WBC決勝でOPS10割以上7人衆に挑む侍ジャパン投手陣と7回までの攻防が勝敗のカギになりそうな根拠
【初顔合わせながら相手クローザーを攻略した大谷選手】
9回裏にジオバニ・ガイエゴス投手が登場した段階で、侍ジャパンに勝機があると予想していた。今大会ここまで防御率ゼロに切り抜けていた同投手だったが、被打率が.273と内容的には今一つの投球が続いていたからだ。
そんなガイエゴス投手の手鼻をくじき、チームを完全に勢いづかせたのが大谷翔平選手の先頭二塁打だったのではないだろうか。
もちろん決勝打を放った村上宗隆選手の勝負強さも素晴らしかったのだが、今回が初顔合わせだったにもかかわらず、躊躇なく初球ストライクを振りにいった大谷選手の強気こそが、不安を抱えていたガイエゴス投手を間違いなく慌てさせたように思う。
2009年の第2回大会以来の決勝進出を果たした侍ジャパンは、連覇を目指す米国代表に挑む。もし侍ジャパンが勝利できれば、2013年の第3回大会にドミニカ代表が達成して以来となる全勝優勝をも成し遂げることになる。
【強力打線に立ち向かう侍ジャパン投手陣】
大会前に米ブックメイカーが発表していた優勝オッズでは、2番人気だった米国代表と3番人気の侍ジャパンによる決勝戦は、まさに多くのファンが待ち侘びた最強カードといっていいだろう。
侍ジャパンは2017年の第4回大会準決勝で米国代表に1対2で敗れているだけに、何とか雪辱を果たしたいところだ。
そこで今回の決勝戦を端的に説明するとするならば、今大会屈指の米国代表重量打線に対し、今大会No.1の侍ジャパン投手陣が挑むという構図になるように思う。
【今大会OPS10割以上が何と7人揃う米国代表】
1次ラウンドではメキシコ代表に5対11で敗れる不覚をとったとはいえ、試合を重ねるごとに打線の調子は上向いていき、準決勝のキューバ代表では投手陣を圧倒し、14対2で圧勝している。
ここまで6試合の先発オーダーを見る限り、JT・リアルミュート選手と併用されているウィル・スミス選手以外、すべてオールスター選手が並ぶという豪華すぎる布陣で臨んでいる。
今大会ではピート・アロンソ選手やカイル・シュワバー選手ら何人かの選手たちが本来のバッティングを披露できていないが、それでも準決勝での猛打爆発もあり、現時点でOPS(長打率と出塁率を足したもの)が10割を超えている選手が何と7人も揃っている好調ぶりだ(ちなみに侍ジャパンも6人いるのだが…)。
【大会期間中最も安定感を誇っている侍ジャパン投手陣】
だからと言って、米国代表打線が侍ジャパンの投手陣を簡単に攻略できるとは思っていない。ここまでチーム防御率(2.33)、被打率(.181)ともに参加チーム中トップの成績を残しており、絶対的な安定感を誇っているからだ。
準決勝に登板した佐々木朗希投手と山本由伸投手はルール上決勝戦に投げることはできないが、それ以外の投手はすべて決勝戦にスタンバイできる。
先発する今永昇太投手を皮切りに、小刻みな継投策をしかけていけば、米国代表打線も簡単には対応できないと考えたいところだ。
ここまで安定感のある戦いで勝ち抜いてこられたため、決勝戦まで多くの投手を温存できており(3試合登板は大勢投手と湯浅京己投手の2人だけ)、余裕を持って投手起用できる状態にあるのは心強い限りだ。
【クローザー2枚看板が登板前の7回までの攻防がカギに】
逆に米国代表とほぼ変わらない成績を残す侍ジャパン打線は、立ち上がりから米国代表投手を攻略できるチャンスがありそうだ。
特に決勝戦の先発マウンドを託される予定のメリル・ケリー投手は、1次ラウンドのコロンビア代表戦で3回に逆転を許すなど、3回を投げ4安打2失点で降板。コロンビア代表打線相手に被打率.333と打ち込まれている。
しかもケリー投手にとってはオープン戦登板を含め、決勝戦が3試合目の登板ということで、やはり立ち上がりに付け入る隙がありそうだ。
ただしケリー投手の先発は現時点で正式発表されておらず、別の投手になる可能性もある(一応準決勝後にマーク・デローサ監督がケリー投手の名前を挙げてはいる)。
ただケリー投手を除けば、今大会で先発を務め決勝戦で起用できるのはメキシコ代表戦で敗戦投手になったニック・マルティネス投手しかいないので、場合によってはブルペンデー(リリーフ投手による継投)で試合を乗り切ることも予想される。
そうなってくると得点機にしっかり得点しておかないと、侍ジャパンも投手リレーに翻弄される危険性がある。
特に終盤には今大会も好調なデビン・ウィリアムス投手とライアン・プレスリー投手というクローザー2枚看板が控えているので、7回までの攻防が勝敗のカギを握りそうだ。
果たして優勝トロフィーを手にするのはどちらの代表チームなのだろか。