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トレバー・バウアーのNPB入りの可能性が決してゼロではないと考える2つの理由

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
今オフの注目FA選手トレバー・バウアー投手はNPBからのオファーも検討すると公言(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【田中投手、平野投手もFAとして交渉可能に】

 米国東部時間の11月1日午後5時に、ワールドシリーズ終了後5日間各チームに与えられていた、所属FA選手との独占交渉及び契約オプション権保有選手との契約確定期間が終了した。今後は契約オプション権を破棄されFAになった選手を含め、全FA選手がMLBに留まらずNPBなどの海外リーグを含めたすべてのチームと契約交渉が可能になった。

 FA選手の中には田中将大投手と平野佳寿投手も含まれており、彼らも規則上、今後NPNチームとも平等に契約交渉できるので、日本復帰の可能性が出てきたということになる。

【今オフは6選手がQOを受ける】

 ただチームが残留を望んでいるFA選手に対しては、クォリファイイングオファー(QO)を提示することができる。これは重要なFA選手の流出を抑えるための措置で、その年の年俸額上位125人の平均年俸額を来シーズンの年俸として提示できるというものだ。

 QOを受けた選手は10日以内に結論を出さなければならず、QOを受け入れた場合、今年の設定額である1890万ドル(約19.8億円)で1年契約を結び、拒否した場合は通常のFA選手と同様の扱いを受けるのだが、その選手を獲得したチームは前所属チームに対し、年俸総額に応じて翌年のドラフト指名権を譲渡しなければならなくなる。そのため他チームはQOを受けた選手の獲得に慎重になるというわけだ。

 QOを提示する期限もワールドシリーズ終了後5日間に定められており、今年は6選手がQOを受けている。それらの選手は以下の通りだ(MLB公式サイトで紹介されている順通り)。

・トレバー・バウアー投手(レッズ)

・ケビン・ゴーズマン投手(ジャイアンツ)

・DJ・レメイヒュー選手(ヤンキース)

・JT・リアルミュート捕手(フィリーズ)

・ジョージ・スプリンガー選手(アストロズ)

・マーカス・ストローマン投手(メッツ)

 2016年12月から施行されている現行の統一労働規約(CBA)の下では、これまで10人(2016年)、9人(2017年)、7人(2018)、10人(2019年)の選手たちがQOを提示されており、例年から比較するとやや少なめだ。

 これらの選手はQOを拒否したとしても、今オフのFA市場の注目選手として長期大型契約を結ぶ可能性が高いと考えられている。

【バウアー投手はNPB入りの可能性はなくなった?】

 この6選手の中で、日本人として最も注目したいのがバウアー投手だろう。彼はFAになったことでTwitter上にメッセージを投稿し、MLBだけでなくNPBからのオファーも検討すると明言しており、その投稿は現在も固定ツイートにされている。

 バウアー投手といえば、今シーズンは防御率のタイトルを獲得し、ダルビッシュ有投手とナ・リーグのサイヤング賞を争うMLB屈指の好投手だ。彼がQOを受けるのも、誰もが予想していたことだった。

 バウアー投手がNPBを含めた多くのチームからのオファーを検討すると明言していることからも、今後はQOを拒否してFAとして契約交渉していくことになるだろう。

 ただMLBでは大物FA選手の1人として、年俸2000万ドル(約21億円)を上回る複数年契約での交渉になっていくと予想されており、どう足掻いてもNPBチームが太刀打ちできる要素はまったく無いように見える。

 だが個人的には、わずかながらもNPBと契約する可能性は残されていると考えている。

【MLBを待ち受ける2つの不安要素】

 というものMLBは現在、2つの不安要素を抱えているからだ。1つ目は新型コロナウイルスだ。

 MLBは新型コロナウイルスの影響で、公式戦全試合を無観客で実施し、ポストシーズンも地区シリーズから中立地開催を余儀なくされた。ポストシーズンでは限定数の観客を受け入れられたものの、新型コロナウイルスの規制が緩やかなテキサス州で実施された、ナ・リーグ優勝決定シリーズとワールドシリーズに限られていた。

 しかも米国内では10月から感染者数、死者数ともに再び上昇傾向にあり、オフシーズン恒例行事だったウィンターミーティングやオーナー会議はすべて注意され、オンラインでの実施に切り替わった。今も来シーズンの通常開催すら、まったく見通せない状況になっている。

 一方でNPBは、阪神やロッテでクラスターが発生したものの、シーズン途中から観客を受け入れ、通常のホーム&アウェイ方式で予定通り120試合を消化しようとしている。

 このままいけば来シーズンは、観客数の制限は受けるかもしれないが、通常通りのシーズン運営ができそうな状況にある。明らかにMLBと格段の差が生じている。

 そしてもう1つが、MLB各チームの財政状況だ。

【予算が逼迫した今オフは大型契約提示が困難?】

 すでに本欄でも指摘しているように、ワールドシリーズ終了5日間を見ても、無観客試合による短縮シーズンで大幅減収を余儀なくされたMLB各チームは、相次いでチームが保有する契約オプション権を破棄し、多くの選手たちがFAになっている。

 それだけ各チームの財政状況は逼迫しており、バウアー投手のような大物FA選手にとっても、長期大型契約を獲得するのは例年以上に難しいことが予想される。

 また現行のCBAは来年11月一杯で失効することになる。今後MLBと選手会の間で新CBAの協議が行われることになるが、それに伴い2022年シーズンからFA関連の規則も変更される可能性がある。

 そこで2つの考え方が生じてくる。新CBAが施行される前に、どんなかたちであれ長期契約を結ぼうとするのか、もしくは新CBAに期待し、今シーズンは1年契約を結び、来オフで長期大型契約を結ぼうとするか、だ。

【1年契約なら運営が安定しているNPBが魅力的】

 それらを加味して考えていくならば、バウアー投手が大物FA選手の1人として、今年の厳しいオフシーズンで大型契約を目指すより、1年契約で様子をみたいと思う可能性があるということ。

 さらに1年契約を結ぶならば、現在の環境面を考えれば、シーズン実施すら確定できていないMLBよりも、年俸の全額支払いが保証され、2月1日からキャンプインでき、不安のないままシーズンを過ごせそうなNPBを選んだとしても決して不思議ではないということだ。

 通常のオフシーズンならば、バウアー投手のNPB入りは絶対にあり得ないだろう。だが不安要素を抱えるMLBの現状ならば、その可能性はゼロではないはずだ。

 今後もバウアー投手の動向に注目していきたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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