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3度目のトリプルスリー狙うヤクルト山田の盗塁はなぜ「幻」となったのか?

菊田康彦フリーランスライター
2018公認野球規則(筆者撮影)

 自身3度目のトリプルスリー(打率3割・30本塁打・30盗塁)を狙う東京ヤクルトスワローズの山田哲人が、一塁からスタートを切る。打者のウラディミール・バレンティンは空振り三振。捕手の送球が逸れる間に、山田は悠々と二塁に滑り込んだ──。

 これは8月26日に神宮球場で行われたヤクルト対横浜DeNAベイスターズ戦での一コマだ。ところが、次の瞬間、村山太朗球審はやおら両手でスイングのポーズを取ると、右腕を大きく左右に振って、山田に一塁へ戻るよう指示を送った。

「打者の妨害とはしないが、ボールデッド」

 いったい何が起こったのか。村山球審の説明はこうだった。

「打者がスイングの後、キャッチャーの守備を妨害いたしましたので、一塁ランナーを一塁に戻します」

 しかし、その後、審判団が集まると、再びマイクのもとに戻った村山球審の説明は、少し変わった。

「守備の妨害ではなく、スイング後の余勢が捕手の守備を妨害いたしておりませんので、バッターアウトだけです。ランナーは戻します」

 結局、バレンティン三振、走者一塁で試合が再開され、今季30個目となるはずの山田の盗塁は幻となった。どこか釈然としないまま、あらためて公認野球規則のページを繰ってみると──。

6.03 打者の反則行為

【6.03a3・4原注】(中略)打者が空振りし、スイングの余勢で、その所持するバットが、捕手または投球に当たり、審判員が故意ではないと判断した場合は、打者の妨害とはしないが、ボールデッドとして走者の進塁を許さない。(後略)

 そこでようやく合点がいった。映像では、バレンティンは故意に妨害をしたようには見えないものの、空振りした際に大きく振り抜いたバットが、二塁に送球しようとしていた捕手の左腕付近に接触しているように見える。だから「打者の妨害とはしないが、ボールデッドとして走者の進塁=山田の盗塁を許さなかった」というわけだ。つまり、村山球審はルールに則った正しいジャッジを下したことになる。

プロ野球審判には「話す」練習も必要では?

 ただし、その説明の仕方には疑問が残る。前出の説明では、肝心の「ボールデッド」というワードがなかったため、山田がなぜ一塁に戻されたのかを理解した者はほとんどいなかったはずだ。そして、それは口頭で説明を受けたヤクルトの小川淳司監督にも伝わっていなかった。

 これまでもプレーによっては審判がマイクを通じて場内のファンに説明を行う機会はあったが、とにかく「わかりづらい」と思うことが多かった。「話す」ということは、本来の審判の仕事ではないのかもしれない。それでも興行であるプロ野球の審判員であるならば、ファンに向けてわかりやすい説明を心がけるのも大事なことだろう。

 そのためにはジャッジのみならず、さまざまなケースを想定して「話す」練習も、今後は必要なのではないか。そんな思いを強くした、昨夜の出来事だった。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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