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貯金生活ながら得失点差はマイナス状態!今季のマーリンズは強い?それとも弱い?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
唯一の長距離砲としてチームを牽引するホルヘ・ソレイル選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【共通認識が通用しない今シーズンのマーリンズ】

 唐突ではあるが、攻守が明確に分かれている野球という競技において、当然のことながら得点が失点を上回らないと試合に勝つことはできない。

 つまり強いチームになればなるほど、得点が失点を大きく上回るというのが野球界の共通認識になっている。それを物語るように、今シーズン開幕から快進撃を続けるレイズの得失点差はMLB2位のプラス141を誇っている。

 ちなみにMLB1位にランクしているのは、ア・リーグ西地区で首位を走るレンジャーズのプラス145で、ここまで得失点差が3桁台のプラスを記録しているのはこの2チームしか存在していない。

 ところがそんな共通認識が通用せず、得失点差がマイナスでありながら勝率5割以上をキープしているチームが存在している。現在ナ・リーグ東地区で2位につける健闘を見せているマーリンズだ。

【7つの貯金がありながら得失点差がマイナス30】

 今シーズンのマーリンズは、現地時間の6月14日終了時点で38勝31敗の成績を残し、地区首位ブレーブスに4.5ゲーム差で2位につけている。ワイルドカード争いでの圏内に入る健闘ぶりを見せている。

 地区内には前評判が高かったメッツやフィリーズがおり、まさかマーリンズが彼らを上回りワイルドカード争いに加わるなど誰も予想していなかったと思う。

 だが7つも勝ち越しているにもかかわらず、ここまでのチームの得失点差はマイナス30という状況なのだ。

 ちなみに現時点で勝率5割以上のチームで得失点差がマイナスなのは、34勝32敗のパイレーツ(マイナス10)、34勝34敗のブルワーズ(マイナス25)、同じく34勝34敗のフィリーズ(マイナス21)が存在しているが、それよりもマーリンズの得失点差は下回っている。

 これはちょっとした珍現象と呼んでいいのではないだろうか。

【1点差試合は17勝5敗と接戦に強さを発揮】

 どうしてマーリンズにこのような現象が起こっているのかといえば、今シーズン5点差以上の試合で6勝11敗と、点差が離れた試合であまり勝てていないことが大きな要因になっているようだ。

 また2桁失点を喫した試合は5つある一方で、2桁得点した試合は2つに止まっているのも見逃すことができない。

 ただし得失点差はマイナスながら、シーズンの総失点304はMLB15位と平均レベルにある。それだけ総得点(MLB25位の274)が少ないということになる。

 それだけ少ない得点を確実に勝利に結びつける試合運びに長けており、1点差試合に関しては17勝5敗と抜群の成績を残している。

【6月に入りチーム状態は上向きもまだまだ未知数】

 2009年に勝率5割以上(87勝75敗)の成績を残して以降、2020年の短縮シーズン(31勝29敗)以外、マーリンズは勝率5割を上回ったことがない。

 今シーズンも開幕から1勝4敗と厳しいスタートを切ったが、その後5月まで勝率5割前後で推移していた。それが6月に入るとシーズン最長の6連勝を飾り、一気に貯金を増やすことに成功している。

 ただ6連勝した相手が地区最下位に沈むアスレチックスとロイヤルズだけに、数字をそのまま鵜呑みにするのは危険だろう。

 加えて現在ナ・リーグ西地区で首位を走るダイアモンドバックスに4勝2敗で勝ち越しているかと思えば、同地区で最下位に沈むロッキーズには1勝3敗と負け越しており、決して安定的な戦い方ができているわけではない。

 とりあえず6月後半の対戦相手でマーリンズを上回る成績を残しているチームはおらず(最高はマーリンズと同成績のブルージェイズ)、ここで現在の勢いを維持する戦い方ができれば、さらにチーム状態が上がっていきそうな情勢だ。

【チームの精神的支柱になっているソレイル選手とグリエル選手】

 今シーズンからマーリンズの指揮をとる新人のスキップ・シューメイカー監督がESPNのポッドキャスト「Baseball Tonight」で語ったところによれば、現在チームを支える存在になっているのがホルヘ・ソレイル選手とユーリ・グリエル選手の2人のようだ。

 「ホルヘ・ソレイルは本当にプロフェッショナルだ。(これまで所属したチームで)勝者と敗者を経験した上で、ワールドシリーズMVPを受賞しているように勝者でありたいと考えている。

 ユーリ・グリエルも加入以来本当に素晴らしい存在になっている。クラブハウスでは多くの選手たちが彼の周りに集まり、彼の言葉に耳を傾けている。彼はヒューストンで勝つチームのカルチャーを味わっており、それを選手たちに植え付けようとしてくれている」

 このままチームが勝ち続ければ、いつか得失点差がプラスに転じる日が訪れるだろう。そしてマーリンズの強さはいよいよ本物になり、今シーズンの台風の目になってくれるのではないだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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