「コース別ハードヒット率」と「コース別打球角度」から考える吉田正尚の打撃不振
【シーズン前の期待とは裏腹に打率1割台に低迷する吉田選手】
WBCでは侍ジャパンの3度目の優勝に貢献する活躍を見せ、満を持してMLB1年目のシーズンを迎えたかに思われた吉田正尚選手だったが、いざシーズンが開幕すると打撃不振に陥っている。
右ハムストリング(太もも裏)の違和感で4試合に欠場するというトラブルも影響してか、4月16日のエンジェルス戦で復帰して以降は3試合に出場し、11打数無安打と快音が聞かれず、同19日のツインズ戦では先発から外れている。
ここまでの打席成績は打率.167、1本塁打、6打点という状況で、WBCで披露していた打撃からは程遠い内容だ。
特に期待された長打力は完全に影を潜め、ここまで放った8安打中、長打は本塁打1本と二塁打1本のみで長打率は.250に止まっている。
【吉田選手の真骨頂「三振しない男」は今も健在】
各選手の詳細データを紹介しているMLB公式連携サイト(ここで紹介しているデータの引用元)によれば、ここまでの吉田選手は平均打球速度、ハードヒット率(打球速度が95m/h以上の割合)、期待打率、期待長打率などがMLB平均からかなり下回っている一方で、三振率、四球率、チェイス率(ボール球に手を出さない割合)などは平均を大きく上回っている。
特に三振率に関してはMLBでもトップクラスにあり、ボール球に手を出さず、しっかり四球を選べ、三振をしないという吉田選手の真骨頂はMLBでもほぼ変化していないのが理解できるだろう。
それではなぜ、吉田選手は期待通りの成績を残せていないのだろうか。
【2つのデータから考える吉田選手の打撃不振】
そこで同サイトに掲載されている中から、2つのデータに注目してみた。「コース別ハードヒット率」と「コース別打球角度」だ。
まずコース別ハードヒット率に関して説明したい。前述した通り、現在の吉田選手の平均打球速度はMLBの中で最低クラスだが、外角の高め、外角の低め、真ん中低めでは95m/hを上回っている。
またコース別色分けから判別できるように、真ん中から外角のボールはある程度捉えられているのが理解できるだろう。
次にコース別打球角度を見てみたい。こちらはハードヒット率とは対照的に、打球角度がプラス値になっているのは、真ん中付近の3つのコースしかないのだ。しかも鋭いライナー打球と評価される打球角度10~25度に入っているのは、ど真ん中のみに止まっている。
この2つのデータからも明らかなように、ゾーンを見極めてボールを捉えようとしている一方で、打球がほとんど上がらずゴロしか打てていないのだ。
それを裏づけるように、ここまで吉田選手が放った打球の67.4%がゴロで、ライナー打球は9.3%、フライ打球が16.3%(うち凡フライが7.0%)という状態だ。これでは平均打球速度が上がるはずもないだろう。
【ボールを確実に捉えられている球種はフォーシームのみ】
さらに球種別打率を見てみると、フォーシーム(いわゆる真っ直ぐ)に関しては.350と高打率を残しているものの、それ以外の球種に関してはカーブで打率.250を記録しているのみで、残りの球種からは安打を打てていない状況だ。
ここまで説明すれば、結論は明確ではないだろうか。初顔合わせばかりのMLB投手たちの変化球に苦しめられ、しっかりストライクゾーンのボールを捉えようとしているのに、思い通りにミートできていないのだ。
吉田選手といえども、MLB特有の変化球に慣れていくにはある程度の時間が必要になってくるかもしれないし、その答えは今後を見守っていく必要がある。
ただ吉田選手は打撃不振状態にあっても、彼本来の打撃スタイルを見失っていないことは確認できたのではないだろうか。