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大型契約で移籍した弟コーリーとマリナーズ一筋を貫き現役引退を決断した兄カイルに垣間見られる性格の違い

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
突然の原因対を発表したカイル・シーガー選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【突然の現役引退発表】

 現在もMLBのロックアウトが続く中、今オフにマリナーズから来シーズンの契約オプション権を破棄されFAになっていたカイル・シーガー選手が、現地時間の12月29日に突然の現役引退を表明した。

 米メディアの報道を総合すると、シーガー選手が最初に声明を発表したのが、たった8000人のフォロワー数しかないジュリー夫人のTwitterアカウントからだった。

 声明はごく短く、以下のような内容だった。

 「今日自分は、MLBからの現役引退を表明します。自分のすべての家族、友人、自分のキャリアと通してずっと応援してきてくれたファンに感謝します。本当に素晴らしい道のりでしたが、人生の新たな章を迎えることを嬉しく思います」

【マリナーズ一筋を貫いた野球人生】

 昨シーズンのシーガー選手は打率こそ.212に止まったものの、チーム2位の35本塁打、同1位の101打点を記録するなど、マリナーズがシーズン終盤までポストシーズン争いを演じた立役者の1人だった。

 マリナーズは年俸20万ドル(約23億円)を保証するオプション権を破棄したとはいえ、今年11月に34歳になったばかり。シーガー選手が現役続行を望めば、間違いなく他チームからオファーが届く存在だったはずだ。

 だが地元シアトル・タイムズ紙のライアン・ディビッシュ記者が引退表明後のシーガー選手を直撃したところ、昨シーズンのホーム最終戦で途中交代した際に地元ファンから大歓声を浴び、「これが野球をプレーする最後になると分かっていた」と、すでに早い時期に現役引退を決めていたことを明かしている。

 2009年にマリナーズからドラフト3巡目指名を受けて以来、マリナーズ一筋13年。やや早過ぎる引き際だったのではないだろうか。

【超大型契約でレンジャーズに移籍した実弟】

 マリナーズ一筋を貫いたシーガー選手とは違い、超大型契約でチーム移籍を決断したもう1人のシーガー選手がいる。今更説明する必要もないと思うが、カイル選手の実弟であるコーリー・シーガー選手だ。

 コーリー選手は今オフにドジャースからFAになると、大物FA選手の1人としてその動向が注目され、12月2日からMLBのロックアウト実施が噂される中、前日の12月1日にレンジャーズと10年総額3億2500万ドル(約374億円)の大型契約で正式合意している。

 コーリー選手はアマチュア時代から兄以上の評価を受け、2012年のドジャースから1巡目で指名され、プロの道へ足を踏み入れた。

 その後2015年にわずか21歳でMLBデビューを飾ると、翌2016年に先発遊撃手に抜擢されると、打率。308、26本塁打、72打点の成績を残し新人賞を獲得。以来昨シーズンまでドジャース黄金期を支える主力選手として活躍してきた。

【シーガー兄弟の間にある微妙な性格の違い】

 実はコーリー選手もシーズン終了直後は、ドジャース残留を希望する発言をしていたのだが、今オフのFA市場ではカルロス・コレア選手と双璧をなす大物FA選手だっただけに、年俸総額がMLBダントツ1位になっているドジャースとしてはレンジャーズに対抗できるオファーを用意できなかったようだ。

 だがもしコーリー選手が兄カイル選手のような考え方にこだわっていたのなら、多少契約内容は劣ったとしてもドジャース残留という道があったのではないだろうか。

 実は今回のカイル選手の引退表明を受け、シーガー兄弟の間に見え隠れする微妙な性格の違いを感じ始めている。

 兄カイル選手は今回の引退表明を夫人のアカウントを利用しているように、彼はTwitterやインスタグラムなど主要SNSのアカウントを有しておらず、自ら発信するようなことはしていない。

 一方のコーリー選手はTwitterとインスタグラムのアカウントを持ち、積極的とまではいわないが、世の人々に自ら発信し続けている(インスタグラムは比較的発信度が高い)。

 この辺りからも、2人の性格の違いが窺えないだろうか。

 また先にプロ入りした兄カイル選手は、エージェントとしては中堅クラスの「JET S Sports Management」と契約している一方で、弟コーリー選手はMLB最大手のスコット・ボラス氏が率いる「Boras Cooperation」と契約しているのだ。

 しっかり調べたわけではないので結論づけるのは早急かもしれないが、自分が知る限り兄BJ、弟ジャスティンのアップトン兄弟、兄コルトン、弟キーンのウォン兄弟、兄ウィルソン、弟ウィリアムのコントレラス兄弟──等々、基本的に兄弟揃って同じエージェントと契約しているケースが一般的のようだ。

 つまりコーリー選手が兄とは違うエージェントを選んでいる時点で、兄とは別の道を歩もうとする意思のようなものを感じてならない。さらにエージェントとしてボラス氏を信頼しているのであれば、契約内容で劣るドジャース残留という選択肢はなかったのかもしれない。

 いずれにせよ、このオフはシーガー兄弟の人生を大きく左右することになった。個人的はもう少しカイル選手のプレーする姿を見ていたかった思いがある。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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