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12月に宇都宮と琉球相手に大敗した後大勝した大阪エヴェッサの潜在能力と可能性

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
琉球戦でニュービル選手に指示を出す竹野明倫HC代行(筆者撮影)

【現在チャンピオンシップ圏外の大阪エヴェッサ】

 今シーズンの大阪エヴェッサをどのように評すべきなのだろうか。

 現在の成績は13勝12敗で、西地区4位につけている。開幕後2試合目から4連敗を喫する厳しいスタートを切ったが、その後11月下旬のバイウィークに入った時点で7勝8敗まで戻し、さらに12月を6勝4敗で乗り切り、勝ち越して2021年を迎えている。

 それでも東地区に好成績チームがひしめいていることもあり、現時点ではチャンピオンシップ争いでワイルドカード圏内からも外れ、厳しい位置につけている状況だ。

 ただチャンピオンシップ進出が保証される地区3位、ワイルドカード圏内でともに3ゲーム差につけており、まだシーズンを半分以上残していることからも、今後の戦い方次第では十分に狙える位置にいるともいえる。

【強豪相手に大敗後に大勝するチグハグな戦いぶり】

 そこで冒頭の疑問に戻るのだが、ここまでの大阪は、評価するのがかなり難しい戦いを続けている。

 すでに本欄でも度々指摘しているように、今シーズンは多くのチームが新型コロナウイルスの影響を受け、開幕当初は外国籍選手たちのチーム合流が間に合わず、準備不足のまま開幕を迎えていた。それは大阪も同じだった。

 そのため、前述のバイウィークでようやく戦力が整った状態で調整できたことで、大阪の真の実力を推し量る上で、12月以降の戦いぶりに注目していた。

 大阪は12月に、宇都宮ブレックス、琉球ゴールデンキングス、千葉ジェッツの強豪チームと対戦してきたのだが、いずれも初戦に敗れ、第2戦に勝つというパターンを繰り返している。

 中でも宇都宮戦と琉球戦は、初戦に大敗した後に第2戦で大勝するという、何ともチグハグな戦いぶりだったのだ。

【アイラ・ブラウン選手「我々は可能性のあるチーム」】

 もちろん強豪チームに勝利、しかも大勝できるのだから、大阪のチーム力は決して低くないのは間違いない。だがその一方で、大敗してしまう脆さも兼ね備えていた。

 さらに大阪は、12月に自分たちより下位チームの滋賀レイクスターズや信州ブレイブウォリアーズとも対戦しているのだが、信州相手に1敗しているし、勝利した試合も決して盤石な戦い方ができていたわけではない。

 実は12月12日に琉球に大敗した後に、アイラ・ブラウン選手は現在のチームについて、以下のように説明してくれた。

 「12月と1月はトップチームとの対戦を控えており、現在のチームについて尋ねたいのなら、この2ヶ月間を戦い終えた後の方がいいと思う。40分間最後まで全力で戦い、トップチーム相手に勝利できるチャンスを得られるのか、我々にとってかなり重要になってくる。

 我々は若い選手が多く、まさに新しいチームだ。試合ごとにどう適応していくか、それを繰り返しながらどのように勝利に繋げていくのかが、チームにとっても若い選手にとっても大切なことだ。

 ただこれからも40分間に集中し、今のように(大敗後に大勝できるような)柔軟性を維持していければ、我々は可能性のあるチームだと確信している」

【発展途上のチームは現時点で未完成】

 ブラウン選手が指摘するように、大阪はまだまだ発展途上にある。

 昨シーズンは新型コロナウイルスのためシーズン途中で打ち切られたが、大阪は26勝15敗で西地区2位につけ、初のチャンピオンシップ進出を確実にしていた。

 それでもオフシーズンに大幅な戦力刷新を断行し、昨シーズンから残った選手はわずか6人しかいない。しかもBリーグ未経験の3人の新人選手を迎えて入れている。

 また開幕直前に天日謙作HCが病気治療のため指揮が執れなくなり、竹野明倫ACが代行を務めるかたちでシーズンを迎えることになった。

 さらに開幕直後にキャプテンの合田怜選手が左肩関節脱臼で長期離脱を余儀なくされ、12月に入ると伊藤達哉選手が体調不良で欠場を続けるなど、ここまで決して万全の状態で戦ってきたわけではなかった。

 それだけに今後のチームの伸びしろは、計り知れないものがあるといっていい。たぶん伸びしろ率だけを考えれば、リーグ屈指ではないだろうか。

 ブラウン選手が話す通り、1月もアルバルク東京と千葉との対戦を控えている。とりあえず1月の戦いぶりを見極めた上で、改めてブラウン選手から話を聞いてみることにしよう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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