【千賀投手の獲得に成功したメッツ】

　今オフにMLB挑戦を表明していた吉田正尚選手、千賀滉大投手、藤浪晋太郎投手の3選手の動向が注目される中、現地時間の12月7日にレッドソックスとの契約合意が報じられた吉田選手に続き、同10日になって千賀投手がメッツと5年契約に合意したと報じられた。

　現時点でメッツから正式発表されていないが、諸々の手続きが完了次第、発表になる見通しだ。千賀投手の契約内容や合意に至った背景などについては別の機会に譲るとして、とりあえず千賀投手が夢のMLB入りを実現できたこと、しかも現在MLB最強先発デュオといわれるジャスティン・バーランダー投手、マックス・シャーザー投手とともにローテーションを組むことになったことを喜ばしく思っている。

　早くもメディアやファンの間では、来シーズンのメッツの先発ローテーションがMLB屈指になるとの期待が高まっている。

【メッツは最後まで千賀投手の獲得に積極的だった】

　今オフのメッツはジェイコブ・デグロム投手、クリス・バシット投手、タイワン・ウォーカー投手がFAとなり、先発陣の整備が大きな課題の1つだった。

　残念ながらデグロム投手との再契約には失敗したものの、代わりに昨シーズンのサイヤング賞投手であるバーランダー投手の獲得に成功。また昨シーズンはパイレーツとカージナルスで計32試合に先発しているベテラン左腕のジョゼ・キンタナ投手もFA市場で獲得している。

　さらにチームが保有する来シーズンの契約オプション権を行使して、昨シーズン15勝を記録しているカルロス・カラスコ投手を残留させていたし、その他にも先発候補として、昨シーズン19試合に先発するなど7勝を記録しているデビッド・ピーターソン投手、同じく昨シーズン9試合に先発起用されていたタイラー・マギル投手がおり、契約2年目のシャーザー投手を含めれば先発ローテーションを組める人数は足りていた。

　にもかかわらず米メディアは、メッツがずっと千賀投手獲得に積極的だったと報じており、千賀投手もかなり早い時期（ウィンターミーティング開催前）にニューヨークを訪れ、メッツ関係者とミーティングを行ったと報じられている。

　有料のスポーツ専門サイト「The Athletic」の記事によれば、メッツは千賀投手に対し、バーランダー投手、シャーザー投手に続く先発3番手として期待を寄せているようだ。

【今オフのメッツの投資総額は現時点で4.7億ドル強】

　千賀投手がメッツと合意した平均年俸額1500万ドルは、MLB先発投手の中でも決して高額というわけではない。それでもここ数年MLB入りしている日本人投手たちが苦戦を強いられている状況を考えれば、トレード拒否権を含む5年契約はそれなりの投資であり、それは裏を返せばメッツの期待の表れに他ならない。

　しかも今オフのメッツは前述通り積極的な補強を続けており、千賀投手との合意が報じられる以前の段階で、総額4億ドルを超える契約（カラスコ投手の契約オプション権の1500万ドルを含めて）をまとめていたのだから、無駄に投資する予算などなかったと考えていい。

　それでも千賀投手を獲得したことで、結局メッツはFA選手6人、契約オプション権行使選手1人に対し、契約総額が4億7660万ドルに上る大型補強を断行しているのだ。

【来シーズンの年俸総額はMLB唯一の3億ドル超え】

　またシャーザー投手に続きバーランダー投手とも年俸4000万ドルを超える契約を結び、さらに抑えのエドウィン・ディアス投手ともリリーフ投手としては史上最高額の契約で合意するなど、来シーズンの年俸総額を大幅に引き上げている。

　昨シーズンもぜいたく税の限度額を超え、ドジャースに次ぐMLB2位の年俸総額だったのに、MLBのデータ専門サイト「FanGraphs」によれば、現時点でのメッツの年俸総額は3億3500万ドルまで跳ね上がっているという。

　現時点で2位のヤンキースでさえ2億5000万ドルに止まっているので、メッツの年俸総額が極めて突出しているのが理解できるだろう。

【このまま推移すればメッツのぜいたく税支払いは8000万ドル以上】

　さらに同サイトによると、年俸調停権取得前選手対象のボーナス制度用のプール金支払いなど、ぜいたく税の枠内に含まれる諸々の経費を合わせると、その額は3億4957万3333ドルに達するという。

　メッツは前述通り、現行の統一労働協約（いわゆるCBA）が施行された昨シーズンもぜいたく税の限度額を超えているので2年連続の超過となり、端数を無視して3億5000万ドルで来シーズンのぜいたく税支払い額を試算すると、何と8070万ドルになってしまうのだ。

　この額を同じく「FanGraphs」に掲載されている現在の各チームの年俸総額と比較すると、アスレチックス（4500万ドル）、オリオールズ（5200万ドル）、パイレーツ（5800万ドル）、レッズ（7300万ドル）、レイズ（7400万ドル）、ロイヤルズ（7600万ドル）の6チームを上回っている。

　来オフにFAとなる大谷翔平選手について、米メディアの間では契約総額が史上初めて5億ドルを超えるとの予測が出始める中、やはりメッツの財力は他チームの脅威でしかないだろう。