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ゲレロJr.選手の打撃下降で大谷翔平のMVP受賞はすでに当確?!最後に期待されるマドン監督の後押し

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
後半戦は打撃下降も投手として絶好調な大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ゲレロJr.選手と直接対決の4連戦】

 シーズン後半戦に入り打撃下降が顕著な大谷翔平選手だが、37本塁打は今も本塁打王争いでMLB単独トップの座を守り続けている。

 そんな中エンジェルスは、現地時間の8月10日からブルージェイズと4連戦(10日はダブルヘッダー)を控えている。ブルージェイズには大谷選手に2本差まで肉薄してきたブラディミール・ゲレロJr.選手が所属しており、2人の直接対決に興味が集まるところだ。

 また本塁打王争いのみならず、87打点で打点部門のトップを走るゲレロJr.選手を、5点差で追う大谷選手がどこまで近づけるかも気になるところだ。

 いずれにせよ日本人ファンにとっては見逃せないカードになるだろう。

【ゲレロJr.選手も後半戦で打撃が下降気味】

 本塁打王争いに関しては、すでに3位のマット・オルソン選手でも28本塁打と、2選手とはかなり差が開いており、このまま大谷選手とゲレロJr.選手のデッドヒートになっていく公算が大きい。

 ただシーズン前半戦のゲレロJr.選手は、2012年のミギュエル・カブレラ選手以来の三冠王獲得すら叶えそうな勢いで打ちまくっていたが、実は後半戦に入り大谷選手同様に、打撃が下降気味になっているのだ。

 特に打率にその傾向が強く、前半戦で.332を残していたが、後半戦は.262まで下がっている。8月に入ると、さらに.212まで落ち込んでいる。また長打率も前半戦の.658から.548に下がっており、それだけ本塁打が期待できなくなっている。

 今後の賞レースを見据える末で、どちらがラストスパートをかけられるか気になるところだ。

【MVP争いでは大谷選手が大きくリード?】

 以前本欄で、個人タイトル争いのみならずMVP争いにおいても、ゲレロJr.選手が大谷選手の最大のライバルになるだろうと予想していた。

 ただそれは、あくまでゲレロJr.選手が三冠王を獲得することを前提条件にしたものだ。現在ゲレロJr.選手の打率は.318でア・リーグ4位まで下がり、トップを走るマイケル・ブラントリー選手(.329)に1分1厘まで離されており、三冠王獲得に黄信号が灯り始めている。

 その一方で、大谷選手は打撃が下降しているものの、投手として後半戦は2勝0敗、防御率0.95と、とんでもない投球を続けている。今も二刀流として、真価を発揮し続けているのだ。

 特に前半戦と比較して与四球数が激減しており、ここまで登板3試合でわずか1個に止まっている。SO/W(1四球当たりの三振数)で見ても、前半戦は2.49だったのに対し、後半戦は19.00まで跳ね上がっている。その安定感は絶大だ。

 ここ数年MLBでは、野手と投手の貢献度を平等に比較する指標としてWAR(Win Above Replacement)を用いるようになったが、この数値でも大谷選手は現在6.5でMLBトップを走る一方で、ゲレロJr.選手は5.3で同4位に止まっている。

 MVP争いにおいても、間違いなく大谷選手が先頭を走っているのだ。

【マドン監督の起用法に後押しを期待】

 MVP争いでは、ポストシーズンを争うチームに所属する選手が有利だといわれている。実際過去10シーズンのMVP受賞者20人を見ても、そのうち14人が地区首位を飾ったチームに所属している選手たちだ。

 だが2019年と2016年のマイク・トラウト選手と2017年のジャンカルロスタントン選手は、チームが勝率5割未満ながらMVPを受賞している。つまりチーム成績以上に素晴らしい成績を残した選手であれば、MVP受賞は十分に可能なのだ。

 すでにシーズン前半戦の大谷選手はメディアやファンから、二刀流選手としてMLB史上でも類を見ない活躍を続けていると認められている。後半戦でも同様の活躍が続けられれば、誰も大谷選手のMVP受賞を疑わないだろう。

 そのためにも大谷選手には、シーズン最後まで二刀流を貫き通すしかない。

 すでにエンジェルスはポストシーズン争いから大きく引き離され、ファンとしてもチームの勝利以上に大谷選手のタイトル争いに注目している状況だ。

 もちろんジョー・マドン監督も前半戦のように、チームの勝利のために大谷選手をフル稼働させる必要はないはずだ。

 今も試合を休むという選択肢はないと公言する大谷選手を説得しながら、今後は彼が思う存分パフォーマンスを発揮できる環境を整えてくれる、マドン監督の起用法に期待するばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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