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正念場を迎えたMLB!日程通りにシーズン開幕を迎えられるXデーは3月8日前後?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
マンフレッド・コミッショナーは早期解決に導けるだろうか?(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【今も平行線を辿るMLBと選手会】

 昨年の12月2日からMLBが実施しているロックアウトは、今も解除されないままだ。

 すでに本欄でも報告しているように、1月13日にMLBと選手会がロックアウト実施後初の労使交渉に臨んだが、残念ながら合意に至らなかった。そこから早1週間が経過しようとしているが、米メディアの報道をチェックする限り、両サイドとも次回交渉に動く素振りを見せておらず、今も平行線の状態が続いている。

 前回の交渉では、MLBが選手会に対し新労使協約の合意に向け修正案を提示したようだが、それでも選手会を満足させる内容ではなかったと報じられている。

 ただ今回MLBが示した修正案の中には、選手会が要望していたチームによる選手のMLB在籍日数を意図的に操作することへの対処案が加わっており、「少し前進した」との見方をする米メディアも存在している。

 いずれにせよ両者の間には、まだまだ巨大な壁が存在していることは間違いないところだ。

【バッテリー組の集合日は2月15日】

 今回のロックアウトは、1990年に実施された30日間を上回り史上最長を更新するとともに、ストライキを含めても1994年から翌年にかけてのストライキに次ぐ長期に及ぶ休業状態に追い込まれている。

 これを受け米メディアは、スケジュール通りのスプリングトレーニング実施は不可能という見方をますます強めているといった状況だ。

 ちなみに30チームの中でレイズとオリオールズがスプリングトレーニングの選手集合日を発表しているのだが、両チームともバッテリー組の集合日を2月15日に設定している。

 つまりスケジュールに沿って3月31日のシーズン開幕を前提にすると、遅くとも2月14日前に合意できなければ、選手たちは通常の調整期間を得られないということになるわけだ。

 現状を見る限り、シーズン開幕はともかくスプリングトレーニングへの影響は避けられないところだろう。

【1995年のスプリングトレーニング期間はわずか18日】

 もちろん労使交渉がさらに長期化することになれば、シーズン開幕への影響も避けられなくなる。

 それでは何時までに合意できれば、スケジュール通りにシーズン開幕を迎えることができるのだろうか。そのモデルケースになりそうなのが、1994年から翌年にかけてのストライキではないだろうか。

 1994年8月12日からスタートした選手会のストライキは年内に解決できず、1995年も継続された。なんとか連邦政府の仲介もあり同年4月2日にストライキが解除されることになったが、ストライキ期間は米プロスポーツ史上最長の232日間に及んだ。

 ストライキ解除後の大まかな動きを振り返ると、解除後3日後の4月5日から選手たちはキャンプ地に集合し始め、ほとんどのチームが4月7日から本格的にスプリングトレーニングをスタートさせている。

 ちなみに当時ドジャースとマイナー契約を結び、ストライキ中もマイナー組のスプリングトレーニングに参加していた野茂英雄投手も、晴れて4月7日から招待選手としてメジャー組に合流している。

 そしてストライキ解除と同時にシーズン開幕は4月25日に決定していたので、実質のスプリングトレーニング期間はわずか18日だった。

【Xデーは3月8日前後?!】

 このケースを選手たちがシーズン開幕までに必要な最低限の準備期間と捉えるならば、3月31日に開幕を迎えるためには3月13日に本格的なスプリングトレーニングを始めなければならなくなる。

 もちろん1995年と同様に、選手のキャンプ地移動などスプリングトレーニング開始まである程度の準備期間が必要になるわけで、やはりMLBと選手会は3月8日前後までには合意しなければならないということだ。

 ちなみに1995年は、連邦政府が選手会側の立場を支持したことでストライキ解除に至ったものの、結局MLBと選手会は新労使協定が合意に達するまで旧協約を適用するという妥協案でシーズン開幕を迎えている。

 しかし今回に関しては本欄でも報じているように、すでに連邦法による手続きで昨年9月の段階でMLB、選手会の双方が旧労使協約の延長を破棄することに合意しており、法律上は新労使協約に合意することが絶対条件になっている。

 果たしてMLBと選手会は、どんなかたちで3月31日を迎えることになるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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