食べるという場面は見たことがないですから。警察指導の方もものすごく神妙な顔で『この展開は見たことありませんね』と言いながら、とても楽しそうに現場を見ていました」

カツ丼に関しては、厳密にいえば、カツ丼に限らず、取り調べ中、容疑者が食べ物を注文する場合、代金は容疑者が支払うことになっているそうだ。つまり特上を高橋が奢るわけではなく、小田島の自腹? 貧しい彼には負担になるから高橋が自分の分含め自腹を切ったということだろうか。リアリティはともかく、おもしろいシーンではあった。

また、犯人からの電話を受けるとき、柵越しにスズ子の顔を撮るなど、ミステリー調なカット(演出は二見大輔さん)もメリハリが効いていてよかった、と福岡CPに言うとーー。

「第113〜115回を見て、朝ドラで刑事ものはいけるんじゃないかと思ったんですよ。やってみたら面白そうだなと。是非企画してみたいですね(笑)」

ヒロインが刑事なのか、お父さんが刑事なのか、刑事もの朝ドラ、ぜひ実現を期待する。

「ブギウギ」より 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

連続テレビ小説「ブギウギ」
総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間の振り返り
NHKBS【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
NHKBSプレミアム4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>
【音楽】服部隆之
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛  菊地凛子 小雪 生瀬勝久 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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