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WS覇者アストロズが一転窮地に?!GMとGM補佐が同日に辞任&解任になった舞台裏

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
アストロズから辞任が発表されたジェームス・クリックGM(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【アストロズがクリックGMの辞任を発表】

 ワールドシリーズを制覇したアストロズに、シーズンオフに入った途端ゴタゴタ騒ぎが巻き起こっている。

 アストロズは現地時間の11月11日に公式リリースを発表し、ジェームス・クリックGMの辞任を発表した。米メディアによると、アストロズは同GMが昨オフにチームに迎えたスコット・パワーズGM補佐も同日に解任したという。

 クリックGMは、10月31日にアストロズとの契約が終了したままラスベガスで開催されていたGMミーティングに出席しており、アストロズとの契約延長を含め今後の去就が注目されていた。

 今回の措置により、アストロズはワールドシリーズを制覇してからたった6日後に、チームの編成担当責任者2人を失うことになった。

【米メディアによると事実上の解任か?】

 アストルズが発表したリリースでは、「part ways(離れて進む、つまり関係解消)」という表現を使っているものの、USAトゥデイ紙のボブ・ナイチンゲール記者は「事実上の解任」との認識を示している。

 ジム・クレイン・オーナーとクリックGMは修復できないような関係になっており、ナイチンゲール記者は「ワールドシリーズを制覇したことでクリックGMに契約延長のオファーを出さなければならないことは分かっていたが、彼が拒否するような内容のオファーを提示した」としている。

 さらに同記者によれば、クリックGMに提示されたオファーはこれまでの年俸額から増額はあったものの1年契約だったとしている。

 クリックGMは、2020年に球界を揺るがしたサイン盗み騒動のため解任されたジェフ・ルーノウGMに代わり同職を任され、ジョージ・スプリンガー選手やカルロス・コレア選手といった主力選手を失いながらもチームを2年連続でワールドシリーズ進出に導くとともに、2017年以来のワールドシリーズ制覇を達成。GM就任3年間で輝かしい実績を残すことに成功している。

【中南米選手獲得のエキスパートもマーリンズへ移籍】

 クリックGMばかりでなく、昨オフにドジャースのフロントから引き抜いたパワーズGM補佐が解任されたことで、ナイチンゲール記者は、今後クリックGMにより採用されたスタッフがさらにチームを去ることになるのではと予想している。

 実はアストロズはクリックGMと袂を分かつ前に、チーム編成で重責を担ってきた人物も失っている。長年アストロズで中南米のスカウトを担当していたオズ・オカンポ氏が、11月4日付けでマーリンズのGM補佐に就任しているのだ。

 オカンポ氏は、フランバー・バルデス投手、クリスチャン・ハビアー投手、ホゼ・ウルキディ投手、ルイス・ガルシア投手らのリクルートに成功した人物で、現在のアストロズの強固な投手陣を築き上げた功労者といっていい存在だった。

 今後アストロズの人事を見守っていくしかないが、チームをワールドシリーズ制覇に導いた編成担当者3人が一斉にチームを去ったことで、アストロズが難しい状況に置かれたことだけは間違いなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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