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すでに“日本一”決定という名目は形骸化?! リーグ格差を解消するための日本シリーズ改革案

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
両リーグを交えてトーナメントで戦う新たな日本シリーズ改革案(筆者作成)

【圧倒的な強さを見せたソフトバンク】

 ソフトバンクが4年連続で日本シリーズを制した。すでに各メディアやOBたちが指摘しているように、ソフトバンクの強さばかりが光ったシリーズだった。史上初の2年連続スイープ達成が、その最たる例だ。

 シーズン中盤までロッテと激しい首位争いを演じながら、10月に入り一気に抜け出した破竹の快進撃は、すでに敵無しの状態だった。その勢いはポストシーズンに入っても変わらず、CS、日本シリーズともに1敗もすることなく頂点を極めた。

 この10年間で7回の日本一に輝いた実績を考えると、今やV9時代の巨人に匹敵する黄金時代を築き上げているといっていいだろう。これも多くのメディアが指摘している通りだ。

【ホークス・ファンから漏れた本音】

 個人的にシリーズ第4戦を、大阪市内にあるホークスの聖地としてファンから愛されている『難波のあぶさん』で観戦する機会を得た。

 4連覇を達成し、ファンの人たちの歓喜の輪の中に身を置かせてもらい、様々な声を聞くことができた。その中で以下の言葉が、特に印象に残っている。

 「CSのロッテの方がいい試合をしていた」

 誰の目から見ても明らかなように、2年連続で日本シリーズを戦った巨人との戦力差は歴然としており、すべての面でソフトバンクが圧倒していた。試合内容を考えれば、ホークス・ファンが指摘するように、CSで戦ったロッテの方が間違いなく善戦していた。

【今や明確なリーグ格差】

 今回の日本シリーズの結果を受け、改めて指摘されているのが、セ・パのリーグ格差だ。

 絶対王者のソフトバンクが存在しているのだから、セ・リーグのチームが日本シリーズで勝てないのは仕方のないことだ。だが、ここ数年の交流戦の結果を見ても、リーグ格差は間違いなく存在している。

 2005年に交流戦が導入されて以降、これまで交流戦でセ・リーグのチームが優勝したのは、巨人(2012年、2014年)とヤクルト(2018年)の3回しかない。

 さらに交流戦の順位を見ても、2009年までは毎年セ・リーグのチームが上位6位以内に3チーム以上入っていたのだが、2010年以降は、2012年と2014年の2回だけ。今や交流戦でパ・リーグのチームが上位を占めることが、当たり前になっている。

 こうしたリーグ格差が顕在化する中で、セ・パの優勝チームで戦う日本シリーズは、真の“日本一”を決める場なのだろうか。今やその名目は形骸化しているとしか思えない。

【両リーグ交えたトーナメント制へ】

 そうなると、日本シリーズの実施方式を見直す時期に来ているのかもしれない。個人的にはCSを含めたすべてのシリーズを日本シリーズとして統括し、両リーグが一緒に参加するトーナメント制にするのが理想的だと考えている。

 まずリーグ戦で、両リーグの優勝チームを決める。これによりCSで問題視されてきた、リーグ1位のチームが優勝するという大前提を覆すことはなくなる。

 そして公式戦終了後に日本シリーズに移行し、優勝チームの他に、両リーグの3位以内の4チームがワイルドカードとして出場権を得る。優勝チームはシードされ、まずセ2位チームとパ3位チーム、パ2位チームとセ3位チームが戦い、勝利チームが優勝チームと戦うというものだ。

 ワイルドカード同士の対戦は、現行のCS方式のままでもいいと思うが、準決勝からはホーム&アウェイ方式に切り替え、準決勝は3勝で勝ち抜けとし、決勝は現行通り4勝でシリーズ勝利にすればいいのではないか。

 また優勝チームがどちらのブロックに入るのかについては、オールスター戦や交流戦で勝ったリーグの優勝チームに、選択権を与えるというのも面白いだろう。

 この方式ならば当然のごとく、決勝が同じリーグ同士の対戦になるケースも出てくる。それが毎年のように続くようなことになれば、もう一方のリーグは相当に危機感を抱くようになるはずだ。

【セも指名打者制導入を】

 また日本シリーズとは別に、セ・リーグも指名打者制を導入すべきではないかと考えている。これまでの伝統を覆すような考えではあるが、指名打者制は現代の野球により適した制度のように感じている。

 というのもMLBでは、新型コロナウイルスの影響で2020年シーズンは臨時に両リーグでの指名打者制を採用した。そしてシーズン終了後になっても、元々指名打者制を採用していないナ・リーグ投手たちから、指名打者制継続を望む声が挙がっており、MLBも継続する方向で検討している。

 指名打者制の有無により、投手起用を含め戦術が変わってくるのは当然のことだ。リーグ格差があるのであれば、戦略面でも同じ土俵で戦える環境を整えるべきだと思う。

 いずれにせよ現行方式のまま、日本シリーズを放置しておいていいのだろうか。野球界全体で、野球ファンにとって魅力あるポストシーズンを構築していってほしい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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