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マイナーリーグ・システムの充実度から考える大谷翔平の獲得に最も有利なチームとは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLB公式サイトが2023年最初の若手有望選手トップ100を発表】

MLB公式サイトは現地時間の1月26日、2023年版のトップ100を発表した。

 このランキングは同サイトが毎年発表しているもので、シーズン中も各選手の活躍に応じてランキングが定期的に更新されている。また各チームの将来性とマイナーリーグ・システムの充実度を確認できる資料として、米国では広く認知されているものだ。

 今回堂々の1位に輝いたのは、オリオールズのガンナー・ヘンダーソン選手だ。彼は昨年8月31日MLBデビューを飾っており、今シーズンにもメジャー定着が期待される選手だ。

 またオリオールズはトップ100にヘンダーソン選手を含め8選手をトップ100に送り込み、チーム別でMLB最多となった。昨シーズンは若手選手が台頭しシーズン後半戦から快進撃を続け、2016年以来の勝率5割以上を達成しているだけに、今シーズン以降も更なる若手選手の台頭が期待できそうだ。

【チーム別内訳はオリオールズが1位でブレーブスが最下位に】

 ちなみに今回発表されたトップ100選手のチーム別内訳を表にまとめてみた。別表を参考にしてほしい。

(筆者作成)
(筆者作成)

 オリオールズ以外では、毎年のように若手有望選手が台頭する流れを構築した感があるガーディアンズと、編成担当責任者であるアンドリュー・フリードマン球団社長の下、常にマイナーリーグ・システムの整備に熱心なドジャースがそれぞれ7選手を送り出し、堂々の2位にランクインしている。

 さらに6選手のレンジャーズが単独4位、5選手のカージナルスが単独5位に入っている。

 一方、すでに若手有望選手たちがほぼメジャーに昇格してしまった感があるブレーブスは、唯一ランクイン選手ゼロで単独最下位に。またランクイン選手が1人に止まったアストロズ、ブルージェイズ、ロイヤルズが27位タイで並んでいる。

【今もマイナーリーグ・システムの整備に苦しむエンジェルス】

 現有記録としてはタイガースとともに最長の9年連続でポストシーズン進出を逃しているエンジェルスだが、その要因の1つとされるのが遅々として進まないマイナーリーグ・システムの整備といわれている。

 今回もトップ100にランクインしている選手はローガン・オホッピー選手(53位)とザック・ネト選手(89位)の2人のみで、20位タイに止まっている状況だ。

 メジャーは年俸総額がかなり逼迫し大物FA選手を獲得する大型補強が難しいのに、マイナーリーグ・システムも充実させられず若手有望選手の台頭が期待できないという八方塞がりの状況が続いているだけに、やはり現状を打破するのはなかなかに難しいわけだ。

【大谷選手のトレードで大量の若手有望選手を獲得できる絶好機】

 だがそんなエンジェルスに、今シーズンは千載一遇のチャンスが訪れようとしている。

 今シーズン終了後にFAとなり、すでにメディアの間でMLB初の年俸総額5億ドルを超える大型契約が確実視されている大谷翔平選手との再契約を断念し、シーズン途中でトレード放出を決断すれば、他チームから大量の若手有望選手を獲得することができるからだ。

 例えばナショナルズは昨シーズン途中でパドレスと6対2の交換トレードを成立させ、フアン・ソト選手とジュショ・ベル選手の主力2選手を失った代わりに、マイナー選手を含め5人の若手有望選手(+ルーク・ボイト選手)を獲得することに成功している。

 現時点でソト選手以上の評価を受けている大谷選手だけに、彼がトレードされるようなことになれば、さらに多くの若手有望選手を獲得できる可能性が十分にある。

【大谷選手をトレードするのに理想の環境が整うドジャース】

 一方で大谷選手をトレードで獲得したいチームとしては、マイナーリーグ・システムを破壊してまで若手有望選手を放出するのはリスクが大きすぎる。

 そうなってくると、ある程度の若手有望選手を放出してもマイナーリーグ・システムを維持できるようなチームでないと、大谷選手に手を出しにくいということになる。

 しかもトレードで獲得できたとしても、シーズン終了後にはFAになる大谷選手を残留させられなければ意味がないわけで、大谷選手と再契約できるだけの大量の資金力も必要になってくるわけだ。

 そうした条件を見事に兼ね備えているのが、マイナーリーグ・システムがMLB屈指の充実度を誇り、今オフは補強を控え年俸総額の大幅な減少にも成功しているドジャースに他ならない。

【ドジャースとしてはFA市場よりトレードの方が有利?】

 もちろん今シーズンのエンジェルスが7月までポストシーズン争いを続けられるようならば、エンジェルスが投打の柱である大谷選手を失うことはできないわけで、トレード話が浮上することもないだろう。

 そうなればFA前にエンジェルスが大谷選手と再契約できなければ、全チームが横一線で獲得競争に乗り出すことになる。

 むしろドジャースとしてはエンジェルスの早期低迷に期待して、トレード獲得を目指した方が他チームと差別化でき、よりチャンスが広がってきそうだ。

 すべては今シーズンのエンジェルスの成績にかかってくるが、大谷選手の獲得を目指しているチームにとっては、ドジャースのマイナーリーグ・システムの充実ぶりは脅威でしかないはずだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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