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『やすらぎの郷』 ジジイたちの前立腺トーク

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

帯ドラマ劇場『やすらぎの郷』(テレビ朝日 月〜金 ひる12時30分  再放送 BS朝日 朝7時40分〜)

第12週 56回 6月19日(月)放送より。 

脚本:倉本聰 演出:唐木希浩

おばあさんたちはハダカで海に

出演者のひとり、野際陽子が亡くなった悲しみが癒えないまま、週が明けて、第1回目(野際陽子が亡くなった翌日の放送の視聴率はアップしたという)。すでに撮影済みだった野際陽子のターンが放送された。

それはなんと、野際演じる井深凉子が、海辺でハダカで泳ぐというエピソードだった。

季節は夏。

夕方になると、磯釣りに出向く菊村(石坂浩二)とマロ(ミッキー・カーチス)と大納言(山本圭)。亡くなった時代劇俳優・大村柳次郎の遺産の話などをしている(刀は高価なもので、絵は結局偽物だった)と、井深凉子がビーチにやってきてガウンを脱ぎはじめ……。

この磯は、婆たちのヌーディストビーチになっていて、夏の風物詩になっていると、マロは、やすらぎの郷ではじめて夏を過ごす菊村に説明する。

やがて、磯には三井路子(五月みどり)までやってきて、服を脱ぎ始める。

五月みどりは、写真集「8人の女」(マガジンハウス)で水着やお風呂に入っている写真を披露しているだけあって、お色気女優のイメージがあるが、代表作『キイハンター』がセクシー系だったとはいえ、野際陽子がハダカで海水浴・・・とは驚く。

さすがに画はなく、マロの語りだけ。ふくらはぎが出てきたが代役だろうか。 

野際陽子は、NHKのインテリジェンスあふれるアナウンサーだったが突如、セクシーな女スパイで、華麗に転身したり、ユニークなお姑さんやお母さん女優として人気を博したり、いつも世の中をびっくりさせてきた。面白いことが好きだったというから、56話のエピソードがこのタイミングで流れたこともきっと、ふふふと楽しんでいるんじゃないだろうか。

おじいさんたちの前立腺トーク

そして、おもしろい話は続く。

夜、バー・カサブランカで爺三人は、バーテンダーのハッピーちゃん(松岡茉優)を相手に、前立腺コントとでも言えそうな会話を繰り広げる(根っこは、年をとった身体に関する真剣な悩みなのだが、それを笑いに転じている)

それを、井深凉子が、ソルティドッグを飲みながら聞いている(ここでの野際も颯爽としている)。

ひとしきり、コントめいた話が終わると(ハッピーちゃんのお年寄りあしらいがすばらしい)、井深は「困ったことが起きてるのよ」と申告な顔をする。

菊村は、ちょっと遠くの小料理屋・山家で、鯉の刺し身を食べながら、井深の相談を受けるというところまでが56話。ここでは、野際はきりっと着物姿だった。

それから「野際陽子さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。」と、55回に引き続き、テロップが。

そのあとは「やすらぎ体操」で締めた。

「明日は分からない それも人生」♪という歌詞がいつも以上に胸に響く。

「明日の行方はたやすくたやすく翻るものだから」♪ 中島みゆきの主題歌「慕情」の歌詞も同じく。

人生の明日も、ドラマの明日も、気になる。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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