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バレンティンが予言した?日本新記録達成  ~56本塁打への挑戦~

菊田康彦フリーランスライター

東京ヤクルトスワローズのウラディミール・バレンティン選手が日本新記録の今季56号本塁打を放ってから、丸1日が経ちました。筆者が「バレンティン・ウィーク」と呼んでいたこの本拠地・神宮球場6連戦(実はニッポン放送が同じように銘打って、この6試合を全て生中継していました。しかもCM明けにバレンティン選手本人のジングル入り!)、その最終日に新記録を達成し、しかももう1本、57号のオマケまでつけてしまうのですから、本当にすごい男です。

バレンティンの快挙を伝える各スポーツ紙の1面
バレンティンの快挙を伝える各スポーツ紙の1面

とはいえ、期待されながらなかなか一発が出なかった一昨日までの3試合は、かなりリキみが目立っていました。昨日の試合前には、伊勢孝夫ヒッティングコーディネーターも「首位打者もかかっとるし、残り試合もまだまだあるんやからヒット狙いでいいのは頭では分かっとるんやろうけど…打席に入ると(ホームランを)打ちたい打ちたいになってしまうんやろなぁ」と話していましたが、連日あれだけ多くの報道陣が押し寄せれば(自分もその一人ですが…)、ホームランを意識するなというほうが無理な話でしょう。

56号「出そうな気がする」

ただし、昨日は台風の接近により試合中止が見込まれていたこともあってか、どことなく練習中からリラックスした雰囲気はありました。フリーバッティングでも主にセンターから右方向へ計15本をスタンドインさせるなど、状態もここ数試合では一番いいように見えました。これは後から聞いた話ですが、練習を終えて一旦クラブハウスに引き上げる際、「出そうな気がする」と予言めいたことも口にしていたそうです。

そして迎えた1回裏、その“予言”どおりに阪神の先発・榎田大樹投手の4球目を左中間スタンドに運び、ついに新記録達成。正直、そこから先の試合はあまりよく覚えていません。もちろん3回に飛び出した57号はしっかり目に焼きつけたのですが、楽しみにしていた小川泰弘投手のピッチングをじっくり堪能する余裕もなく、仕事に追われていました。

「ココ」はやっぱりココ

試合が終わるとグラウンドに飛び出してバレンティン選手のヒーローインタビューを見届け、その後は球場内で行われた記者会見に出席しました。同席した母のアストリットさんの隣で真面目に受け答えをしていたココ(バレンティン選手のあだ名)でしたが、会場内のどこかで携帯電話の着信音が鳴るとすかさずいたずらっぽい顔になるなど、ココはやっぱりいつものココでした。

すべてを終えてクラブハウスに戻ってきたバレンティン選手にようやく祝福の声をかけ、握手を交わすことができたのは、試合終了からおよそ1時間が経った頃だったでしょうか。その後、母親と共に車でテレビ出演に向かう彼を見送った時には、時計の針は11時に近づいていました。ホームランの数が56本を超えたので、この「56本塁打への挑戦」はここで終了。もっとも筆者は明日以降も、バレンティン選手に注目していきます。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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