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開幕4連勝に成功した秋田ノーザンハピネッツ・前田顕蔵HCが今シーズンに懸ける本気度

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都戦でベンチの選手たちに指示を出す秋田・前田顕蔵HC(筆者撮影)

【秋田ノーザンハピネッツが開幕4連勝】

 Bリーグは週末にシーズン第2節を迎え、秋田ノーザンハピネッツは敵地に乗り込み京都ハンナリーズと対戦。第1戦を90-71、さらに第2戦も79-68で勝利し、連勝を飾った。

 前週の開幕節でも敵地の信州ブレイブウォリアーズ戦でも連勝を収めており、宇都宮ブレックス、シーホース三河とともに開幕4連勝に成功し、上々のスタートを切っている。

 敵地での連勝はなかなか難しいとされるBリーグで、2週連続で敵地連勝できたことに、秋田の前田顕蔵HCは満足そうだった。

 「今日(11日の京都第2戦)は非常にディフェンシブな試合になったのかなと思っています。京都さんの日本人選手の積極的な姿勢というところで、苦しんだ部分がありました。

 その中で40分のゲームを通して、先週の日曜日(4日の信州第2戦)と似ているような展開だったんですけど、我慢して我慢して最後勝ち切れたというのもありますし、アウェイ4連戦をすべて勝てたというのはチームにとってプラスになるんじゃないかなと思います」

京都第2戦で9得点、6アシストの活躍をみせた長谷川暢選手(筆者撮影)
京都第2戦で9得点、6アシストの活躍をみせた長谷川暢選手(筆者撮影)

【4連勝ながらも冷静に分析する前田HC】

 チーム自体の最長連勝記録は4ということで、次節でチーム記録更新に挑むことになる。だがその一方で、前田HCは今回の4連勝をまったく楽観視していない。

 「昨シーズンは同一カードで2連勝したのは2回しかなくて、(連勝がかかった試合を)落とすというような試合が多かったので、そういう部分でいうと(今回の4連勝は)良かったのかなと思いますが、特に慢心することもなく、京都さんのディスアドバンテージが明確にある中で勝負しているので、選手たちはよくやってくれましたし、もちろん勝ち取ったものだと思っていますが、まだまだ強くなるには勝ちながら経験を積んでいくことが大事なのかなと思います」

 前田HCが指摘するように、今回対戦した京都は、2人の外国籍選手の合流が遅れ、昨シーズンまでの主要得点源だったデイヴィッド・サイモン選手も欠場している状況だった。

 また前節の信州も、今シーズン初めてB1に昇格してきたチームだったこともあり、前田HCは今回の敵地4連戦に臨むに当たり、「基本勝たないという中で、落としていけないという位置づけでやっていました」と話している。つまり4連勝は前田HCにとって、ある意味想定内だったといっていい。

 そうした前田HCの強気にも見える姿勢は、彼が今シーズンに懸ける意気込みが高く、また今シーズンのチームに対する期待感の裏返しに他ならない。

【ほぼ全員が残留したチームへの期待感】

 4年間秋田でACを務めた後、昨シーズンからHCとして指揮を任された前田HCは、今シーズンのチームにかなりの期待感を抱いているようだ。

 というのも、新規契約したアレックス・デイビス選手と、外国籍選手追加契約ルールにより短期契約でチームに合流したエリック・ニッセン選手以外、2人の外国籍選手を含めた11選手が昨シーズンからの残留組なのだ。当然のごとく選手たちとの意思疎通は十分にできている。

開幕4連勝を飾り試合後に円陣を組む秋田ノーザンハピネッツ(筆者撮影)
開幕4連勝を飾り試合後に円陣を組む秋田ノーザンハピネッツ(筆者撮影)

 「メンバーがほぼ代わっていない中でやっているので、お互いの理解だったり、昨シーズンの反省点というのは全員分かっているので、その中で意識が少しずつ固まってきているというのが、クラブとして編成は良かったのかなと思っています。

 先週も今週もこういう試合(接戦)を勝ち切れたというのは、昨シーズンの経験が非常に大きいのかなと思います。あとは(シーズンが)60試合なので、昨シーズンは6連敗したんですかね(実際は7連敗)、そういうのをどれだけ無くして…。本気で日本一を狙うということはそういうことだと思うので、そういうスタンダードでチームを動かしていかないといけないと思っているので、反省ばかりになります(笑)」

 前田HCの言葉が、今シーズンの秋田の思いを代弁してくれているのではないだろうか。

【7連敗以外は19勝15敗だった昨シーズン】

 新型コロナウイルスの影響によりシーズン途中で打ち切られるまで、昨シーズンの秋田の成績は19勝22敗で、東地区5位だった。

 だが昨シーズンの秋田も、今シーズン同様にまずまずのスタートを切っていた。チームの伝統ともいえるリーグ屈指のディフェンスを武器に、開幕から勝率5割以上をキープする健闘をみせていた。

 ところが前田HCの発言にあるように、12月22日の富山グラウジーズ戦の敗戦を機に、1月15日の千葉ジェッツ戦まで7連敗を喫してしまい、一気に失速してしまったのだ。

 この7連敗を除けば、その前後は19勝15敗の成績を残していることからも、昨シーズンの秋田も、上位を狙える力をつけ始めていたことが分かる。だからこそ前田HCは昨シーズンの悔しさと反省を土台にし、今シーズン更なる飛躍を目指しているのだ。

 次節はいよいよホームに戻り、チャンピオンシップ常連チームの琉球ゴールデンキングスを迎え撃つ。秋田と前田HCにとって、今シーズンを占う大事な試金石になりそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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