Yahoo!ニュース

笠置シヅ子も福来スズ子(趣里)も決め手は中腰。「ジャングル・ブギー」〈ブギウギ〉

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 「ジャングル・ブギー」を披露するスズ子(趣里) 写真提供:NH

大ヒット曲「東京ブギウギ」に続く次の一手「ジャングル・ブギー」がついに完成。有名監督の作詞、羽鳥善一(草彅剛)作曲によるぶっ飛んだ曲をこれまで以上に派手な衣裳で披露するスズ子。客席には、おミネ(田中麗奈)やタイ子(藤間爽子)など、戦争によって人生をめちゃくちゃにされた女たちがいて。彼女たちは心からスズ子の歌を楽しんだ。

朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」第96回の盛り上がりを、制作統括・福岡利武チーフプロデューサーに聞いた。

いま、正規で見られる笠置シヅ子さんの「ジャングル・ブギー」は、黒澤明監督映画「酔いどれ天使」のなかで歌っているものなどがある。そこでの笠置さんの踊りと、スズ子の踊りは少し違う。笠置さんは全身を震わせて大ぶりな動きが特徴的だが、スズ子は背筋を伸ばして妖艶かつ洗練された雰囲気が漂う。この振り付けの違いの意図は?

「『東京ブギウギ』も『ジャングル・ブギー』も“ワイルドさ”はすごく狙ったところです。趣里さんは立ち姿や歩き姿がすごく凛々しいのですが、それをあえて、中腰になってもらって、何かを狙うかのような動きをしてもらっています。そのポーズにはすごくこだわりましたし、そこにはとくにワイルドさが出ていると思います」

中腰の決めポーズは、「酔いどれ天使」を確認すると笠置さんも行っているが、趣里さんも笠置さんに負けず深く腰を落とし、趣里さんの足腰の鍛錬を感じさせた。

「中腰でいる時間が長くて、趣里さんは『これはなかなか大変だ』とおっしゃっていました」

「ブギウギ」より 豹柄がワイルド 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 豹柄がワイルド 写真提供:NHK

衣裳もワイルドさを強調した。

「歌の冒頭でも『私は女豹だ』と歌っていますし。残された資料を見ると、笠置さんもジャングルのイメージが浮かぶような衣裳でしたよね。歌詞のインパクトから生まれた、非常に素敵な衣裳になったかと思っております。衣裳部が頑張ってくれまして、ほどよくセクシーなものになりました。なぜか、撮影の時、女性スタッフたち、何人かがヒョウ柄を着ていて、ヒョウ柄がかぶったとみんなで笑って、このままステージ上がろうかと冗談を言っていました。趣里さんの髪型も素敵ですよね。『テンション上がります』みたいな感じで盛り上がっていました」

ほかにこだわったのが、後半、ステージの前面に出て踊るところ。

「おミネたちが思わず立ち上がって一緒に踊る演出になりました」

これまでスズ子はバックダンサーと一緒に踊っていたが、『ジャングル・ブギー』ではひとり。

その分、おミネたちが一緒に踊りだすことで、『ジャングル・ブギー』は庶民たちのための歌なのだということが伝わってくるようだった。

「ラッパと娘」からずっと、笠置シヅ子さんをモデルにしながらも、笠置シヅ子さんのコピーではなく、趣里さんが演じる“福来スズ子”の個性がどんどん出来上がっていって、趣里さんしかできない表現が極まっていく。「ジャンル・ブギー」を見ながら、それを模索してきた半年だったように感じた。

「そんなふうにして、振り付けの木下菜津子先生も今までずっと一緒に趣里さんの振り付けに取り組んでいました。『ジャングル・ブギー』のワイルドさとは、激しく踊りまくることではなく、趣里さんが持つ凛々しさから出るワイルドさを大事にしたものなのだと思います」

この「ジャングル・ブギー」は有名監督が作詞したと羽鳥が言っていた。この監督の映画を想起させる「酔いどれ天使」はドラマに出てくる?

「それはないです。ただ、来週はまたスズ子がお芝居(映画)の世界で活躍します。お楽しみください」

「ブギウギ」より バックダンサーなしでひとりで歌い踊るスズ子(趣里)写真提供:NHK 
「ブギウギ」より バックダンサーなしでひとりで歌い踊るスズ子(趣里)写真提供:NHK 

連続テレビ小説「ブギウギ」
総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間の振り返り
NHKBS【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
NHKBSプレミアム4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>
【音楽】服部隆之
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛  菊地凛子 小雪 生瀬勝久 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

木俣冬の最近の記事