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視聴率も二転三転、古沢良太のコンゲームドラマ『コンフィデンスマンJP 』が跳ねる可能性はある

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
『コンフィデンスマンJP 』公式サイトより

視聴率まで二転三転

人気脚本家・古沢良太の野心作『コンフィデンスマンJP 』 (フジテレビ 月よる9時)の視聴率が、1話9.4%、2話7.7%、3話9.1%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)と1回下がってまた上がるという、二転三転騙し合いのドラマと同じく、視聴率の面でも二転三転、予測不能な様相を呈している。

 “コンゲーム”と言われる信用詐欺の話で、長澤まさみ、小日向文世、東出昌大の三人が、毎回、大物ゲスト演じるお金持ちたちから大金を巻き上げていく。みんな大好き、1話完結ものだ。

このリズムに慣れると快感

第1話は、ゴッドファーザーのような実業家(江口洋介)、第2話は、大手リゾート会社の女社長(吉瀬美智子)、第3話は、絵画のディーラー(石黒賢)と大物ゲストを鮮やかに手玉にとった。

毎回、億単位の巨額なお金が動くダイナミックな話にもかかわらず、詐欺の手口は、一貫して、変装して相手を騙すというかわいいもの。変装をよりリアルにするために飛行場を作ったり、民宿を作ったり、偽絵画を作ったりしながら、まるで小劇場演劇のようなことが行われるバカバカしさ。これを最初は、子供だましと思った人も、3回見たら、端正なまでに作り上げられたお約束のリズムに馴染み、意外と気楽に楽しめると好意的に思えているのではないだろうか。週のはじめ、ややブルーな気分を、和ませてくれるドラマだと思う。

至言「人々は絵そのものより、作者や時代背景といった情報に価値を見出す」

なにが楽かといえば、このドラマでは、善悪や正誤をほぼほぼ問わないのだ。

主人公のダー子(長澤まさみ)とリチャード(小日向文世)とボクちゃん(東出昌大)が騙す相手は、他人をうまいこと丸め込んで大金を獲得している、見方によったら詐欺師的な人たちばかり。主人公たちとターゲットは同じ穴のムジナである。

4月23日(月)に放送された第3話では、とりわけそれが顕著だった。石黒賢演じる絵画ディーラーが、無名の画家の絵を二束三文で買って、こっそり高値で売りさばくことに対して、“人々は絵そのものより、作者や時代背景といった情報に価値を見出す”と古沢良太は一応、正当化する。ダー子たちは、同じやり方で、自分たちで絵を作って高値で売る。

 

【ネタバレ】オチはダー子の描いたひどい絵が、ネットでどんどん高騰していくというもの。善悪や正誤どころか、ものの価値なんてものは幻想に過ぎないことを、さらっと描いた。

善悪も正誤も幻想だという前提のドラマ

おりしも、現実世界で、カリスマ写真家・アラーキーこと荒木経惟の仕事の仕方に対して、モデルだった人物の言い分がネットで拡散されたことで、アラーキー神話が崩壊、彼を非難する声がネットに多く上がったという出来事があり(あくまで写真にあまり詳しくない一般層が中心)、それまで信じていたものが一気に違うものに変容してしまうというわかりやすい例となった。

主にネット社会で、何かの拍子に善と思われたものが悪として一斉に叩かれてしまうことをいやというほど見ている我々視聴者は、ドラマで、何が正しくて何が間違っているかを追求するよりも、そんなものは幻想であり、既存のルールから飛び出して、自由に生きて、普通手にできそうにないもの(例えば億単位の大金)を手に入れてしまう物語こそ、歓迎できるのではないか。そこに現れたのが『コンフィデンスマンJP』だ。彼らは、ターゲットの情報を徹底的に調べ学び、自身の肉体を駆使して変装し、アドリブを効かせながら、ルールを破っていく。その姿は気持ち良い。

「子猫ちゃん」という協力者が楽しい

ふざけているようで、最も現代を風刺した痛快なエンターテインメント『コンフィデンスマンJP』の楽しみどころのひとつを紹介したい。ダー子たちが使っている「子猫ちゃん」だ。

古沢が、舞台や映画で何作も仕事をしている大泉洋が自身のファンをこう呼んでおり、それに捧げたオマージュらしい。

『コンフィデンスマンJP』の子猫ちゃんは、ダー子たちが、事前の調査や、相手を騙すときに一芝居打つときに協力してくれる人たち。いわば、古沢が脚本を書いた『外事警察』(09年)にも出てきた、公安警察が使う“協力者”をファンシーに表現したようなものだ。フジテレビ系のドラマでも、カンテレ制作の『CRISIS(クライシス) 公安機動捜査隊特捜班』(17年 脚本:金城一紀)に協力者は登場した。

「子猫ちゃん」(男性も女性も「子猫ちゃん」)たちは、ダー子たちを手伝って、うまく作戦が成功した暁にはギャラがもらえる。ダー子たちが大金を獲れば獲るほど、おそらく支払われる額は増えるだろう。ダー子たちは、彼女(彼)たちにギャラをちゃんと払うので、ときには赤字にすらなっている。

ふだんは、一般市民として社会に溶け込んでいるからこそ、何かと役に立ち、その働きに応じて適切な報酬をもらえる「子猫ちゃん」たちとは、我々視聴者がなれるかもしれない存在だ。

気になるキャラクター・五十嵐

子猫ちゃんの上位互換的な人物に、五十嵐(小手伸也)がいる。2話から登場し、レギュラー化した、ダー子の忠臣的な存在。あくまでダー子の部下的な存在にもかかわらず、ボクちゃんを上から目線で見ているところが、家の主人気分で人間を敬わないふてぶてしさが魅力の猫のよう。

小手伸也は、三谷幸喜が書いた大河ドラマ『真田丸』(16年)に出演したのち、三谷の舞台『子供の事情』(17年)にも大抜擢された個性派俳優。濃密な雰囲気を醸しながら、軽やかな芝居ができる、シンゴジラ第2形態のように、なんかかわいいけど破壊力があるみたいな逸材だ(外見が似ているということではないです、念のため)。

昔の外国ドラマのイカした予告ナレーションみたいなものも小手伸也が担当している。

 

キャラクター配置の妙

五十嵐が参加したことで、ボクちゃんの詐欺師として達観できてない青い部分がより明瞭になって、キャラクターの役割分担がはっきりした気がする。三人というのはルパン三世における、ルパン、次元、五右衛門のようにチームのバランスが完璧になってしまう(三位一体)、四人チームではなく、三人の外にもうひとり人物が配置されることで揺さぶりがかかって面白い。そこにも古沢のしっかりした計算を感じる。

銭形警部のような警察(正義)ではなく、不二子のようなファム・ファタールみたいな存在(ダー子が一応その役割も兼ねているようだが…)でもなく、身内にもうひとり人物を配置したことで、ドラマが見やすくなり、笑いにもはずみがついた。これも視聴率が上がった要因ではないだろうか。

4月30日(月)放送の、第4話『映画マニア編』は、映画好きの食品会社社長(佐野史郎)がターゲット。時代劇の撮影現場を再現するようで、絵画づくり以上に笑えそうだ。

コンフィデンスマンJP

月曜よる9時~ フジテレビ

脚本:古沢良太

出演:長澤まさみ 東出昌大 小日向文世

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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