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大谷翔平の二刀流起用はむしろ必然?!エンジェルスのチーム事情から考えるWBC起用法

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
エンジェルスとしてもWBCでの大谷翔平選手の二刀流起用は歓迎したいことだ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【宮崎合宿不参加が確定した大谷翔平選手】

 すでに各所で報じられているように、エンジェルスのフィル・ネビン監督とペリー・ミナシアンGMが公の場で次々に大谷翔平選手のスケジュールに言及し、スプリングトレーニングでオープン戦に1度登板してから3月1日前後に日本に戻ることが明らかになった。

 これにより大谷選手は2月17日から実施される侍ジャパンの宮崎合宿には参加せず、3月3日以降から予定されている強化試合からチームに合流することになった。

 宮崎合宿から参加を表明しているダルビッシュ有投手が、パドレスの粋な計らいで早期合流できることを明かしているが、やはりMLB選手の場合WBC参加やスケジュールは所属チームに委ねられており、彼らの判断に従わなければならない。

 これで栗山英樹監督も3月合流を踏まえた上で、大谷選手の起用法を考えていくことになる。

【所属チームにとってWBCは重要な調整の場】

 ところで栗山監督はつい最近まで、大谷選手の二刀流起用について「エンジェルスと話し合いをしている」と明言を避けてきたが、ミナシアンGMは先日の発言でも二刀流起用を容認している。

 いやむしろエンジェルスGMとしての立場から、二刀流で起用してもらわないと困るのだ。その理由は、TV番組に出演した栗山監督の発言に隠れている。侍ジャパンの出場登録選手最終30人を発表した後、中居正広氏と対談した彼は、ラーズ・ヌートバー選手の招集について以下のように話している。

 「(チームから)ヌートバー選手でも最初はいい返事がなかったんですよ。カージナルスとしては公式戦が始まるまでに60打席とかきちんと与えて(シーズンを)迎えたいという(リクエストがあった)…」

 本欄でも何度となく指摘させてもらっているが、栗山監督の説明からも明らかなように、選手を送り出す所属チームにとってWBCは、オープン戦と何ら変わらずシーズン開幕に向けた調整の場なのだ。

【WBCでも先発登板を期待したいエンジェルス】

 カージナルスのみならず、すべてのチームがスプリングトレーニング中に全選手の個別スケジュールを作成し、野手なら最低何打席を与え、投手なら最低何イニング投げさせたいという計画の元にオープン戦を戦っている。もちろんエンジェルスとしても、WBC期間中でも大谷選手に投手としての調整を続けていってほしいのだ。

 仮に大谷選手がオープン戦に1試合登板してから侍ジャパンに合流し、WBCでは打者に専念されてしまうと、最低でも1週間以上は投手としての実戦登板ができなくなってしまう。そうなるとエンジェルス復帰後の登板スケジュールに影響を及ぼしかねない。

 むしろエンジェルスとしては、チームの登板スケジュールに合わせてWBCでもしっかり先発してもらい、最初のオープン戦登板を上回るような球数、イニング数を投げてほしいと考えるべきだ。

 今更説明するまでもなく、大谷選手はすでに先発投手陣の大黒柱だ。彼がシーズン開幕から万全の状態で投げられなければ、シーズン序盤のチーム成績にも影響しかねない。それはチームとして絶対に避けなければならないことだ。

 栗山監督や投手コーチを務めるロッテ吉井理人監督の発言を聞く限り、WBCでの第1先発を大谷選手、ダルビッシュ投手、山本由伸投手、佐々木朗希投手の4人で回したい構想のようだ。

 そうなると必然的に第1次ラウンド4試合のどこかで先発することになるし、それはエンジェルスとしても歓迎すべきことなのだ。

 さらに侍ジャパンが決勝ラウンドに進出するようなことになれば、エンジェルスのオープン戦スケジュールを考えると、もう1試合先発登板してもらいたい可能性も出てきそうだ。

【オープン戦で50球前後投げられれば問題なし?!】

 ちなみに第1次ラウンドにおける球数制限は65球だ。そこで大谷選手が制限ギリギリまで投げられるようになるためにも、最初のオープン戦登板で50球前後投げてから送り出したいところだ。それはいうまでもなく、早期調整をしていかないと不可能だ。

 念のため通常のスプリングトレーニングにおける先発投手の調整スケジュールは、1、2回のブルペン登板→1、2回のライブBP登板→紅白戦登板(ない場合もある)→オープン戦登板と移行していく。

 そして最初のオープン戦登板は30球前後(場合によっては20球前後)が目安とされ、そこから登板するごとに50球前後→70球前後→90球前後と球数を増やしていき、シーズン開幕戦で100球前後投げられる状態まで仕上げていく。

 つまりオープン戦で50球前後を投げるというのは通常なら2度目の登板以降でのことであり、それをオープン戦初登板で投げられるようにするには前倒しで調整していかねばならない。

 だがそれは、大谷選手にとって大きな障害にはならなそうだ。大谷選手はすでにキャンプ地入りし調整を続けており、ブルペン投球は今でもできるし、本人の希望次第では同じく早入りしている野手を相手に、ライブBPに登板することもできる。

 そしてオープン戦開幕前に紅白戦(チームが実施するかどうかによるが)で30球前後投げておけば、問題なくオープン戦初戦で50球前後を投げることが可能になってくる。

 というわけで、大谷選手は3月合流でも万全の状態でチームに加われそうだし、むしろエンジェルスの希望で二刀流としてWBCに出場できることになるだろう。

 ぜひ日本で見られる久々の大谷選手の勇姿を楽しみにしてほしい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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