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日本人トップスコアラーの大半がPG選手!日本代表ホーバスHCの影響が出始めた今季のBリーグ

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
広島ドラゴンフライズの寺嶋良選手(筆者撮影)

【例年とは違う勢力図になりつつあるB1リーグ】

 Bリーグの1部に相当するB1リーグは2022-23シーズンの第9節を終え、これまで見られなかった勢力図を形成しようとしている。

 B1リーグは基本的に3地区制を採用してきたが(2020-21シーズンと2021-22シーズンのみ2地区制)、2016年にBリーグが発足して以来過去6シーズンでリーグ王者に輝いたのは、すべて東地区チームだという点から理解できるように、これまでずっと“東高西低”の時代が続いてきた。

 ところが今シーズンは、西地区チームの躍進が目覚ましいのだ。現時点で勝率7割以上(もしくは10勝以上)の成績を残しているのは、東地区が2チーム、中地区がゼロに対し、西地区が4チームと、西地区チームの方が開幕ダッシュに成功している傾向にある。

【日本人選手の得点状況も明らかに変化】

 チームの勢力図が変化しているだけではない。日本人選手の得点状況も例年とは違う様相を呈している。

 各チームのトップスコアラーを外国籍選手及び帰化選手が担っていることに大きな変化はないが、ただ今シーズンは間違いなく日本人選手の中に主要得点源になりつつある選手が増えているように思う。

 例えば、現時点で1試合の平均得点12.0点以上を記録している選手は、12人存在している。これは過去6シーズンと比較して明らかに増えており、例年とはかなり違ってきている(2016-17シーズン7人、2017-18シーズン8人、2018-19シーズン4人、2019-20シーズン5人、2020-21シーズン4人、2021-22シーズン6人)。

 それだけチームの戦術がトップスコアラーに頼り過ぎず、よりバランスをとった攻撃になっている現れではないだろうか。

【日本人トップスコアラーの過半数をPGが独占】

 さらに各チームの重要な得点源になっている日本人選手たちの傾向についても、変化が起こり始めている。

 これまで得点部門で日本人トップスコアラーの上位に名を連ねてきたのは、金丸晃輔選手(三遠ネオフェニックス)や川村卓也選手(現役引退)、比江島慎選手(宇都宮ブレックス)、辻直人選手(広島ドラゴンフライズ)等々、主にSG(シューティングガード)を務める生粋のシューターが多かった。

 ところが今シーズンは、上記の平均得点12.0点以上を記録している12人のうち8人がPG(ポイントガード)専任か兼任している選手たちなのだ。

 これまでスコアラータイプのPGといえば富樫勇樹選手(千葉ジェッツ)が有名だったが、今シーズンはそこに河村勇輝選手(横浜ビー・コルセアーズ)と安藤誓哉選手(島根スサノオマジック)が加わり、富樫選手とともにPGがトップ3を独占している状況にある。

チームの貴重な得点源としても重要な存在になっている寺嶋良選手(筆者撮影)
チームの貴重な得点源としても重要な存在になっている寺嶋良選手(筆者撮影)

【シュートを狙わないPGの姿勢を嫌う日本代表ホーバスHC】

 なぜこのような状況が生じ始めているのだろうか。あくまで個人的な予測ではあるが、昨年9月に日本代表HCに就任したトム・ホーバス氏の影響があるように感じている。

 先月実施されたワールドカップ2023年アジア予選のバーレーン、カザフスタン戦(いずれも日本代表が勝利)では、富樫選手、河村選手の他に、ベンドラメ礼生選手(サンロッカーズ渋谷)、テーブス海選手(滋賀レイクス)がPGとして招集されており、いずれもシュート能力の優れた選手たちばかりだ。

 またホーバスHCは、パスを供給するばかりでシュートを狙おうとしないPGの姿勢を嫌い、スペースがあれば積極的にシュートを狙うよう指導しているコーチでもある。

 そこでホーバスHCの下で代表入りを果たし、前述の平均得点12.0点以上の1人でもある広島の寺嶋良選手に話を聞いてみた。

【寺嶋選手「ホーバスさんがすごく影響していると思います」】

 今シーズンはここまでスコアラータイプのPGが増えていることについて、やはり寺嶋選手もホーバスHCの影響があると考えているようだ。

 「(ホーバスHCの影響は)ありますね。代表の時はガードが点をとらなければいけないというバスケなので、やはり(点をとることが)いいモチベーションになりますし、点をとることが大事だと教わっているので、僕だけじゃなく他の選手たちにもいい影響を与えているかなと思います。

 ただチームとしては点をとることも大事なんですけど、(攻撃の)バランスをとらないといけないという難しい部分もありますけど、それでもホーバスさんの影響はすごくあると思います」

 寺嶋選手は現在も、ホーバスHCの教えを意識しながらBリーグでプレーしているという。

 「例えば10点以上離れているような時はアシスト中心にボールを散らすことをメインに考えています。ただ大事な場面ではしっかり点がとれるというのが素晴らしいガードだと思っているので、競っている場面では自分が(点を)とってやるぞという強い気持ちでプレーしてます」

【ますます過激になっていきそうな日本代表PG争い】

 残念ながら11月のアジア予選では代表に招集されることはなかった寺嶋選手だが、もちろん代表復帰に闘志をみなぎらせている。

 「一度日本代表に入ったからには入り続けたいですし、ワールドカップにも出たいという気持ちはずっとあります。チームとしてリーグ優勝というのが大事な目標なんですけど、そこ(代表復帰)を目指しながらやっていきたいと思ってます」

 寺嶋選手のみならず、ホーバスHCの下で代表を経験しているPGは前述の安藤選手の他に齋藤拓実選手(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)らがおり、現在でもスコアラータイプが目白押しだ。そこに京都ハンナリーズの久保田義章選手らも頭角を現すなど、代表PGの座を巡る競争がさらに熾烈になっていきそうだ。

 そうしたスコアラータイプのPGが比較的に西地区に集まっているのも、現在の勢力図を反映しているのかもしれない。

 寺嶋選手はそうしたPGたちとの直接対決を、個人的なモチベーションにしているという。

 「やはり意識する部分がありますし、彼らには絶対負けたくないという気持ちが強いです。

 (彼らとのマッチアップは)いつも以上に気合いが入りますし、モチベーションとして絶対に負けられないという強い気持ちがさらに乗っかるので、本当にやりがいのある地区でプレーできていると思います」

 今後も日本代表を見据えながら、特に西地区のPG対決に注目していきたいところだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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