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左脇腹負傷と体重8キロ減から復帰したオリックス・山岡泰輔が目指す新たな投球スタイル

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
復帰後は試行錯誤の日々を過ごすオリックス・山岡泰輔投手(筆者撮影)

【出鼻をくじかれた左脇腹負傷】

 昨シーズン最高勝率のタイトルを獲得した山岡泰輔投手にとって、2020年は更なる飛躍を期するシーズンだった。

 もちろん周囲も同様に、山岡投手に大きな期待を寄せた。同じく昨シーズンに防御率のタイトルを獲得した山本由伸投手とともに、誰もがオリックスの大黒柱2枚看板になると信じていた。

 そして新型コロナウイルスでシーズン開幕が遅れたものの、見事に開幕投手の大役を任された。残念ながら敗戦投手になってしまったが、7回を1失点に抑える好投を演じ、上々の滑り出しをしたかに思われた。

 だが開幕直後に、山岡投手を不運が襲った。

 自身2度目の登板になった6月26日のロッテ戦で、左脇腹の異常を訴え、打者1人と対戦しただけで無念の交代。そのまま登録抹消され、長期離脱を余儀なくされた。

【左脇腹負傷以上に苦しめられた体調不良】

 野球選手にとって脇腹は、非常に繊細な箇所だ。投球動作やバットスイング中に相当の負担がかかるため負傷をしやすく、再発の危険性も高い。また山岡投手にとって脇腹負傷は初めての経験で、復帰までのリハビリに難しさもあったはずだ。

 実は、山岡投手を襲ったアクシデントはそれだけではなかった。復帰を目指したリハビリ中に体調不良に見舞われてしまったのだ。診断結果は胃腸炎。回復するまでに体重が8キロも減ってしまった。

 山岡投手の外見からも分かるように、彼は野球選手の中でもスリムな体型だ。そんな彼が体重を8キロ減らしてしまったのだから、普通に投げられる体調ではなくなっていたはずだ。

 オフなら体重を戻すためトレーニングに集中することができるが、シーズン中なので不可能だ。つまり左脇腹を治療しながら、体調を戻していかねばならないという厳しいリハビリを続けていたのだ。

 その一方で、オリックスは開幕から厳しい戦いを強いられており、山岡投手の1日も早い復帰が待たれていた。結果的にほぼ2ヶ月ぶりの8月27日のソフトバンク戦で復帰を果たしたが、山岡投手的には「良い状態まで身体が戻りきっていない」状態だった。

昨年は山本由伸投手(左)とともに投手タイトルを獲得した山岡泰輔投手(筆者撮影)
昨年は山本由伸投手(左)とともに投手タイトルを獲得した山岡泰輔投手(筆者撮影)

【復帰後は登板を重ねながら新たな投球を模索】

 復帰したとしても体調が万全でなければ、山岡投手本来の投球ができるはずもない。つまり現在の体調の中で、最大限の投球ができるように試行錯誤していくしかないということだ。それを踏まえた上で、山岡投手は創意工夫と新たな発見の日々を過ごしている。

 「(今シーズンの投球は)ずっと悪いですけどね。その中で新しいピッチングというのが見つかりつつあるので。悪い時なりに、球が走っていない時なりに、投げるやり方というか…。

 (修正部分は)たくさんあり過ぎて、それを1個ずつ直していっているという感じです。(感覚的には)良くなっている部分もありますけど、まだ上がっていない部分もあると思います。

 元のフォームに戻るとは思っていないので、また新しいフォームを見つけていこうかなと思っています」

【それでもカード初戦の重責を担い続ける】

 また体調が戻っていない分、中6日のローテーションで回っていく上で調整にも苦労しているという。それでも復帰後2戦目からは金曜日のカード初戦を任され、ローテーションを守り続けている。

 9月中旬からチーム状態が上がり、ここ最近のオリックスは5カード連続で勝ち越しに成功しているが、この間すべてカード初戦に勝利している。現在は山岡投手と山本投手がカード初戦を任されており、まさに2枚看板の好投がチーム好調の要因になっているともいえるのだ。

 「今シーズンは割り切って、自分が今できることだけをしっかりやって、(その中で)こういうピッチングを憶えていかないといけないと思います。

 カーブだったり、良いタイミングのシュートだったりフォークっていうのを、寅威さん(伏見捕手)だったりとかが探ってきてくれているので、そこが上手くいけば、身体の状態とか、球速が戻った時に、今までとは全然違うピッチングになると思います」

 登板日以外も、試合前の練習中にバランスを意識しながら丁寧に投球練習を続ける日々を過ごす山岡投手。現在取り組んでいることがかたちになった時、逆境を飛躍というバネに変え、投手として大きな成長を遂げることになるはずだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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