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労使交渉がさらに混迷状態に?!選手会がMLBの連邦調停局による仲裁要請を拒否

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
連邦調停局の仲裁を拒否した選手会のトニー・クラーク専務理事(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【選手会が米国連邦調停局の仲裁を拒否】

 MLBと選手会の労使交渉がすっかり混迷状態に陥ってしまった。

 労使交渉が進展しない現状を鑑みたMLBが現地時間の2月3日に、米国連邦調停局に仲裁申請をしていたが、翌日の同4日に理事会を開いた選手会は、仲裁を拒否する決定を下した。

 この結果、労使交渉は今後も仲裁が入らないまま両者のみで継続していかねばならなくなった。現時点では次回交渉は決まっていない。

【シャーザー投手が選手会の主張を発信】

 まず選手会が理事会後に発表した声明を見てみたい。内容は以下の通りだ。

 「ロックアウト実施から2か月が経過し、我々から対案を提示した2日後に、オーナー陣はその対案に対応することを拒否し、仲裁を申請した。

 これを受け我々は理事会を開き、さまざまな要素を考慮した上で申請を拒否することに決定した。

 公平かつ時期に即した合意へと繋がる最善の道は、交渉のテーブルに着くことだ。我々は交渉する準備をしている」

 選手会内の組織として、現役選手で構成される「選手分科会」のメンバーの1人であるマックス・シャーザー投手も、自らのアカウントを使ってSNS上に選手会の主張を発信している。

 「我々は仲裁を必要としていない。我々がMLBに提示した対案は、両者にとって公平だからだ」

 「我々が求めているのは、若い選手たちが彼らの価値に合った評価を受けられ、過去に行ったMLB在籍日数の意図的操作をなくし、(各チームが)平等な戦力を持てない現状を改善するために、サラリーキャップに繋がらないペナルティーや境界線を導入するシステムづくりだ」

 つまり選手会は、現在MLB側に提示された対案が両者にとって公平であり、MLBはそれを受け入れるべきだと主張しているわけだ。

【MLBは選手会の決定に失望】

 もちろんMLBは、選手会の決定に失望している。ESPNのジェフ・パッサン記者によれば、スポークスマンを通じて以下のような声明を発表している。

 「我々の目標は、スプリングトレーニングとシーズン開幕に合わせ、選手をグラウンドに戻し、ファンに球場に足を運んでもらうことだ。

 2週間以内に迫っているキャンプを予定通りに開始するには、現在の膠着状態を打破し、我々の相違点を解消する方向に導くためにも、すぐにでも連邦調停局の仲裁を受け入れる時にある。我々のギャップを埋め、合意へと繋げるのは、第三者に加わってもらうのが最も建設的な方策だ。

 にもかかわらず、一方(選手会)がこれまでプロスポーツ界で起こったさまざまな混乱を解決してきた実績のある、連邦調停局の仲裁を拒否する決定をしたことは理解に苦しむ。

 MLBは交渉のテーブルで解決策を提示し、両者にとって公平な合意に達する責任を負っている」

 果たして両者が主張する「公平な合意」は、いつ訪れるのだろうか。本当に両者だけで解決することができるのだろうか。

 シャーザー投手のツイートに寄せられた人々の反応を見る限り、すでに世間の人々はMLBと選手会の泥仕合に嫌気がさしている様子が窺える。1994年8月から1995年4月まで続いた選手会が実施したストライキの際のように、間違いなくMLBの印象は悪化し始めているようだ。

 スプリングトレーニングの集合日まで、すでに10日を切っている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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