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W杯よりキャリアを優先した八村塁が「制限付きFA」として迎えたオフに想定される4つの選択肢

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今オフ制限付きFA権を取得した八村塁選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【自国開催ながらW杯出場辞退を決めた八村選手】

 日本バスケットボール協会は6月27日、日本、フィリピン、インドネシアを舞台に8月25日に開幕する「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」の出場が決まっている日本代表チームの候補選手だった八村塁選手の出場辞退を発表した。

 すでに協会を通じて八村選手のコメントが発表されており、今回の経緯について「昨シーズンと長いプレーオフ戦を終え、これから初めてのフリーエージェンシー(以下FA)に備えて今後の自分のNBAキャリアを優先して考慮させていたただき、このように判断しました」と説明している。

 日本代表のエース的存在の出場辞退にチームに与える影響は計り知れないが、同協会は「NBAにおける来季の契約、またコンディショニング等の課題を総合的に勘案したうえで本人の意向を受け入れた」とし、八村選手の判断を支持している。

 裏を返せば、このオフシーズンは八村選手にとって人生を左右する夏になるということになるわけだが、果たしてNBAのFA制度とは一体どんなものなのだろうか。

【八村選手がこのオフ取得した「制限付きFA」】

 八村選手がコメントで説明しているように、NBA4年目のシーズンを終えた彼はこのオフにFAの資格を得ていた。そして現地時間の6月27日に所属チームのレイカーズが、八村選手に対し契約延長ではなくクォリファイングオファー(以下QF)を提示したことで、正式にFA選手になった。

 ただ単純にFAといっても、MLBとNPBで多少ルールが異なっているように、NBAのFAは「無制限」と「制限付き」の2種類に分類され、今回八村選手が取得したのは制限付きFAの方だ。

 MLBのFA同様にどのチームとも自由に契約交渉できる無制限FAと違い、文字通りある一定の制限下に置かれるのが制限付きFAだ。

NBA公式サイトによれば、制限付きFAを取得するのは、以下のような場合だ。

 1)ドラフト1巡目指名選手で、「ルーキー・スケール(NBAが定める新人選手対象の年俸額指標)」による契約下で4年目のシーズンを終える。

 2)NBA在籍3年以下でFAになった選手(ただし2年目、もしくは3年目シーズン終了後に所属チームが当該選手のオプション権を行使しなかったドラフト1巡目指名選手は除外)。

 3)シーズン中に最低でも15日間NBAのロースター入り(インアクティブを含む)した2ウェイ契約を満了した選手。

 つまり八村選手は1)の項目に該当し、制限付きFAになったわけだ。

【制限付きFA選手に想定される6つのオプション】

 そして同サイトによると、制限付きFAになった選手は基本的に6つのオプションが想定されるという。

 1)所属チームが提示したQFを受諾し、もう1年所属チームに在籍し、シーズン終了後に無制限FA権を取得する。

 2)所属チームが提示したマキシマムQFを受諾し、長期契約で所属チームに在籍し続ける。

 3)QFとは別途所属チームと新たな契約を交渉する。

 4)翌年3月1日までに他のチームとオファー・シート(仮契約のようなもの)に合意する。その場合所属チームは48時間以内に「match」権の行使が可能。

 5)他のチームとオファー・シートに合意しない場合は、所属チームと「契約&トレード」を交渉する。

 6)FA下で1年間QFもしくは新たな契約やオファー・シートの合意がなかった場合、所属チームは新たなQFを提示でき、当該選手は翌シーズン終了後に再び制限付きFA権を取得する。

 ちなみに4)の「match」権とは、所属チームが同権利を行使すると、他チームと合意したオファー・シートと同じ年数、年俸総額で当該選手と自動的に契約できるというものだ。

 つまり八村選手が仮に他チームとオファー・シートに合意したとしても、レイカーズが48時間以内に同権利行使を発表すれば、他チームとの合意内容でレイカーズの残留が決まることになる。

 ただ八村選手は前述通り、レイカーズから最大QFではなく通常のQFを提示されていることから、彼の場合2)が除外されるし、米メディアによるとレイカーズは八村選手との契約に前向きだとされるので、6)も考えにくい。

【レイカーズ残留か、それとも他チームへ移籍か?】

 それでも八村選手には現時点で4つのオプションが考えられるわけだから、やはりW杯のため帰国するよりも、エージェントと連絡を取り合いながら米国で待機している方が得策なのは明らかだろう。

 ちなみに米メディアによると、八村選手がレイカーズからのQFを受託した場合、来シーズンの年俸は848万6619ドルになる見込みだ。八村選手の昨シーズン年俸額は491万6160ドルだったので、QFを受託したとしてもかなりの年俸アップになる。

 もちろん今後レイカーズや他チームとの交渉次第では、それ以上の大型契約も期待できる立場にいる。

 果たして八村選手はどんな決断を下すのか。所属チームだけでなく契約内容にも注目が集まるところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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