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ラインダンスの転倒は草彅剛が身体能力を駆使して自ら仕掛けた。「やられたらやり返すぞ」〈ブギウギ〉

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

菊地凛子と草彅剛のラインダンス

「私ついに踊るのか」と菊地は驚いた。

朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)も残り3週。第24週の幕開け、第112回では羽鳥(草彅剛)の2000曲記念パーティーが開催され、茨田りつ子(菊地凛子)と羽鳥がラインダンスで躍動を見せた。この回の裏話を制作統括の福岡利武チーフプロデューサーに聞いた。

「羽鳥のモデルである服部良一さんが実際に行った催しを模したもので、パーティーというか、2000曲記念のコンサートがあり、サプライズとして、みんなでラインダンスを踊ったそうなんです。それを服部良一さんがすごく喜んだという資料を読みまして。その資料に、当時の写真が載っていて、そこに淡谷のり子さんがとても楽しそうに踊っている姿があったんです。歌って踊るイメージのない淡谷さんが、なぜこんなに楽しそうなんだろうとすごく印象に残り、このエピソードをドラマでやってみたいと思いました」

台本を読んだ菊地凛子さんは大層、驚いたそうだ。

「『私、ついに踊るのか……』『私、そんな踊れないのだけれど……』と心配されていたので、『そんなに踊れなくていいんですよ』と説明させて頂きました。それでも緊張されて、ラインダンスの練習を本番一ヶ月前くらいから折りに触れ熱心にやっていらっしゃいました。その結果、足もかなり上がっていいステージになったと思います。とても綺麗に踊っていらっしゃって、実は『踊りもいける』ということを示されたのかもしれません(笑)」

「ブギウギ」より 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

ラインダンスといえば、「ブギウギ」初期のハイライトのひとつだった。梅丸少女歌劇団で、スズ子たちが大和(蒼井優)の指導のもと一丸となって踊った、あの感動は思い出すたび胸が熱くなる。

「ラインダンスは後ろ手でお互いを支えながら踊るので、一体感が生まれますし、本番のみならず、スズ子の家で練習するところも含めて、趣里さんも、菊地さんも、とても楽しそうにしていらっしゃいました」

草彅が思いっきりこけることを現場で思いついて実行 おしりから転ぶ難しいアクションに挑戦

まさかの茨田のラインダンスのあと、羽鳥までラインダンスに加わる。

「やられたらやり返す」と「半沢直樹」のようなセリフを言って、ラインダンスをはじめるとすべって転んでしまい、「これがほんとのサプライズだ」とか「目には目を歯には歯をだ」とか言うところは、草彅さんが付け加えたものだとか。

「台本には『善一、足は上がってないがとても楽しそう』とト書きにあり、その姿を笑ってもらうという意図だったのですが、草彅さんが思いっきりこけることを現場で思いついて実行されたんです」

転んで尻もちをついて、驚きながら笑っているところはひじょうにハプニング感があり、偶然起こったことをそのまま撮影したかのように自然に見えた。

「草彅さんは転ぶときにすごく足を上げているんですよ。楽しさもあって勢い余った感じもあるというアクションをすごく上手にされていました」

自らおしりから転ぶのはなかなか難しいアクションだろう。それをあんなに自然にやってのけたのは、草彅剛が長年、エンターテインメントの世界で積み重ねてきたスキルとセンスの賜物だと思う。

「あんなふうにおしりから転ぶなんて……と現場はみんなびっくりしたのですが、全然大丈夫ですとおっしゃって、受け身をうまく使ってケガしないように衝撃を逃しているようでした。趣里さんと菊地さんの踊りで盛り上がるのを見て、草彅さんがすごく喜んでいて、そのなかで、自分も思いっきり足を上げて転ぶことを思いつかれたのかなと思います。へっぴり腰で踊り続けるだけでは終われないと思われたのではないでしょうか。台本に書かれた以上にとてもチャーミングなエピソードになりました」

みごとな名パフォーマー・草彅劇場になっていた。

連続テレビ小説「ブギウギ」
総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間の振り返り
NHKBS【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
NHKBSプレミアム4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>
【音楽】服部隆之
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛  菊地凛子 小雪 生瀬勝久 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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