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WBC準決勝で侍ジャパンが最も警戒すべきメキシコ代表のラーズ・ヌートバー的存在のリードオフマン

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
メキシコ代表を勢いづかせているランディ・アロサレイナ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【侍ジャパンの対戦相手がメキシコ代表に決定】

 第5回WBCは現地時間の3月17日、準々決勝3試合目となるメキシコ代表対プエルトリコ代表戦が行われ、メキシコ代表が5対4で勝利した。これによりメキシコ代表はチーム初の準決勝進出を決め、20日に侍ジャパンと激突することになった。

 WBCの舞台で侍ジャパンとメキシコ代表が対戦するのは、第1回大会の2次ラウンド以来のこと。その際は侍ジャパンが6対1でメキシコ代表に快勝している。

 ただ今大会のメキシコ代表は、決して侮れない存在だ。

 1次ラウンドで優勝候補の米国代表を破り1位通過を果たし、準々決勝でも初回にプエルトリコ代表に4失点されながら、5回から継投策に出て追加点を許さず逆転勝ちを収めている。

 チーム構成的にはほぼ40人枠入り選手を集めた米国代表やプエルトリコ代表から見劣りするものの、そうした強豪チームと対等に渡り合えるだけの戦力が揃っている。

【チームを勢いづかせているキューバ出身のアロサレイナ選手】

 中でも注目すべき存在になっているのが、すべての試合でリードオフマンを務めているランディ・アロサレイナ選手だ。元々キューバ出身の選手だが、2022年にメキシコの市民権を獲得しWBC初出場を果たしている。

 2021年に新人王を獲得しているアロサレイナ選手は、今大会では侍ジャパンのラーズ・ヌートバー選手のように攻守にわたる活躍を続け、チームに勢いをもたらしている。

 ここまでの打撃成績は打率.471、1本塁打、9打点と、明らかに波に乗っている状態だ。1番打者として.625の出塁率を誇るだけでなく、チーム最多の9打点からも理解できるように、得点圏打率も.583を誇っている。

 さらに準々決勝では5対4で迎えた8回1死一塁の場面で、左翼越えの長打になりそうな打球をジャンピングキャッチし、守備でもチームの危機を救っている。また今大会ここまで盗塁を記録していないものの、昨シーズンは32盗塁を記録する俊足も兼ね備えており、走攻守すべてで試合の流れをつくり出せる選手だ。

 やはり準決勝でも、アロサレイナ選手の活躍が勝敗のカギを握ることになりそうだ。

【昨シーズン後半は大谷選手に次ぐ安定感を誇ったサンドバル投手】

 投手陣にも警戒すべき存在がいる。準決勝での先発がほぼ確定的なパトリック・サンドバル投手だ。

 今更説明する必要はないと思うが、サンドバル投手は大谷翔平選手のチームメイトで、今シーズンは大谷選手に次ぐエース格として飛躍が期待されている投手だ。

 昨シーズン後半では防御率2.53を記録し、先発陣の中では大谷選手(2.28)に次ぐ安定感を誇っていた。

 大会前もオープン戦に2試合登板し、5回を投げ失点はわずか1で、被打率.167に抑えるなど、順調な調整を続けていた。さらにWBC初登板となった米国代表戦も、3回を投げ強力打線を2安打1失点に抑え、メキシコ代表の勝利に貢献している。

 準々決勝のイタリア代表戦では大谷選手とデビッド・フレッチャー選手のエンジェルス対決が実現したが、準決勝でも大谷選手とサンドバル投手の対決に注目したいところだ。

【継投策にもしっかり対応しているメキシコ代表リリーフ陣】

 準決勝から球数制限が95球まで緩和されるとはいえ、サンドバル投手は前回登板で55球しか投げていないため、順調にいっても80球前後の球数になると予想される。

 ただメキシコ代表を指揮するベンジー・ギル監督は、準々決勝でも序盤に失点を許したフリオ・ウリアス投手を4回60球で交代させており、準決勝でもサンドバル投手の出来次第では早めの継投策に移行することになるだろう。

 それだけ今大会のメキシコ代表は、継投策もまずまずの結果を出している。

 クローザーのジオバニ・ガイエゴス投手まで繋ぐリリーフ陣として、ハビアー・アサド投手(複数イニングに対応)、ジェイク・サンチェス投手、ジェラルド・レイエス投手らが好投を続けており、試合序盤で大量リードを奪った米国代表戦以外の4試合では、7回以降の失点は3に止まっている(延長負けしたコロンビア代表戦を含む)。

 いずれにせよ侍ジャパン、メキシコ代表ともに、間違いなく総力戦で準決勝に挑むことになる。果たして勝ち上がるのはどちらのチームなのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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