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未熟さを露呈し続けるフェルナンド・タティスJr.に向けたパドレスGMの意味深発言とは

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
禁止薬物使用で80試合の出場停止処分を受けたフェルナンド・タティスJr.選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【タティスJr.選手が禁止薬物使用で出場停止処分】

 ポストシーズン進出を目指し、連日負けられない戦いを続けているパドレスに、衝撃的なニュースがもたらされた。

 シーズン開幕前に左手首を骨折し、開幕から長期離脱を余儀なくされていたフェルナンド・タティスJr.選手が禁止薬物の陽性反応を示したため、MLBから80試合の出場停止処分を科されることになったのだ。

 タティスJr.選手は8月6日からマイナーリーグでリハビリ出場を始めており、ようやく戦列復帰の目処が立とうとした矢先のことだった。チームとしてもシーズン終盤にマニー・マチャド選手、先日トレードで獲得したフアン・ソト選手とともに“ビッグ3”の揃い踏みに期待していただけに、チームに与える影響も危惧されるところだ。

【白癬菌治療に使用していた薬が原因だと説明】

 タティスJr.選手は今回の処分について、選手会を通じて声明を発表し、全面的に謝罪している。選手会の公式アカウントがTwitter上で全文を公開しているので、興味がある人はチェックして欲しい。

 今回薬物監査で陽性反応が出たのはクレステボルというステロイドで、MLBの禁止薬物の1つに指定されているものだ。タティスJr.選手の声明によれば、彼が白癬菌を治療するため使用していた薬に、クレステボルが含まれていたとしている。

 さらに声明では「inadvertently(軽率にも)」という表現を用い、成分を確認しないで薬を使用していたことが原因で、自分が服用するものについてはしっかり確認すべきだったのにそれを怠ったと反省している。

 その一方で、これまでも繰り返し薬物監査を受けており、野球を侮辱し、騙すような行為(つまり故意に禁止薬物を使っていること)をしていないとも説明している。

【パドレス「この経験から学ぶことを願っている」】

 タティスJr.選手が自ら軽率な行動だったと説明している通り、使用する薬物の成分を確認することはMLB選手にとって基本常識だ。それを怠ったことで起こった事態に、パドレスも相当失望しているようで、以下のような声明を発表している。

 「本日フェルナンド・タティスJr.がMLBのプログラムに違反する薬物に陽性反応を示し、80試合の出場停止処分を受けたことに驚き、そして大変失望している。我々はプログラムを全面的に支持しているとともに、フェルナンドがこの経験から学ぶことを願っている」

 だがAJ・プレラーGMは、チームの声明では言い尽くせないほどタティスJr.選手に失望してしまったようだ。

【未熟さを露呈し続けるタティスJr.選手に失望するGM】

 スポーツ専門サイトの「the Score」が報じたところでは、処分を受けたタティスJr.選手に対し、プレラーGMはかなり辛辣な発言をしているようだ。彼の発言は以下のようなものだ。

 「オフシーズンから今に至るまで、我々は(タティスJr.選手の)成熟を期待し続けてきた。だが今日のニュースに触れ、また同じパターンというか、もう少し見極める必要がある」

 「彼は間違いなく失望しているだろう。だが1つだけ言えることは、行動で我々に示していかねばならない」

 「我々に求められていることは、どれだけ(タティスJr.選手を)信頼していいのかを見定めることだ。この6、7ヶ月間に関しては、信頼することができない要素しかない」

 そもそもタティスJr.選手が左手首を骨折したのも、バイク事故によるものだ。そして今回の出場停止処分を含め、すべて原因は彼の軽率さにある。プレラーGMとしては、プロ野球選手そしてパドレスの中心選手としての自覚の無さに、すっかり信頼を失ってしまったようだ。

 タティスJr.選手の未熟さを言えば、昨シーズンもシーズン終盤の試合でやる気のない態度をみせたことで、ベンチ内でマチャド選手から猛烈に叱責される事件も起こしている。

 まだ23歳の若さとはいえ、今後プレラーGMの信頼を取り戻せないようなら、タティスJr.選手が昨年合意した14年契約をパドレスで全うできない可能性すら生じてくるかもしれない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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