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「始末、才覚、算用」の額縁は「わろてんか」北村笑店から流用 #ブギウギ #朝ドラ

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 写真提供:NHK

わかる人にはわかってもらえると思います、と美術スタッフはニヤリとして

〜年末年始をはさんで年明けもまだ戦時中だけど

朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)が折返しを迎える。年末は、28日(木)まで、年始は1月4日(木)からの再開となる。

前半のクライマックスでは、結核に冒されている愛助(水上恒司)をスズ子(趣里)が三鷹で献身的に介護することになる。

不穏なはじまりとは裏腹に、サブタイトルは「今がいっちゃん幸せや」で、スズ子と愛助は幸せな愛の日々を過ごす。あんなに反対していた坂口(黒田有)も味方に……。

残るはトミ(小雪)だけ。さてどうなる? という状況下、あいかわらず、トミはデン!と構えて圧が強い。彼女のいる、村山興業の大阪本社には「始末、才覚、算用」と書かれた額縁がデンと飾ってあった。あれ、この文字、どこかで見たことがある。「わろてんか」(17年度後期)にも同じものが飾ってあった気がして、さっそく、「ブギウギ」制作統括の福岡利武チーフプロデューサーに聞いてみた。

福岡「小道具流用です。結構細かいところに『わろてんか』の北村笑店のものが割と流用されています。わかる人にはわかってもらえると思います、と美術スタッフはニヤリとしておりました」

やっぱり美術さんは、期待を裏切らないでくれた。

朝ドラは、過去の小道具をさりげなく使っていることが多い。「カムカムエヴリバディ」(21年度後期)の「雉真足袋」の看板が使用されていることも話題になった(第2回)。今回の額縁は、わろてんかのヒロインてん(葵わかな)が嫁いだ北村屋の家訓がこれで、それがのちの北村笑店にも受け継がれた。北村笑店と村山興業は同じ大阪の大手老舗興業会社である。じつは「カムカム〜」でもこの看板は吉右衛門(堀部圭亮)の店内で使用されていた。

厳しい時代の中、誰もが必死に生きていく

戦争や病と心配事もありながら、愛や笑いも振りまいて、23年の放送が終わっていく。平日は年中無休のイメージの朝ドラだが、大阪局制作の作品は、年末年始も、土日以外で休みになる。そのため、前半と後半、体感的に明確に分かれる印象があるが、この場合、ドラマ作りで気を使うことはあるのだろうか。

福岡「年末で終戦を迎えて、年明け、戦後から再スタートという構成も考えましたが、羽鳥善一(草彅剛)の上海のエピソードを、今後の『東京ブギウギ』誕生のためにもしっかり描きたいですし、スズ子のみならず、それぞれの登場人物の終戦を描こうと考えたら、台本が膨らみまして。年明けの14週から15週が終戦またぎとなりました。

年が明けても戦時中ですが、じょじょに変わっていきます。年末年始は、厳しい時代の中、誰もが必死に生きていくところを感じていただければと思います。厳しい時代でも、それぞれの大切なものを失ってはいけない。例えば、歌。羽鳥は常々、音楽は自由なんだと言っていて、どれだけ戦争が激化しても、その思いは変わりません。スズ子も歌い続けていて、それに感動する人たちがいます。スズ子や羽鳥や茨田りつ子(菊地凛子)たちの音楽によって、目の前が開けていく感じに、年明けからは展開していければと思っております」

スズ子と愛助の純粋な愛情も光となる。

福岡「13週は『今がいっちゃん幸せや』というサブタイトルどおりに、戦時中でも幸せな時間を過ごすところを描かせていただきました」

本編はお休みだが、29日には総集編、1月3日はスペシャル番組が放送される。

連続テレビ小説「ブギウギ」
総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間を振り返ります
NHKBS【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
NHKBSプレミアム4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>
【音楽】服部隆之
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛  菊地凛子 小雪 生瀬勝久 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

連続テレビ小説「ブギウギ」総集編(前編)
12月29日(金) 午前8時00分~9時25分 (総合・NHKBSプレミアム4K)

連続テレビ小説「ブギウギ」お正月スペシャル
1月3日(水) 午前8時00分~8時14分 (総合) ほか
「ブギウギ」のこれまでの名場面や1月からの見どころを、新年のごあいさつとともに出演者のみなさんが高瀬耕造アナウンサーとともに語ります。
【出演】趣里、水上恒司、えなりかずき、富田望生、高瀬耕造アナウンサー

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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