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2年目で味わうMLBの洗礼?!カブス・鈴木誠也も苦しめられるシンカーとカットボールという魔球

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
6月以降打撃低迷に苦しむ鈴木誠也選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【打撃不振だった鈴木選手が3試合で計6安打の固め打ち】

 6月に本塁打を量産し自身3度目の月間MVPを獲得した大谷翔平選手とは裏腹に、同月はすっかり打撃低迷していた鈴木誠也選手に復調の兆しが見え始めている。

 現地時間7月4日のブルワーズ戦で6月21日のパイレーツ戦以来(22打席ぶり)となる安打を記録すると、そこから3試合連続で計6安打の固め打ちに成功している。

 ただし6安打中長打は三塁打の1本のみで、また2安打は打ち損じの打球が内野安打になったもの。しかもスイートスポットとされる打球角度が8~32度の打球は半分の3安打に止まっており、一概に復調と断言するのは難しい状況にありそうだ。

【確実にパワーを増して臨んだ今シーズン】

 スプリングトレーニング中に左脇腹を痛めて、WBC出場辞退に追い込まれるとともにシーズン開幕に出遅れてしまった鈴木選手だが、昨オフに取り組んだ肉体改造により今シーズンは確実にパワーを増している。

 それを裏づけるように、ここまでの平均打球速度は92.5mphで、昨シーズンの89.6mphを大幅に上回っている、それに伴いハードヒット率(95mph以上の打球を打っている割合)も昨シーズンの41.3%から、今シーズンは50.9%まで上昇している。

 ちなみに選手の各種データを紹介しているMLB公式サイト「savant」によれば、今シーズンの平均打球速度はMLB全体の上位8%に属しており、鈴木選手のパワーは今やMLBトップクラスといっていいだろう。

 4月14日のドジャース戦で戦線復帰すると、5月に入り打撃の調子を上げていき、月間成績打率は自身初の3割超え(.319)を果たすとともに、5本塁打、13打点、OPS(出塁率+長打率).977を記録。すっかり勢いに乗ったかに思われた。

【打撃好調の5月から一変し6月は自身最低の打率1割台に】

 ところが6月に入ると、鈴木選手の打撃は一変してしまう。

 6月8日のエンジェルス戦から4試合連続で計8安打を打つ時期があったとはいえ、月間打率は昨シーズンも含めて初めて2割を割り込み(.177)、OPSも.475と別人のような打撃になってしまった。

 本塁打に至っては5月23日のメッツ戦を最後に快音は聞かれず、折角手に入れたMLBトップクラスのパワーを十分に生かし切れていない状況が続いている。

 もちろん鈴木選手自身こそが、この現状に一番歯がゆさを感じていることだろう。

【今シーズンは手元で動く速球に手を焼いている鈴木選手】

 それでは現在の鈴木選手は、なぜ苦しんでいるのだろうか。我々としては入手できるデータを元に比較検討することしかできないが、実は昨シーズンと今シーズンで明確な違いが生じているのだ。

 以前からMLBに移籍したばかりの日本人打者は、MLB主流の手元で動く速球に対応できずに苦しめられるというのが定説になっているが、今シーズンの鈴木選手はまさにその典型で、すっかりシンカー(ツーシームとも呼ばれる)とカットボールに手を焼いているのだ。

 順を追って説明していきたい。

 まず昨シーズン鈴木投手に対する球種別配球は、フォーシーム30.9%、スライダー20.2%、シンカー18.8%、カーブ8.7%、チェンジアップ8.1%、カットボール7.7%──というものだった(投球全体の5%以上のみ掲載)。

 そして鈴木選手の球種別打率は、フォーシーム.321、スライダー.276、シンカー.315、カーブ.276、チェンジアップ.176、カットボール.242──と、手元で動く速球に苦しんでいる様子はなかった。

 ところが今シーズンの球種別配球は、フォーシーム26.8%、シンカー19.0%、スライダー19.0%、カットボール9.8%、チェンジアップ9.6%、カーブ8.4%、スイーパー5.2%(同上)──と投手の配球に大幅な変化はないのだが、球種別打率は、フォーシーム.286、シンカー.208、スライダー.289、カットボール.167、チェンジアップ.105、カーブ.333、スイーパー.182──とシンカーとカットボールの打率が極端に落ち込んでいるのだ。

【平均打球速度は上がっているもののバレル率は低下】

 手元で動く速球をしっかり捉え切れなければ、鈴木選手のパワーをボールに伝えることはできない。

 それを裏づけるように、平均打球速度は前述通り昨シーズンを大幅に上回っているのだが、バレル率(理想的な打球速度と打球角度で捉えた打球の割合)で見ると、昨シーズンの11.0%から今シーズンは9.1%に下がっている。

 つまりある程度強い打球は打てているものの、理想的な打球角度を生み出せていないのだ。それだけ手元で動く速球に苦しめられているということになる。

 その理由が何なのかは技術論になるので、ここで説明することは難しい。パワー増加によりボールを捉えるポイントが移動したのか、それとも打撃フォームの変化でボールの見え方が変化したのか、様々な要因が考えられる。

 いずれにせよ鈴木選手もこうしたデータを把握しているはずだし、日々試行錯誤を続けているはずだ。

 今後鈴木選手の打撃をチェックする際は、シンカーとカットボールの対応に注目してほしい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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