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ロイ・ラナ新HC流バスケを体現するシェック・ディアロが京都に新たな文化を築く!?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
新潟戦で豪快なダンクを決める京都新加入のシェック・ディアロ選手(筆者撮影)

【ラナ新HCが目指すファンを興奮させるバスケ】

 「まずディフェンスが最も重要になってくるが、今シーズンは全体的によりスピーディな展開になってくるだろう。そして選手たちの若さ、身体能力を生かし、コート上を走り回りたい。

 CD(シェック・ディアロ選手の愛称)とジェロード(ユトフ選手)は高いシュート力を有していて、特にCDに関してはハイレベルのダンクを披露してくれるだろう。とにかくファンにとって見るのが楽しく、エキサイティングなバスケをしたいと考えている」

 9月3日に行われた新体制発表会で初めて公の場に登場した京都ハンナリーズ(以下、京都)のロイ・ラナ新HCは、今シーズン目指していくバスケについて問われ、以上のように発言していた。

 だがシーズンが開幕すると、第1節から第3節までの京都の戦いぶりはラナHCの思惑通りにはいかなかった。試合展開が多少スピーディになったのは確かだが、6試合の平均得点66.7が物語るように、なかなか効果的な攻撃に繋げることができなかった。

 ユトフ選手とともにキャプテンを務める満田丈太郎選手が、第1節終了後に「まだ急造チームなので」と話しているように、ラナHCがチームに合流したのは9月2日のこと。コーチが求めるバスケを理解するにはあまりに時間が足りなかった。

 もちろんラナHCもその点は理解しており、前述の新体制発表会でも「長く困難な道のり」や「我慢が必要だ」という言葉を繰り返していた。

【明らかな変化を見せた第4節の新潟アルビレックス戦】

 そんな京都が劇的な変化を見せたのが、第4節の新潟アルビレックスBB(以下、新潟)戦だった。

 第1戦を95対77で圧勝すると、続く第2戦も88対64と、2試合とも新潟を圧倒してみせた。しかも2試合とも新潟に走りがち、次々にイージーシュートを決めるという、まさにラナHCが理想とする試合展開となった。

 そんな京都の攻撃の中心にいたのが、ラナHCのたっての希望で初めてBリーグに移籍してきたディアロ選手だった。

 NBAで183試合の出場経験を誇るディアロ選手だが、第3節までのプレーを見る限り、個の力でペイントエリアを制圧するようなタイプではなく、孤立した場面では苦しむ姿を見せた。

 第3節までの6試合でFG成功率は46.7%に止まり、ダンク成功数も6本でしかなかった。

 ただプレーを見ていても彼の身体能力は高いのは明らかで、常にコート上を走り回り周りの選手たちと連係しながらオープンショットを決めていく、ラナHCがどうしてもチームの中心に置きたかった選手なのは間違いなかった。

試合中もブースターを盛り上げようとするディアロ選手(筆者撮影)
試合中もブースターを盛り上げようとするディアロ選手(筆者撮影)

【ディアロ選手の存在が新潟ディフェンスを翻弄】

 そんなディアロ選手の能力を最大限に引き出していたのが新潟戦だった。2試合ともに、司令塔の久保田義章選手を中心に周りの選手たちとの連係が絶妙だった。

 第1戦では前半から久保田選手や他の選手たちが、ディアロ選手がフリーになるようなパスを回し、豪快なダンクを演出し続けた。またディアロ選手の跳躍力を生かし、高いロブからの攻撃を何度も試み空中戦を制した。

 この日のディアロ選手は9ダンクを含む30得点を叩き出し、FG成功率は驚異の88.2%を記録するなど、新潟のディフェンスを翻弄することに成功している(さらに4オフェンシブリバウンドを含む11リバウンド)。

 第2戦では序盤から徹底マークにあいシュート機会が制限されたものの、ディアロ選手が新潟のディフェンスを引きつけることで、周りの選手がフリーでシュートを狙える機会を創出し、第1戦同様試合の主導権を握った。

 また試合を通じて(特にブレイクの場面では)先頭を切って相手コートまで走り続けたことで、徐々に新潟のディフェンスを引き剥がし、終盤ではディアロ選手自身もシュートを決める展開となり点差を広げていった(前半は4得点ながら計16得点)。

ベンチでラナHCと談笑するディアロ選手(筆者撮影)
ベンチでラナHCと談笑するディアロ選手(筆者撮影)

【久保田選手「関係性が最近はどんどん良くなっている」】

 「ここまで攻撃面でうまくいっていなかったが、ペイントエリアで積極的な攻撃をしかけ、ようやくいいパフォーマンスをすることができた。スピードもあり、トランジッションも効果的に生かせ、自分たちがやりたいスピードで展開することができた」

 第1戦終了後のラナHCは地元ブースターを興奮させるようなプレーを披露でき、満足そうに話してくれた。さらにディアロ選手のパフォーマンスについても以下のように話している。

 「新しいリーグ、新しいコーチ、新しいチームメイトの中で多少の適応が必要だし、ちょっとした負傷も抱えていた。ただプレシーズン試合では素晴らしいプレーができており、ようやく彼らしいパフォーマンスをしてくれて嬉しく思っている。

 それとヨシアキ(久保田選手)とのコンビネーションが確実に良くなってきており、彼がやりたいスポットでプレーできるようになってきたと思う」

 久保田選手も同様に、確実にディアロ選手とのコンビネーションが向上していると説明している。

 「日頃の練習から彼からコミュニケーションをとってくれ、『君がこうやって動いたらオレはこうやって動くから』みたいなアドバイスもしてくれます。彼は経験豊富ですし、彼のアドバイスを信じて僕はパスを出すだけです。そうすれば自分も点が取れますし、そうした関係性が最近はどんどん良くなっていると思います。

 まだまだ粗削りなところはありますけど、そこはお互いの信頼関係ですね。お互いがお互いを信頼してやっていけばうまくいくと思います」

 ラナHCとともに新体制発表会に出席したディアロ選手は以下のように話し、それ以降も同じ内容の言葉を繰り返している。

 「チームとして成長していきたい。チームが勝つために最善を尽くし、自分ができるすべてのことをやりたい。そしてファンと一緒に文化を築いていきたい」

 ラナHCとディアロ選手のコンビが、京都に新たな文化を築き上げようとしている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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