9年連続殿堂入りを逃したカート・シリング氏が来年の候補リストからの削除要請を表明した本音

9年連続で殿堂入りを逃し来年の候補リストからの削除を要請したカート・シリング氏(写真:ロイター/アフロ)

【BBWAAが2021年殿堂入り投票結果を発表】

 全米野球記者協会(BBWAA)は現地時間の1月26日、2021年の殿堂入りOBを選出する記者投票結果を発表し、8年ぶりに選出者無しに終わった。

 BBWAA会員による記者投票によって選出されるためには、全投票の75%以上の得票率が必要となる。今回は401人の記者が投票しており、条件をクリアするためには301票以上の得票が必要だったが、1人もクリアできなかった。

 今回の最多得票はカート・シリング氏の285票で、16票が足りずに涙をのむことになった。

【次回投票の候補者リストから削除を求めたシリング氏】

 シリング氏は2013年から殿堂入り候補リストに入っており、今年で9回目の挑戦だった。それでも下記の表をチェックしてもらえば理解できるように、過去9年間で今回が過去最高の得票率を得ている。

(筆者作成)
(筆者作成)

 投票ルールに則れば、得票率が5%を上回った候補者は最大で10年間候補リストに残り続けることができる。そのためシリング氏も自動的に2022年の候補リストに回り、最後の投票に希望を繋ぐことができる、はずだった。

 だが今回の投票結果を受け、シリング氏はFacebook上にメッセージを投稿し、候補リストから削除を求めているのだ。

【シリング氏「この時点で精神的にやり終えた」】

 シリング氏が投稿したメッセージは長文に及ぶが、主要部分を抜粋すると以下のような内容になる。

 「この時点で自分は精神的にやり終えたと言いきれる。自分は数学も理解しているし、(投票の)傾向も理解しており、75%を獲得するのは無理だろうと分かっている。

 自分は最終年の投票に参加しないだろう。候補リストからの削除を希望している。自分は選手たちを実質的に評価している立場にいる人たちが揃う、ベテランズ委員会に委ねたい。すでに度々訴えているように、自分は殿堂入りに相応しい人間だとは思わないが、もし殿堂入りしたOBたちが自分を選んでくれるのなら、自分はその栄誉を受け入れるだろう」

 シリング氏がいうベテランズ委員会とは、野球殿堂博物館に設置されている委員会の1つで、すでに殿堂入りしているOB(選手や監督)と、各チームのフロント首脳、メディア及び歴史家の16名で構成され、BBWAAとは別に殿堂入りの選出作業を行っている組織だ。

 例えば2019年には、BBWAAの投票では選出されなかったハロルド・ベインズ氏とリー・スミス氏がベテランズ委員会により殿堂入りを果たしている。

【問題発言で世間を騒がせた過去も】

 シリング氏と同様に2013年から候補リストに入っているOBには、バリー・ボンズ氏、サミー・ソーサ氏、ロジャー・クレメンス氏らステロイド時代を象徴する人物が名を連ね、彼らもまだ殿堂入りを果たせずに、来年最後の投票に回ることになる。

 彼らは現在もメディアの間で殿堂入りが相応しいかで意見が二分しており、2013年に候補リストに入ったOBで殿堂入りを果たしているのは、クレイグ・ビジオ氏とマイク・ピアザ氏の2人しかいない状態だ。

 またシリング氏は引退後も、トランスジェンダーを否定する発言や、イスラム教徒とナチを比較するツイートを投稿し、ESPNの解説者を解雇されるなど、世間を騒がせた過去もある。

 ただ前述通りシリング氏の得票率は年々上がっており、最終年に殿堂入りできるチャンスは十分にあるように思える。

 その上で投稿した今回のメッセージは、捉え方によって殿堂入りに関しては自分を正当評価してくるベテランズ委員会に委ねるので、もうこれ以上メディア投票に付き合いたくないとの意思表示に見えなくもない。

【実績自体は殿堂入りに相応しい成績?】

 MLB在籍20年で通算成績は216勝146敗、防御率3.46を残し、サイヤング賞こそ逃しているものの最多勝2回、奪三振2回と主要タイトルも獲得している。

 さらにワールドシリーズ制覇3回、ワールドシリーズMVP1回、オールスター選手出場6回等々、その実績自体は評価されるべきものだ。

 米メディアによると、シリング氏の削除要請を受け、野球殿堂博物館のジェーン・フォーブス・クラーク理事会長は、次回のミーティングで協議することを明かしている。

 いずれにせよ今回のシリング氏の削除要請は、再び世に波紋を広げることになるかもしれない。

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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